テラスマイル株式会社
コメの価格、安定のカギは“ちょうど良い価格”を目指すこと
2025年11月11日
米の価格高騰が社会的な話題となる中、「適正価格」をめぐる議論が続いています。
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しかし、これまでデータを活用しながら“儲かる農業”を支援してきたテラスマイルは、価格が高い・安いといった「適正価格」ではなく、作り手が翌年も無理なく、投資もして、作り続けられる価格である「再生産価格」に注目しています。
生産者が安心して生産を続けられる環境を構築しつつ、市場にも必要な量を安定的に供給できること。それが、米の価格を安定させ、持続可能な農業を実現するカギだと考えているためです。
今回は、テラスマイルがこれまで行ってきた米農家支援の取り組みを振り返りながら、データの力でどのように“ちょうど良い”価格と市場環境を築こうとしているのか。代表取締役・生駒祐一氏へのインタビューを通じて紹介します。
データ活用で米農家を支援。気候変動に備え、“儲かる農業”へ
──テラスマイルとして、米農家に対してこれまでどのような支援をしてきましたか?
生駒:テラスマイルでは、農業経営を“見える化”するサービス「RightARM(ライトアーム)」を提供し、全国500件以上の農家の経営改善を支援してきました。
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▲データを元に、“儲かる農業”を支援
特に米農家への支援には力を入れており、気象情報をもとにした気候変動対策や、ドローン・自動トラクター投資のROI(投資対効果)の考え方を伝えています。
中でも、気候変動については、作り手の関心が急速に高まっており、対応が急務だと考えています。今年7月の干ばつでは、収穫が大幅に減少した農家もありました。「同じことを二度と繰り返してはいけない」という危機感から、気候変動に備えた“儲かる農業”への転換が加速しています。
──気候変動による干ばつの影響もあり、米の価格変動が相次いで報じられています。その背景をどう見ていますか。
生駒:まず前提として、米産業では生産現場と行政・市場の間に「情報の非対称性」が存在しています。
現場のリアルな状況と、行政が把握している情報との間に大きな差があるのです。そのため、気候変動が進む中で、本来であれば“作り方を変える”“品種を変える”といった対応を取るべきであるにも関わらず、その判断がしづらい状況にあります。
需給のバランスを整え、“ちょうど良い”流通を実現することが肝
──その課題を、テラスマイルとしてどのように解消しようとしているのでしょうか。
生駒:データの力で解消したいと考えています。そのために立ち上げたのが「ジャスタウェイ」です。
ジャスタウェイは、買い手側が事前に必要な量をシステムに入力し、作り手がそれを把握することで、“ちょうど良い”流通量を担保すること。それにより、価格を安定させ、作り手もきちんと儲かり、買い手も適切な価格で適切な量を仕入れられることを目指す仕組みです。
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作り手と買い手が、それぞれ「どれだけ作れるか」「どれだけ必要か」を事前に共有できるため、早い段階で生産量や仕入れ計画を調整することができます。つまり、「作りすぎて余らせる」「足りなくて困る」といった状況を未然に防ぎ、“方向転換のしやすさ”が大きく高まるのです。
──価格を安定させる取り組みはこれまでもありましたが、今回の取り組みは何が違うのでしょうか。
生駒:米の「適正価格」ではなく、作り手が翌年も無理なく農作物を作り続けられる「再生産価格」に注目するという点が、これまでと大きく異なります。
そもそも、「適正価格」は立場によって異なります。作り手からすると高い方がうれしいですし、買い手からすると安い方がありがたい。ただ、それではいつまでたっても価格は安定しません。
一方で、再生産価格はデータを元に客観的に導き出すことができます。これにより、作り手がきちんと儲かる金額を担保しつつ、買い手も高値になりすぎない適切な価格で仕入れられる環境が実現します。
──再生産価格を、今打ち出す意味は何でしょうか。
生駒:マクロな視点で見ると、来年には米の価格が下がると考えています。米を食べる人は減っているのに、供給が増えているためです。
お米の価格が下がりきってから再生産価格を示しても、既にその価格を割り込んでしまっているため、作り手の経営が再び厳しくなり、供給が減り、また価格が不安定になり…という負のスパイラルに陥る可能性があります。
そもそも、これまでの米づくりは「いくらで売れるか分からないまま作る」構造が前提でした。収穫が近づいた段階でようやく買取価格が提示されるため、作り手としては“出たとこ勝負”にならざるを得ません。収支が読めない状況では、投資も経営計画も立てられず、農業が安定した産業になりにくい要因となってきました。
そのため、米の価格が高い今のうちに、作り手がしっかり利益を確保しつつ、買い手も納得できる“落ち着いた価格=再生産価格”になるよう、需給のバランスを整えることが必要なのです。
作り手と買い手がデータでつながり、“ちょうど良い”価格で取引ができる社会へ
──このジャスタウェイによって、どのような未来を描いていますか。
生駒:これまでの米の流通は市場での取引が中心で、買い手は「どれほどの量が仕入れられるか分からない」、作り手は「売ってみるまで儲かるか分からない」という不確実性を抱えていました。
その結果、豊作の年は安値で買われ、不作の年は高騰という、誰も得をしない構造が続いていたのです。
私たちはジャスタウェイで、この需給をデータで可視化し、生産者と買い手が直接つながる仕組みを整えていきます。気象データをもとに品種選定や植え付けの時期を最適化することで、想定した量をきちんと生産できるようにし、買い手の元に必要な量が適切な価格で届くようにします。
──それは画期的ですね。ジャスタウェイが実現することで、作り手と買い手にとってどんなメリットがあるのか、具体的に教えてください。
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生駒:作り手にとっては、買い手の存在と販売価格を事前に把握できるため、収益を見込んだ計画的な経営が可能になります。気象データを組み合わせることで、干ばつや高温などへの対策を立てやすくなり、より安定した生産を実現できるのが大きなメリットです。これにより、経営の安定化ができることに加え、機械化や新規投資も進めやすくなり、持続可能な農業が実現します。
一方で、買い手にとっても、必要な量や品質をあらかじめ把握できることで、在庫過多や仕入れリスクを軽減できます。供給量が読めることで価格も透明化し、作り手との信頼関係を長期的に築くことができます。
それによって、最終的には、消費者もまた、品質が担保された農産物を“ちょうど良い価格”で手に入れられるようになります。
作り手と買い手がデータでつながることで、誰もが納得できる農業が実現できるのです。
──ジャスタウェイを今後どのように展開していきたいか、教えてください。
生駒:私たちとしては、この取り組みを全国に広げていきたいと考えています。「ライトアーム」は農業を“儲かる産業”にするための分析ツール、そして「ジャスタウェイ」は、買い手と作り手をつなぐマッチングのシステムです。
この2つを組み合わせることで、不必要なリスクを取らずに儲かる農業を実現し、日本の米産業を安定化させられると考えています。
「きちんと儲かる農業を実現したい」「消費者に選ばれる商品をきちんと届けるため、安定的な仕入れを実現したい」。
そんな方々と一緒に、持続可能な食の未来を築いていきたいと考えています。
ジャスタウェイについて:https://terracemile.jp/justaway
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