有限会社十和田乗馬倶楽部
十和田だから挑戦できる「流鏑馬インストラクター」という働き方
2025年11月05日
青森県十和田市では、春に「桜流鏑馬」、秋に「世界流鏑馬選手権」が開催されます。これらの大会を支えるのが、全国でも珍しい職業「流鏑馬インストラクター」です。
十和田乗馬倶楽部では、流鏑馬インストラクターが会員への指導だけでなく、自ら競技選手として大会に出場し、地域の観光資源を支える重要な役割を担っています。
流鏑馬インストラクターとはどんな職業なのか。その仕事内容と働き方について、現場で活躍する二人のインストラクターの声を通してご紹介します。
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流鏑馬インストラクターとは
流鏑馬を観覧した人の多くが、「手綱を離して馬の上から矢を放つなんてすごい」と、その技術の高さに驚きます。疾走する馬の背から的を射抜く流鏑馬。華やかな競技は、安全と伝統を守り抜く確かな技術の上に成り立っています。
古来、神事として執り行われてきた流鏑馬の射手は、男性のみが許され、その技術はそれぞれの流派の中で限られた人物にのみ受け継がれてきました。
一方スポーツ流鏑馬は、この流鏑馬を老若男女誰でも安全に楽しめるようにと競技化したものです。伝統的な理論を踏襲しながらも、競技としての新たな形を確立してきました。
「誰でも安全に楽しめるように」──この実現には、馬の調教をはじめ、乗馬の技術、弓矢の扱い方、コースの設定など、知識と経験に裏打ちされた、感覚だけではない理論が必要になります。つまりスポーツ流鏑馬には、技術理論を正しく理解し、それを体系的に指導できる人材が不可欠です。
(一社)日本流鏑馬競技連盟では、競技規則及び、安全で合理的な流鏑馬基礎理論の講義と試験を行い、流鏑馬ライセンスを交付しています。
流鏑馬ライセンスは、三級を最下位とし、段階的に技術を積み上げていく仕組みです。そして最上位に位置するのが「流鏑馬インストラクター」です。この資格は、技術の習熟はもちろん、後進を育成し、流鏑馬の伝統を未来へつなぐ指導力を持つ者に与えられます。
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流鏑馬大会で選手が安全に競技に挑み、観客を魅了できるのは、裏側に選手たちの日々の鍛錬と、その選手を支えるインストラクターによる確かな指導があるからです。流鏑馬インストラクターという職業は、単なる指導者ではなく、地域の観光イベントを支える土台であり、これからのスポーツ流鏑馬を支える特別な役割を担っているのです。
現場で活躍するインストラクターの声
異業種からのキャリアチェンジ
佐々木インストラクター(乗馬歴12年、インストラクター歴11年)
馬の世界へ飛び込んだきっかけ
以前はファストフード店の店長として勤めており、流鏑馬や馬と関わるようになったのは転職してからでした。当時の職業とは全く別の世界を経験したいと求人を探していたとき、現在の乗馬倶楽部の求人が目に留まり、入社を決めました。
入社してから基本的な乗馬技術を学びました。そこからインストラクターになるまで、流鏑馬や弓術について歴史的背景や、道具の構造、使い方まで、深く探究しました。
前職で培った人材育成スキルは、現在の仕事に大いに役立っています。生徒への指導のみならず、馬の調教にも応用できていると実感しています。
一日の流れ
朝9時に出社し、厩務作業にフォローが必要であれば対応します。10時から16時までは、乗馬や流鏑馬の指導。レッスンのない時間は馬の調教を行います。時間に余裕があれば、施設環境の整備も担当します。壊れた設備の修繕や、草刈り、除雪、発注業務など、仕事は多岐にわたります。
夕方には、馬への餌やりや片付け、翌日以降の準備をして一日が終わります。
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十和田乗馬倶楽部での普段の流鏑馬指導の様子
指導で大切にしていること
指導する上で最も重視しているのは、観察・洞察・想像です。技術面と精神面の両方を、人と馬、同時に見ていくことを心がけています。
先入観を持たずによく観察し、事実を丁寧に収集します。そこから良い点と改善点を見つけ出し、改善すべき点については、最も根本的な原因を探るようにしています。
フィードバックの際は、まず良い点を伝え、その後で改善点をなるべく簡単に伝えます。生徒さんがイメージしやすい言葉を選ぶことも大切にしています。
何より忘れてはならないのは、安全に関わる内容を最優先に改善していくことです。
やりがいと課題
インストラクターとして最も誇らしく感じるのは、教えた生徒さんや調教している馬が、第三者から褒められたときです。
指導の中で、改善点を伝えても、生徒さんが的に的中させることだけに集中してしまい、本来優先すべき改善点がおろそかになってしまうことがあるのが課題と感じています。これに対し、優先して意識してほしいことと、その理由、そしてそれが何につながっていくかを丁寧に説明し、理解してもらった上で反復練習をしてもらうようにしています。
今後の挑戦
スポーツ流鏑馬業界は、現状のままではいつか手詰まりになってしまうのではと感じています。流鏑馬ホースを育成し、流鏑馬を指導できる施設や団体が少なく、流鏑馬インストラクターになりたいと思う人も少ないからです。
この状況を打破するために、流鏑馬インストラクターは非常に重要なポジションを担っています。新しい分野で一旗揚げたいという野望がある方、一般的な職業では物足りないと感じている方々には、チャレンジする価値の高い職業だと思います。
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あえて難しい馬に乗り大会にプロ級出場する佐々木インストラクター
セカンドキャリアでインストラクターへ
櫻田インストラクター(乗馬歴16年、インストラクター歴2年)
乗馬との出会いとキャリア形成
流鏑馬や馬と関わるようになったきっかけは、子どもに乗馬を習わせたことでした。いつの間にか、自分の方がすっかりハマってしまい、仕事のかたわら十和田乗馬倶楽部の会員としてレッスンを受け、ライセンスを取得しました。
流鏑馬を観光資源やスポーツ競技として普及発展させる団体の構成員としても活動し、岩手県の盛岡八幡宮で流鏑馬を奉納する南部流鏑馬会の会員として、奉納神事にも携わってきました。
そうした中で、本格的にインストラクターへの転職を決意しました。
生徒さんの成長とともに
生徒さんの成長を感じる瞬間は数多くあります。皆さん、軽速歩がリズム良くできるようになるので、本当に素晴らしいと感じます。
指導する上で特に重視しているのは、笑顔を引き出すことです。笑顔になることで緊張もほぐれますし、楽しいと感じてもらうことが次へのモチベーションにつながります。
やりがいと課題
インストラクターとして最も誇らしく感じるのは、きちんとした指導ができたときです。乗馬の上達には時間がかかります。だからこそ、次につながるレッスンを常に心がけています。また、一人ひとり感覚が違うため、伝えたいことがきちんと伝わっているか、常に確認する必要があります。
そのために大切にしているのがコミュニケーションです。お客様からその日の目標ややりたいことを聞き、それに合わせたレッスン内容を提案し共有する。そうすることで、より充実したレッスンになるよう工夫しています。
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指導力の向上を目的とした、流鏑馬流鏑馬指導者育成セミナーの様子
伝統とスポーツ、二つの流鏑馬
神事流鏑馬は、危険を伴う限られた男の世界であり、観て楽しむものに感じます。一方、スポーツ流鏑馬は誰でも参加でき、やって楽しむもの。そこに大きな違いを感じます。
流鏑馬を通じて、生徒さんに1000年続く伝統馬上武芸として、昔から伝わるかたち、やり方、考え方を学んで身につけてほしいと思います。馬捌きにしても、騎乗姿勢にしても、馬具にしても、興味深くて面白いものばかりです。
広がる可能性とこれからについて
今後の目標は、インストラクターとして常に学び、スキルアップし続けることです。
安全で楽しく理にかなった流鏑馬を普及していくためには、正しい知識を持ったインストラクターが欠かせません。外国人への普及など、活躍の場は今後ますます広がっていくでしょう。
我が国が誇る伝統馬上武芸の流鏑馬を後世に伝えていく。その重要な役割を担うことにもつながる流鏑馬インストラクターの活躍は、これからますます世界から注目されていくはずです。
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EXPO 2025 大阪・関西万博のイベントにて、流鏑馬の楽しさを普及する櫻田インストラクター
流鏑馬インストラクターという働き方
二人の流鏑馬インストラクターの話から、スポーツ流鏑馬の世界では、未経験者や異業種からの転職や、セカンドキャリアを探している方でも、それぞれの強みを活かしながら活躍できることが分かります。
「教えること」と「自ら挑むこと」を両立しながら、伝統とスポーツの間で新しい価値を生み出していく──それがこの仕事の魅力ではないでしょうか。
十和田乗馬倶楽部では、働きながら資格取得を目指せる環境が整っています。将来的に、例えば独立や、フランチャイズを視野に入れたノウハウを学ぶ機会もあります。
地域の観光を支え、日本の伝統文化を未来へつなぐために、私たちは、共に挑戦していく仲間を募集しています。
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