木村情報技術株式会社
佐賀大学発のベンチャー企業と木村情報技術が強力タッグ。集金業務を自動化し、全国の教育現場をサポートする『学校PAY』の挑戦
2025年02月20日
「教育現場での煩雑な集金業務の負担をなくしたい」という想いから誕生したのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって学校でのお金のやり取りを劇的に変革するサービス「学校PAY」です。
株式会社SA-GA(エスエー・ジーエー)が開発したこのサービスは、2024年8月から木村情報技術株式会社との協力によって提供されています。
木村情報技術は、2005年に佐賀で創業したIT企業としてWeb講演会やAI・生成AI活用の研究開発を手がけており、SA-GAは佐賀大学発の学生ベンチャーとして、ブロックチェーンやディープラーニングなど最新技術を駆使した技術開発を行っています。
この記事では、「学校PAY」の開発ストーリーや、地元佐賀県から全国展開を目指すメンバーたちの挑戦の裏側をお届けします。
(左から)株式会社SA-GA 代表取締役社長 森山 裕鷹さん、
木村情報技術株式会社 学校PAYユニット 武田隼人、早川優、岡本正吾
1.学生起業から生まれた「学校PAY」。学校現場の課題を解決する革新サービス
森山さん:「学校PAY」は、学校の煩雑な集金業務や金融機関とのやり取りを、ほぼ丸ごと代行し、極限まで自動化するサービスです。
(SA-GA 森山さん)
「お金を集める」サービスは他にもありますが、「学校PAY」は学校ならではのニーズに特化していることが特徴です。集金だけでなく、会計簿の作成や記録、未納者一覧作成など必要な機能を盛り込んでおり、学校側での操作がほとんど不要です。また使いやすさを追求し、操作が非常にシンプルです。集金業務を大幅に軽減し、事務作業全体の効率化にも大きく寄与します。
SA-GA立上げ後、学校訪問で知った集金業務の負担。アイデアを形にすべく開発へ
森山さん:佐賀大学の4年生のとき、3人でSA-GAを立ち上げました。最初は、監視カメラとAI技術を活用した画像解析サービスを開発・販売しており、老人ホームでの徘徊者の検知に利用いただいていました。この技術は、学校でも不審者対策としてニーズがあるのでは、そう考えました。
学校を訪問して提案する中で、事務の方から「それもいいけれど、もっと困っていることがある」と教えていただき、学校現場で集金業務がいかに負担かを知りました。
それを機に、徴収金収納代行サービスのアイデアが浮かび、開発を始めました。
教育現場の方々の協力を得ながら、何度も作ってはフィードバックをいただき、一緒にサービスを作り上げていきました。
今から振り返ると、完成までに大きな苦労は感じませんでした。当時、私が22~23歳の大学生だったこともあり、周囲の方々が応援してくれていたんだと思います。本当に人に恵まれていました。
教員の長時間労働が深刻化。過労死ライン超えの実態と教育現場の負担軽減に必要な改革とは
森山さん:開発を進める中で教育現場の現状を調べたところ、そのデータに驚きました。文科省の「教職員の勤務実態調査」によると、中学校の教員の半数以上が国の残業基準を超えており、さらに5人に1人は過労死ラインを超えているという危険な状況です。これでは、学校教育の維持や向上は難しく、学校での働き方改革が急務だとされています。
文部科学省の調査を基に作成:「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について」
そのため、文科省は「学校・教師が担う業務に係る3分類」を提示しています。このガイドラインでは、「学校徴収金の徴収・管理は、基本的には学校以外が担うべき業務」とされています。
引用:「令和5年度 教育委員会における 学校の働き方改革のための取組状況調査 【結果概要】」
こうした背景から、集金業務を教員から事務の方に移す動きがありますが、それはやや乱暴だと感じます。それができないから皆さんが困っているのだと思うのです。
誰かに負担が偏るのではなく、全員が幸せになるような改革が必要です。そうすることで、教育現場においては教員が生徒と向き合う時間が増え、働き方改革も進むでしょう。
2.佐賀県内で広がる「学校PAY」。導入の壁と教育現場との意識のギャップ
森山さん:サービスが完成し、佐賀県内で導入校が増えていくのは嬉しいことでした。しかし、すべてが順調だったわけではありません。ある日、よかれと思って提案したことが、学校の担当者の怒りを買ってしまったんです。それは、教育現場の方々の強い想いを知るきっかけにもなりました。
現金集金から銀行の口座振替に移行する学校は多くありますが、それにはまず学校が保護者の口座情報を集め、毎月銀行に請求データを送る必要があります。この場合、学校Aで集めたデータは学校Aでしか使えないという制約があります。
学校PAYは、学校に代わって口座情報の収集や請求データの送信を行います。理屈としては、学校PAY内では学校Aのデータを学校Bや学校Cでも共通して使えるようになります。この仕組みを使えば、小学校から中学校への進学時や、転校時、それが他県であっても同様に利用できるようになり、保護者や学校関係者の手間を省くことができる、そう思い深く考えずこの提案をしました。
ところが事務担当者から、「それはいけない。他校のことは分からないが、私は当校の業務を森山さんや学校PAYに任せようとしている。こんなセンシティブな情報を軽い気持ちで他に転用しようとするのは無責任ではないか。私は保護者に顔向けできない」と叱責されたのです。涙が出るほどの勢いでした。
私は、法律の確認や、各所との契約面さえ整理できれば、という事務的な考えでいました。もちろん学校のご担当者もそれはご存じの上で、この食い違いはお互いの想いの違いから来ていると気づきました。
教育現場の方々が、どれほどの覚悟や責任を持って業務にあたられているのかを痛感し、想いをくみ取れていなかったことを深く反省しました。後日、改めて「現場と保護者の負担を軽減したい」と伝えたところ、担当者も話を聞いてくれるようになりました。
営業を始めた頃は、2~3人という少人数で佐賀県内を回っていました。なかなか導入が進まないことや、話が一からやり直しになることも多く、教育現場で何かを提案することの難しさを痛感しました。それでも、ありがたいことに徐々に紹介や口コミで導入が増え、「●●学校でも導入されているんですね、当校でも詳しく話を聞かせて欲しい」と声がかかるようになりました。
しかし、このままの体制で開発と営業を続けることに、次第に限界を感じ始めていました。
3.偶然の再会が転機に。木村情報技術と進める「学校PAY」販路拡大戦略
森山さん:日々の営業活動に追われていた2024年の春、外出先で偶然、木村情報技術の木村社長にお会いしました。木村社長とは、佐賀大学のベンチャー企業支援を通じて以前からご縁がありました。私が「導入先をどうやって増やそうか悩んでる」と話したところ、「当社と一緒に進めませんか?」とありがたい提案をいただきました。
その後、パートナー契約について具体的な内容を検討し、2024年8月下旬には締結しました。木村情報技術は非常にスピーディな会社で、契約して間もなく提案書やサービスサイトが完成し、共同でオンラインセミナーも開催しました。
部署の垣根を越えメンバーへ。「学校PAY」を進化させるチームの決意
早川:私は2021年に木村情報技術にエンジニアとして入社しましたが、以前は福島県で5年間小学校の教員をしていました。
2024年7月、当社が森山さんと共に「学校PAY」を進めると知り、その新規事業のメンバー募集に興味を持ちました。自分の教師経験が活かせるのではないか、そして新しいことに挑戦したいとも考え、上司に相談して異動を決意しました。営業や企画は未経験でしたが、現場の先生に笑顔を届けたい、と強く思いました。
(木村情報技術 早川)
武田:2017年に新卒で木村情報技術に入社し、エンジニアとして働いていましたが、2024年秋ごろ、早川さんに続いて学校PAYに関わることになりました。学校PAYの増員に伴う異動の打診を受け、営業のことを学びたいという考えもあったので、承諾しました。
(木村情報技術 武田)
岡本:2015年に木村情報技術に入社し、札幌支店で法人営業を担当しています。私も学校PAYの全国展開に向けた人員補強に伴い、メンバーに加わることになりました。
(木村情報技術 岡本)
教育委員会と学校のギャップを埋める。学校PAY営業チームの奮闘記
武田:サービス導入を決定するのは教育委員会で、実際に利用するのは学校です。この違いは法人企業に導入する場合と異なり、難しさを感じています。教育委員会と学校の課題や考えが、必ずしも一致しないことも多いのです。
私はまず、学校の事務担当者のお話を伺い、教育現場への理解を深めるよう努めました。ビジネス抜きに、まずは悩みや課題を教えていただけるよう心がけました。
早川:教師の頃はあまり分かっていなかったのですが、教育委員会と学校現場では、目指すことややりたいことが完全に一致しているわけではないと知りました。
教育委員会内でも、現場をよく知る方や、市役所から事務職員として配属される方など、構成が複雑です。今はそのことが少しずつ分かってきました。また、行政特有の手続きや検討の複雑さも知りました。
教育委員会も学校も、最終的には学校を良くしたいという想いは同じはずです。だからこそ、私たちはその架け橋になり、双方に有益な方法を知って欲しいと考えています。
岡本:札幌と道央圏を中心に営業活動をする中で感じたのは、教育現場の人々が「困っている」という自覚があまりないことです。業務量の多さも、月に数十時間にもなる残業も、どうにか自分たちで乗り越えようとされていると感じています。教育現場の方が声を上げることの難しさや、学校に関わるお金の流れの複雑さを、学校PAYを担当して初めて知りました。
まずは現場の方々に信頼していただけるよう努めています。早く信頼を得て、「その課題、学校PAYで解決できますよ」とお話できるようになりたいです。教育現場の方々が少しでも楽になるよう、お手伝いしたいです。
森山さん:木村社長からの提案と、仲間が増えたことを本当に嬉しく感じています。自分が続けて来たことに賛同してくれる人たちがいるのは、大きな希望です。木村情報技術のメンバーが加わったことで、自分では対応しきれなかった地域にまで手が届くようになり、全国展開も目指せるようになりました。どの地域でも、同じ悩みがあるはずです。
営業活動で実感。「学校PAY」が教育現場のニーズに応える確かな手応え
武田:正直に言えば、まだこれといった喜びは感じられていません(笑)。今後に期待しています。強いて言えば、半年以上「学校PAY」を提案してきた中で、そのニーズが確かにあると確信できたことですね。
早川:私も同じ意見です。困っている人が確実に存在し、ニーズもあることを知りました。地道に提案を続ける中で、次第に手応えを感じ始めています。「こんなのが欲しかった」と言われると、とても嬉しく、自分たちの考えが間違っていなかったと思えます。
全国に広げ、多くの教育現場の方々に楽になって欲しいと思っています。
岡本:私も確かにニーズを感じています。営業を通じて、教育現場が抱える課題の多様性に気づかされました。教育現場のニーズを知るにつれ、「学校PAY」が役立つ場面が多いと感じます。学校に特化したサービスだからこそできる細部への配慮が私たちのサービスの強みだと信じて、活動を続けていきたいです。
4.全国に広がり始めた「学校PAY」。教育現場の負担軽減を目指して
早川:教育現場の本質は、子供たちと向き合うことだと思います。私たちは、その大切な時間を増やすお手伝いをしたいです。全国の同じ悩みを抱える学校に、こうした解決方法があると広めていきたいと考えています。
岡本:将来的には、教育現場での現金の取り扱いをなくすことが理想です。これまで主な導入先は小学校や中学校でしたが、最近では専門学校でも導入が始まっています。高校はお金の管理が複雑だと聞きますが、学校PAYは高校とも相性が良く、集金作業の手間をダイレクトに削減できます。
森山さん:学校PAYは、2025年3月から大幅アップデートを予定しています。これまでは管理者向けのシステムでしたが、今後は保護者向けの管理画面を追加します。
従来は、学校PAYの利用開始時に保護者の方が金融機関の窓口で口座登録を行う必要がありましたが、アップデートによりWeb上での登録が可能になり、利便性がさらに向上します。
武田:学校PAYのサービス自体をさらに成長させつつ、展示会やオンラインイベントを通じて多くの方に知っていただきたいです。メンバーと一緒に営業活動を始めて半年ほどで、すでに3校で導入の話が進んでいます。また、「詳しい話を聞いてみたい」というお問合せも複数いただいています。
(2024年10月 展示会出展時)
小学校、中学校、高校のいずれも、お金の管理はとても神経を使いますし、複雑です。私たちは、全国の学校が抱えるこの負担の軽減に貢献していきたいと考えています。
【木村情報技術株式会社 会社概要】
木村情報技術株式会社は、2005年に佐賀の地で創業したIT企業です。“always new idea.”をモットーに、常に世の中に喜ばれるITソリューションを提供し、現在は佐賀本社のほか札幌、東京、大阪、名古屋、福岡に5つの支店と11の自社スタジオを構えています。主力事業のWeb講演会運営・配信サービスや人工知能(AI)サービスの研究・開発のほか、eスポーツやメタバース、ChatGPTを活用した新しい技術に着目・事業化し、サービス展開しています。
- AI(機械学習/ディープラーニング/生成AI)活用の研究・開発、コンサルティング
- Web講演会運営・ライブ配信、収録およびコンテンツ制作 3eLive,BizLive
- 学校集金代行サービス 学校PAY
…他、各種ソリューション提供、プラットフォーム運営
所在地 :〒849-0933 佐賀県佐賀市卸本町6-1
代表者 :代表取締役 木村 隆夫(きむら たかお)
設立 :2005年7月29日
【株式会社SA-GA 会社概要】
事業内容:学校PAYなどの決済システム開発のほか、画像解析/最適化アルゴリズムの
開発・応用などの共同開発・受託開発
所在地:〒840-8502 佐賀県佐賀市本庄町1 佐賀大学理工学部7号館308室
代表者:代表取締役社長 森山 裕鷹(もりやま ゆたか)
設立 :2018年9月25日
URL :https://sa-ga.jp/
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