株式会社ユーティル

AIが変えるWeb制作市場の未来とは?ユーティルがM&Aで描く「顧客に選ばれ続ける」成長戦略

2025年11月26日


AIの進化により、Web制作業界は根本から変わりつつあり、規模とデータを持つ企業が優位に立つ時代が到来しています。こうした業界再編の流れを見据え、ユーティルは、「現場知」に強いリエイトを迎え入れるべく、M&Aを決断しました。ユーティルのデータ資産と制作会社のネットワークに、リエイトの中小企業支援の実装力を掛け合わせ、AI×BPOで「安価で手間なく」成果に直結する体制を確立します。


今回は、株式会社ユーティル代表取締役社長 岩田真氏と、株式会社リエイト代表取締役社長 後藤涼也氏に、M&Aに踏み切った背景と想い、そこから生まれるシナジー、今後の展望について伺いました。

AI×標準化で「選ばれ続ける」企業になる─M&A(ロールアップ)の背景と狙い

――今回M&Aに踏み切った背景、思いについて改めて教えてください。

岩田:ユーティルがM&Aに踏み切った一番の背景には、Web制作業界の構造変化があります。これまでの市場はプレイヤーが分散し、各社が似たようなサービスを提供しているため、利用者側からすると「どの支援業者が本当に良いのか分からない」状況が続いていました。


そこで私たちは、AIを軸に、案件ごとの「点の対応」ではなく、複数サイトやチャネルを横断する「面の支援」へと発想を切り替えました。戦略から制作、運用、改善までを同じ仕組みで回すことで、どのお客様にも一貫した品質とスピードを提供できる体制を整えています。


今後、市場は少しずつ統合に向かい、優れたサービスを提供できる少数の企業が大きなシェアを占める流れになると考えます。ユーティルは、この市場変革をリードする側に立ちたいのです。そのためには志を同じくする優良な企業と手を組み、市場を統合していくことが重要だと判断しました。


この1〜2年は、複数の企業と丁寧に対話を重ね、連携の可能性を探ってきました。ただ、M&Aは当然ながら慎重な意思決定です。そうした中ですでに取引があり相互理解が進んでいたリエイトが、ちょうど事業承継の選択肢を検討されていたことも重なり、協議が一気に具体化しました。


後藤:事業の「次の一手」を構想していた矢先に、お声がけをいただきました。約9年間少数精鋭でWeb制作に取り組み、ありがたいことに全国で150社前後のお客様を支援してきました。


ただ、社員2名という体制では、お預かりした案件への確実な対応が最優先となり、本来やりたかった能動的な提案や長期的な伴走に十分な時間を割きづらい。加えて、奈良は県外就業率が高い上、大阪圏は採用競争が厳しく、必要人材の確保が難航していました。


そんな折、今年4月にユーティルからM&Aのご提案をいただき、「自社だけで抱え込まない」現実的な選択肢が視界に入ってきました。対話を重ねるうちに、私たちの現場知とお客様との関係性に、ユーティルの仕組みとプラットフォームを掛け合わせることで、より持続的で大きな価値を届けられる——そう確信しました。そうした判断の延長線上に、M&Aという決断があります。


岩田:リエイトには他社からも複数のご提案があったと伺っていますが、最終的に当社をお選びいただきました。むしろ私たちのほうが「選んでいただいた」という感覚が強く、身の引き締まる思いです。

情報資産とネットワークが裏付ける「現場にフィットする支援」─ユーティルの強み

――ユーティルの印象と強みは、どのような点にあると考えますか。

後藤:データと知見の蓄積量です。ユーティルはビジネスマッチングサービス「Web幹事」※を運営しており、中小企業から大企業まで多数のホームページ案件に関する情報を蓄えています。また、数千社規模の制作会社ネットワークを抱え、日々やり取りされる現場の声や業界動向を把握している。


リエイトは7〜8年前からお取引があり、現場でもユーティルのマッチングを継続的に活用してきましたが、制作側の立場から見ても実務適合性が高く、成果に直結する優れたサービスだと実感しています。


Webサイトを発注する企業側と制作者側、その両方の課題やニーズを熟知している点は、この業界において圧倒的な強みだと感じます。


※2025年11月現在、事業を分社化の上、株式譲渡したため、運営は株式会社Web幹事が行っております。

「中小企業のリアル」とともに歩む──リエイトの原点とWebにたどり着くまで

――中小企業支援に取り組むようになった背景やきっかけをお聞かせください。

後藤:身の回りに中小企業の経営者が多かったことが原点にあります。父が大阪で建設業を営んでいたこともあり、幼い頃から経営者の背中を見て育ちました。


また、中高時代はプロゴルファーを目指してゴルフに打ち込んでいたのですが、その際に交流する大人の多くが中小企業の社長だったのです。キャディでご一緒した時などに、経営の悩みや嬉しかったことを赤裸々に聞かせていただく機会もありました。


そうした環境の中で、自然と「将来は自分も何かの形で役に立ちたい」という思いが芽生えていきました。自分にとって中小企業を支援することの意義を強く実感させる原動力になったのだと思います。

――数ある分野の中で、なぜWeb制作を事業領域に選ばれたのでしょうか。

後藤:率直に申し上げると、偶然の出会いがきっかけです。20歳前後に勤めていた会社で、お客様から「ホームページを作ることができますか」と尋ねられたのが始まりでした。


当時はまったくの未経験でしたが、営業として「できます」とお引き受けしたのです。独学でなんとかサイトを作り上げて納品したところ、お客様に非常に喜んでいただけました。


それまでアパレル商社で有形商材の営業に携わっていましたが、自ら手掛けた無形のサービスが価値となってお客様に届く、その手応えは鮮烈で、すぐにWebの世界へ惹き込まれたのです。その後、制作会社に転じて腕を磨き、独立して現在に至ります。

期待値ギャップを超える現場力──課題と成果で語る2つのケース

――Web制作の現場で感じていた課題を教えてください。

後藤:Web制作の現場で常に感じていた課題は、中小企業の経営者の方々との期待値のすり合わせでした。多くの現場で、中長期の売上や採用、ブランドづくりへの寄与といったWebサイトが持つ本来の価値が十分理解されておらず、短期のコストが優先されることがあります。


実際には、Webサイトは「作る」で終わらず「使い切る」ところまで設計・運用できれば、事業の成長に大きく貢献します。ところが、その成功体験が社内にないため重要性が伝わりにくく、結果として投資が最小限にとどまってしまう。


だからこそ私たちは、「ホームページをしっかり作り活用すればこれだけ効果があります」「費用対効果はこれくらい見込めます」とわかりやすく示し続ける必要があると感じてきました。十分な設計と運用体制、適正な予算がそろえば、成果はきちんと出ます。

――具体的な成功事例があれば教えてください。

後藤:印象的な事例を2つご紹介します。


事例1.解体工事を営む建設会社様


お付き合いを始めてから約8年が経ち、当時の年商は約2億円でした。解体業界特有の構造上、売上の100%が下請けという状況で、キャッシュフローや支払い遅延のリスクが経営を圧迫していました。


そこで最優先の課題を「下請けからの脱却」と定め、直請け獲得を目的にコーポレートサイトを制作し、以降、集客のご支援を続けました。結果、直請けの問い合わせは月0件から50件に増加し、ピーク時には100件近くまで拡大しました。現在は年商が20億円以上となり、目的から逆算した情報設計と地道な運用が成果を押し上げたと考えています。


事例2.仏壇の供養・処分サービスを営む会社様


6〜7年前に新規事業を検討されていたお客様から、「仏壇処分、不用品回収、遺品整理のいずれかを始めたい」とご相談を受けました。


市場性や競合状況を踏まえ、仏壇処分に集中する戦略をご提案。専用サイトを立ち上げ、広告やSEOを含む集客を支援しました。現在、問い合わせは月約700件、売上も年間で3〜4億円規模へと成長しています。ここでも、作って終わらせずに運用前提で設計する姿勢が成果につながったと感じます。


両社ともに、「ホームページでここまで事業が変わるとは思わなかった」というお言葉をいただきました。言い換えれば、投資対効果のナラティブを共有し、実務に落とし込む伴走さえできれば、Webは経営の中核に十分なインパクトをもたらし得る。それを実証したケースだと捉えています。

小さく始めて、土台を磨く――デジタル化の第一歩から発信・集客へ

――今回のM&Aを通じて、デジタル化に踏み出そうとする中小企業にどのようなメッセージを届けたいですか。

後藤:まずお伝えしたいのは、完璧を目指すより「小さく始める」ことの大切さです。特に地方では紙ベースのやり取りが根強く、デジタル化に二の足を踏んでいる企業が少なくありません。


たとえば、見積書や請求書を紙から電子データへ切り替える、社内書類を段階的にペーパーレス化するといった、身近で負担の少ないところからで十分です。そうした一歩を踏み出すことで業務は確実に効率化し、デジタルの便利さを実感できるはずです。

――「小さく始める」の次に、日々の業務のデジタル化を発信・集客につなげるには、最初に何へ取り組むのが有効でしょうか。

後藤:自社のホームページを持つことが出発点になります。すでにホームページをお持ちであれば、掲載内容を最新情報に更新し、問い合わせフォームを整備するなどして、「存在するサイト」から「活用するサイト」へとアップデートしていきましょう。


土台としてホームページがしっかり機能すれば、次のステップであるWeb広告の活用やSNS発信にも取り組みやすくなります。「発信しているのに埋もれてしまう」というお悩みも、多くはこの基盤強化が解決の糸口になると考えます。

AI×BPOで「安価で手間なく」を現実に――M&Aがもたらす顧客へのメリット

――今回のM&Aにより、リエイトの支援ノウハウとユーティルのAI×BPOが融合すると、中小企業にはどのようなメリットが生まれるかお聞かせください。

後藤:中小企業のお客様が「安価で手間なく高度なWeb支援サービスを受けられる」ことです。現場で痛感したのは、多くの企業が「予算」「IT知識」「人手」不足という三重苦を抱えていることでした。


そのため、プロに任せたい業務でも費用の問題で外部委託を諦めたり、社内にIT人材がいないためデジタル施策に踏み出せなかったりするケースが非常に多かったのです。


従来は、人手によるBPO対応が前提で人件費負担が大きく、結果的に高額化しがちでした。しかし、ユーティルはAI技術を駆使してサービスを提供することで、コストや手間を大幅に削減する仕組みを持っています。そのため、ホームページ制作にとどまらず、本来であれば予算や人手の制約で諦めざるを得なかった集客、販促の部分まで含めて、一貫してサポートできるのは大きなメリットでしょう。


岩田:当社は資金調達でAI開発を加速し、AIを組み込んだBPOで実績を重ねてきました。リエイトのきめ細かな伴走ノウハウと当社のAI×BPO基盤が融合することで、設計、制作、運用、改善をワンストップで標準化し、AIによる自動化とデータ計測で改善を高速に回す、再現性の高い運用体制が生まれます。これまで単独では難しかったスピードとコストで中小企業様に成果をお届けできると考えます。

それぞれの「次の一手」──事業承継支援への挑戦とユーティルの拡張戦略

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

後藤:私個人の今後という点では、新たに中小企業向けの事業承継支援に取り組みたいです。


9年間事業を営む中で、多くの経営者の方々とお話しする機会があり、事業の将来像を伺ううちに「後継者がいない」という切実な声を幾度も耳にしました。選択肢を示し意思決定に伴走する役割の必要性を強く感じたのです。


地方では承継やM&Aの選択肢がまだ十分に認知されておらず、専門の支援機関も都心に比べ少ないのが現状です。


今回、自社のM&Aを当事者として経験したことで得た知見も活かし、地元奈良をはじめ地方の中小企業の事業承継をサポートする仕組みづくりにチャレンジしたいです。

――新規事業の展開にあたり、活動体制に変化はありますか。

後藤:活動拠点の見直しを視野に入れています。


今回の譲渡に際し、数日間、ユーティルで社内業務を体験し、エネルギーとスピード感に強い刺激を受けました。これを機に「次に自分がどんな業態で、どこまで目指すのか」を改めて考えるようになりました。


その実現には人材、顧客、情報の集まる土壌が不可欠だと痛感しています。今後の事業の性質や求める成長スピードを踏まえ、大阪など、より広い市場と人材の集積地への拠点移転も選択肢に入れ、検討を進めています。

――後藤さんのお話を踏まえ、ユーティルとしての今後の展望をお聞かせください。今回のM&Aで、提供価値はどのように広がるのでしょうか。

岩田:会社全体の展望として申し上げると、今回リエイトをグループに迎えたことで、私たちの顧客基盤は大きく広がります。


これまでは創業したての小規模事業者のお客様が中心で、提供サービスも企業のコーポレートサイト制作が主でした。しかし今後はリエイトのお客様である典型的な中小企業、社員数で言えば5〜30名規模、年商で数千万円から数億円といった層にもサービス提供していくことになります。


顧客規模のレンジが一段上がることで、「ホームページを作って終わり」ではなく、その先の集客支援や採用サイト制作など、より踏み込んだ課題解決型のサービス展開が可能になります。

――具体的には、広がった顧客層に対してどの領域で提供価値を拡張していくお考えですか。

岩田:従来型のコーポレートサイト制作に加えて、ランディングページ(LP)や採用サイトの制作・運用といった領域にも力を入れていきたいです。LP一つとってもコーポレートサイトとは制作手法も目的も異なり、非常に奥深い分野です。


今回のように専門性を持った企業と連携しグループに加えていくことで、そうした新領域にもノウハウを広げ、さらにAI技術による効率化を図ることができるでしょう。リエイトの合流は、その第一歩になると期待しています。




行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

記事一覧に戻る