日本パレットレンタル株式会社

国際物流にパレットを。物流に携わる人々への想いから始まった挑戦

2025年11月13日

日本パレットレンタル(JPR)は、物流用パレットを様々な企業が共有できるようにするしくみを提供している企業です。食品・日用品など暮らしに欠かせない商品が消費者の手元に届くまでの物流をJPRのパレットが支えています。


物流を取り巻く環境が厳しさを増し、日本国内ではレンタルパレットによる輸送に対する企業の関心が高まっています。レンタルパレットのしくみを海外にも広げたい。その想いをもって事業に取り組むJPR海外営業部管掌 執行役員 新井健文さんに話を聞きました。


日本パレットレンタル株式会社 執行役員 海外営業部管掌 新井健文(あらい たけふみ)

国際間でのパレット輸送は労働条件の改善と環境負荷軽減に効果


―新井さんが取り組んでいる国際輸送へのレンタルパレットの普及について教えてください。


(新井)私たちJPRが扱う「パレット」は、物流の現場で輸送や保管を行う際に、積載商品をユニット化し効率を高める道具です。JPRはレンタルという方法で、サプライチェーン上の複数の企業が同じパレットを共有し、リレーのバトンのように使うことで、物流のつなぎ目で起きる非効率を解消するしくみを提供しています。JPRが企業に供給するパレットは年間およそ5,300万枚で、日々の暮らしに欠かせない様々な商品が、実はJPRのパレットで輸送されています。


JPRのパレットデポ


(新井)今、日本の物流業界は深刻な労働力不足に直面しています。その原因は物流作業に伴う肉体的負荷や長時間労働で、レンタルパレットのしくみは解決の手段になります。このしくみを国際輸送にも広げることが私の所属するJPR海外営業部のミッションです。


―国際輸送でのパレットの利用状況は?


(新井)中国やASEANの国々では、製造工場から最初の物流拠点までの一次輸送はパレットが使われるケースが見られますが、二次、三次の輸送はまだ「バラ積み」が多いようです。国際間の輸送でも、パレットそのもののコストや海上コンテナの積載率への影響から、パレット輸送があまり普及してきませんでした。パレットを使うとその分だけコンテナ内の空間を占めてしまい、製品を運べる量が減ってしまうという訳です。


―そういった状況に変化が起きているのでしょうか?


(新井)手荷役でのコンテナへの積み降ろしは、肉体的負担が大きく労働時間も長くなりがちであるため、ドライバーや運送会社に敬遠されます。特に、荷物が重い場合には顕著で、荷主の視点ではコストアップの域を超えて物流がストップしてしまうリスクも現実味を帯びています。労働力不足や人件費の上昇といった変化は、日本以外の国々でもそれぞれに表れ始めています。コストが上がってくるにつれ、まず「ワンウェイパレット」が国際輸送の現場で見られるようになってきました。


―ワンウェイパレットは課題を解決したのですか?


(新井)ワンウェイパレットには、軽量で安価であるという長所があります。反面で強度が低く再利用は困難であることが一般的です。このため、いくつかの課題が残されています。

一つは、いわゆる「積み替え」の発生です。例えば、食品を日本に輸入する場合、最終的に卸売業やスーパーやコンビニといった小売業の物流センターまで輸送を行いますが、ワンウェイパレットでは荷役や輸送の過程で破損してしまう恐れがあります。また、自動倉庫等、一部の設備では構造上ワンウェイパレットが使用できません。このため、ワンウェイパレットから、わざわざ別のパレットに製品を積み替えるという作業が発生しています。一方、レンタルパレットは繰り返し使用されることを前提に設計されています。また、陸上競技のバトンのように次の荷主や得意先へとリレーしていくことができますから、積み替えの発生を解消することができます。


ー環境に対する意識も高まっていますね。


(新井)その通りですね。廃棄が生じることはワンウェイパレットのもう一つの問題です。企業が環境に対する方針や目標を掲げて取り組みを進める中で、ワンウェイパレットをやめて、リターナブルなパレットの導入を検討する動きがあります。廃棄を無くし、パレットを長く大切に使う方法としてもレンタル方式を評価する声が高まっています。


レンタルパレットを世界に広げる仕事に込めた想い


―新井さん自身が、海外事業に携わった経緯を教えてください


(新井)実は、個人的な「悔しさ」と「荷役作業」が原点です。わたしは中学校を卒業するまでの7年間、父の仕事の都合で台湾に住んでいました。それもあって、いつか海外とかかわる仕事をしたいと思っていました。そんなとき、上司とオーストラリア出張に同行することがありまして。商談に同席したのですが、全く英語の会話についていけなかった。「自分の思いとは裏腹に何もできなかった」という悔しさで、その日から出張中は周りの人にひたすら英語で話しかけ続けました。その様子を上司が見ていまして、「新井、英語頑張ってみろ」と。それから英語を本気で勉強しました。

もう一つ、私には当社の「人々を重労働から解放する」というミッションへの強い共感があります。大学のときに運送会社の倉庫でアルバイトをしていましたが、そのときバラ積み・バラ降ろしの荷役作業をしました。まさかレンタルパレット会社に入社するなど、当時は思いもしないわけですが、就職活動で初めて「人々を重労働から解放する」という言葉を聞いたときに「これだ!」と思ったのは今でも覚えています。入社以来、国内事業に携わる期間が長かったのですが、ちょうど英語の会議に困らなくなってきた頃合いに、海外営業部の担当となりました。当社が50年間推進してきた、レンタル方式による一貫パレチゼーションは、「人々を重労働から解放する」を海外でも実現できる手段だと信じています。「悔しさ」と「荷役作業」、この2つの原体験がかけ合わさることで海外でも一貫パレチゼーションを実現するという動力に繋がっています。


海外事業への想いを語る新井さん


―JPRにとって海外事業は創業以来の挑戦でもありますよね。


(新井)そうですね。JPRの創業時の会長でもある平原直先生は、「物流現場で働く人々を重労働から解放したい」という想いから、日本にパレットを普及することに半生を捧げた人物です。晩年は「善隣物流」という言葉を掲げ、アジアの国々が共通のパレットで輸送を行うことを提唱されました。


物流現場の人々を重労働から解放する―その想いの原点となった写真の1枚(流通経済大学 所蔵)


―平原先生の想いは、現代の物流の状況にも通じますね。


(新井)平原先生の物流現場で働く人へのまなざしや、社会的なしくみづくりを目指す理念は色褪せないどころか、とても現代的だと思います。今、法律によって企業に物流統括責任者の設置を義務付け、物流部門の枠を超えた取り組みを促す動きがあります。企業の壁を超えた連携や協調が重要視される潮流は、平原先生のビジョンの確かさを再認識させます。

平原先生が掲げた「善隣物流」――国際間でのパレット輸送を広げるという考え――をJPRは草創期から大切にしてきました。例えば、JPRには1985年には韓国パレットレンタル株式会社(当時)の設立を支援したといったエピソードがあります。創業以来それぞれ独立して事業を営んでいますが、互いに重要なパートナーという関係です。JPRの先輩社員たちは草の根的な活動を含め、レンタルパレットによる国際間の輸送の普及に取り組んできました。私は、海外事業に携わるようになって、アジアの国々が物流でつながっていることを体感しています。「善隣物流」というコンセプトを理念としてだけではなく、もっと具体的な実感を伴って受け止めるようになりました。

行動と対話で利用の輪を広げたい


―物流を取り巻くグローバルな環境変化は、レンタルパレットによる輸送の普及につながりそうです


(新井)ビジネスベースでレンタルパレットによる国際輸送が広がる可能性が高まってきました。ただ、受け身で待っているだけで広がるような仕事ではありません。ワンウェイパレットとレンタルパレットを1枚当たりの価格で比較すれば、レンタルパレットのほうが高額です。それを運用して、「こなれた」利用料金を実現するためには、レンタルパレットの稼働を高めて、空パレットの回送を減らす必要があります。これは国内事業でも同じです。例えば、本州から北海道へ向けた需要があれば、対になる北海道から本州へのお客さまの利用を開拓することで空パレットの回送を減らします。JPRはこのプロセスをひたすら継続しています。

国際間の輸送では、発着地がさらに遠く離れていますから、空パレットの回送をなるべく少なくするようにコントロールすることは、お客さまのコスト面での要求に応えるために欠かせませんし、ひいては普及のカギともなるわけです。


―新たな発想も必要になりそうですね


(新井)輸出・輸入の2つの国や地域での往復だけでなく、視野を広げてエリアで俯瞰してみることを考えています。例えば、国内事業において九州は、空のレンタルパレットが偏在しがちなのですが、九州から韓国や中国大連や青島付近の企業にパレットを供給してどうか。韓国・中国から日本向けだけではなく、別のアジアの国への輸送案件はないか。日本国内の事業基盤を活かしながら、ネットワークの線を太く、強くしていく方法を模索しています。

営業活動と並行して各国での拠点整備やパートナーとの連携にも力を注いでいます。


JPR社長の二村とJPR(Asia)Co., Ltd.(タイ)のメンバーとともに


(新井)この仕事は、実際に人に会い、現地に足を運ぶことが大切です。一人でも多くのお客さま、パートナーに会い、現場に触れ会話を重ねることで新たなニーズやアイデアを得ることができます。これからも、海外輸送でのレンタルパレットの普及に挑戦していきたいと思います。






行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

記事一覧に戻る