株式会社ローンディール

10年目のローンディール、新旧代表対談。越境人材が組織にもたらすのは“生ハムメロン”だった!?

2025年11月27日

「越境」をコンセプトに、企業の人事・組織課題に応じた複数の事業を展開するローンディール。創業から10年の節目に、創業者の原田未来が書籍『越境人材』を上梓しました。


労働人口の減少や生成AIの進化など、個人の働き方や、個人と組織の関係性は、今、大きな転換点を迎えています。従来の延長線上にあるスキルや仕組みだけでは限界が見えている中、組織を越えて新たな視点や経験を取り入れる「越境」が、変化に対応する鍵として注目されています


しかし、実際に取り組んでみると、「誰を越境させるのか」「戻ってきた後にどう活かすのか」、多くの企業が同じ壁にぶつかります。越境は、単なる社員の成長機会の提供ではなく、組織の中に“新しい風を取り込み、循環させる仕組み”をつくることでもあります。


本対談では、書籍『越境人材』をもとに、創業者の原田と、現・ローンディール代表の大川陽介が、「越境とは何か」から「越境人材を起点に組織が変わるプロセス」までを語り合いました。


そもそも越境とは何か

ーまずお二人にお聞きしたいのが、そもそも越境とは何かということ。わかりやすく説明いただけるとありがたいです!


原田:越境とは「ホームとアウェイを行き来すること」です。では、アウェイとは何かというと、自分が「未知だ」と思うこと、でしょうか。


大川:そうそう。やっぱり“未知との遭遇”ですよね。自分にとって慣れない場所や慣れない人たちと出会う、その時に感じる違和感や揺らぎこそが越境の本質なんだと思います。

つまり、自分のホーム=安心できる場所・思考・スキル・関係性から少し離れたときに感じる“居心地の悪さ”。その違和感の先に新しい気づきが生まれる。そこに越境の意味があるんじゃないかなと思います。

たとえば長く同じ組織にいると、部署異動があったとしても、前提の価値観や環境はあまり変わらない。社内だけだと未知の領域が減っていってしまうから、あえて外に出る必要があります。


原田:たとえば大学院に行くことを“越境”と表現する人もいますよね。でも石山先生(越境学習の第一人者)の話では、それは“形式知”を学ぶだけで、場としては構造化されているから、本当の未知ではないということでした。

学んだ先に「探究」や「正解のない問い」が生まれて初めて“未知”になる。つまり、ただ新しい知識を覚えるだけでは越境とは言えないんです。


ー単に“会社の外に出る”だけでは越境とはいえないと。


原田:そうですね。例えばPTAに参加したとして。自分の本職が雑誌のデザイナーで、PTAの会報誌のデザインを担当するなら、それ自体は“既知”の行為です。でも、対象としている読み手が違ったり、一緒に作るメンバーが異なる職種の人たちだったりすると、その関係性の中に未知があるわけです。


だから越境っていうのは、環境そのものよりも「自分がどこに未知を見いだすか」ということ。それに気づけるかどうかが大事ですね。

越境人材をどう選ぶか、熱をどう伝播させるか


ー書籍『越境人材』では、こうした未知なる経験をした人材が組織に増えることで、さまざまなイノベーションにつながると書かれていますが、組織としては、誰を越境させるのか、どれくらいの数の社員を越境させればいいのか、という議論になると思います。


大川:組織を変えたいと思ったとき、戦略的に「誰を越境させるか」を考えるのはとても大事ですよね。まずはキーマン。つまり自社を“ホーム”として強く意識し、愛着や課題意識を持っている人です。「この会社をもっと良くしたい」と思っている人ということ。

そういう人こそ、外で新しい知やWILL(意志)を磨く意味があります。これが一丁目一番地です。ただ、そういう人が一人や二人越境しても、組織は簡単に変わりません。大企業には“冷却装置”があるので。


ー冷却装置?


大川:「熱が自然と冷まされてしまう構造」のことです。大企業には、組織の安定を保つための仕組みがあり、熱量の高い個人が帰ってきても、その熱が周囲に伝わる前に冷めてしまうことがあるんです。だからこそ、熱が伝播していく仕組みを設計することが組織側の責任になります。


たとえば、フルタイムの出向だけでなく、ローテーション、副業、週1日の社外活動など、多様な形の越境を組み合わせてみる。外に興味を持ち、変化に素直に反応できる人たちを“面”で広げていくことが大切です。

「何人越境させればいいか」という正解は企業によって異なると思いますが、共通して言えるのは、「熱源」と「熱の伝わる仕組み」をセットで設計することが欠かせないということですね。



ーそもそも、「この会社をもっと良くしたい」という思いを持った人を見つけること自体が難しいと感じます。どうやって発掘すればいいのでしょうか。


大川:思いを持っている人は、意外と少なくありません。ただ、その人たちは部署ごとに点在していて、普段は目立たなかったりします。


だからこそ、まずは社内のあちこちで“くすぶっている人”を見える化することが大事。たとえば、声を上げやすい小さなプロジェクトを立ち上げたり、社内公募を行ったり、他部署との交流会を設けたりして、思いを持つ人が手を挙げられる仕掛けをつくる。

そうして見つけた人たちの中から越境人材を輩出して、外部から熱を注ぎ込んでもらい、中の熱と化学反応を起こしていく。そうした“熱のマネジメント”ができると、組織は本当に変わると思います。


ー実際、そのような事例はありますか。


大川:たとえば、書籍の中でも触れられていますが、ドコモの島さんはまさにそうですね。個人として「自社に価値を生み出したい」という強い思いを持って外に出て、実際に熱を体感し、それを社内に持ち帰りました。そして社内で同じように熱を持つ仲間を見つけ、オープンイノベーションを実現させました。

▶︎ 島さんの事例はこちら


大企業には、火がついたら一気に燃え上がる潜在的なエネルギーがあります。それを引き出すためには、起点となる人を見つけてつなげることが重要なんです。

外から熱を入れ、内で熱を生み続けることができる。この“循環”を続けられる人が、越境人材として理想的だと思います。


ー相応しい人材を発掘して、越境させればいいという話ではなく、戻って来たあとの組織の仕掛けや、協力者の存在も重要だと感じました。


原田:協力者でいうと、私の中では“3人”という数字が鍵だと思っています。1人だと点、2人だと線、3人になると面になる。つまり、影響を及ぼしたいエリアにおいて最低でも3人以上が関わること。これが変化の起点になると考えます。

先ほど大川さんが話していたドコモの島さんの事例でも、島さんの上司、そして部署の若手メンバーが仲間として関わってうまく“面”にしていった。これが機能したポイントだと思いますね。


また、こうした越境人材を一度に増やすというよりも、常に一定割合の“越境している人”が存在する状態を維持することが大切だと考えます。組織は常に変化していくものなので、越境も一過性ではなく循環的に行われる必要があります。たとえ今業績が好調でも、その時こそ次に備える越境を仕掛けておくべきではないでしょうか。


越境はキャンペーンではなく、組織の呼吸のようなもの。常に誰かが外を見て、新しい風を取り込んでいる。その“循環”を絶やさないことが、組織の成長を止めない鍵だと思います。


越境人材には“発酵期間”が必要 !?待てる組織になることも大事


ーーこれまでのお話から、越境人材を起点に、社内に熱を絶やさないことが大事だとわかりました。書籍『越境人材』では、こうした“行き来”の先に起こる現象として、「融合」の重要性が語られています。この「融合」こそが越境がもたらす重要な効果だと述べられていますが、「融合」とはどういうことなのでしょうか。


原田:そうですね。融合というのは、AとBが互いに影響し合い、それぞれが進化しながら、混ざり合うことで新しい価値が生まれるということです。たとえば、スタートアップのスピード感と大企業の経営資源。その異質な組み合わせがうまく機能すると、新しいものが生まれます。


大川:いわば“生ハムメロン”の関係ですね。


ー生ハムメロン!?


大川:はい(笑)。甘いメロンと塩気のある生ハムって、真逆の性質なのに、組み合わせるとすっごくおいしい! つまり、異なるものを組み合わせることで新しい価値が生まれる。越境も同じです。異なる質の熱をもつ人同士が出会い、ぶつかり、一緒になることが融合の鍵なんです。


原田:越境人材は生ハムメロン、ってキャッチーですね(笑)。

でもその融合って、結局は組織の中だけじゃなくて、個人の中にも起こる気がしますね。越境の目的は「外の熱を持ち帰ること」ではなく、「自分の内側に変化を起こすこと」にあると思うんです。


外で経験したことをいきなり会社に適用しようとすると反発が起きる。なのでまずは自分が変わる。自分自身が関わり方や仕事の見方を変える。その変化がじわじわと周囲に波及していく。そういう“内側からの伝播”が、一番自然で強いと思います。


ー自分の中で一度「発酵」させてから外に出す、という感覚でしょうか。


原田:まさに。越境経験者は、外で得た新しい視点を“内に取り込む”ことに時間をかけていいと思っています。すぐに成果を出さなくてもいい。焦って「越境の成果」を求める組織ほど、実は変化を遠ざけてしまう。


大川:発酵には時間が必要なんです。生ハムもメロンも熟成してから組み合わせないとね。


ー外の学びや経験が本人の中で熟成して、やがて自然に周囲に滲み出していく。そういう時間の流れを、組織も受け入れる必要がありますね。


大川:多くの企業では「越境した人=変化を持ち帰る人」と期待しがちです。でも、すぐに変わるのは難しい。原田さんが言うように、越境を通じて本人の内側が変わることがまずは重要です。それが熟して、組織に新しい風が吹くようになる。だからこそ、結果を急がず、待てる文化を持つことが大事かもしれません。



越境を支えるのは制度ではなく“風通しの良さ”個人が変わり、組織が変わる


ー「越境の成功」には、個人だけでなく、組織の理解や制度設計も不可欠だと分かりました。特に人事部門はどんな役割を果たすと良いのでしょうか。


大川:人事の役割は、越境の“交通整理”ではなく、“風通しをよくすること”だと思います。つまり、「送り出す」「受け入れる」といった管理業務ではなく、越境が自然に起こるような空気や環境を整えること。


たとえば、上司が部下の社外活動を応援しやすい雰囲気をつくるとか、越境した人が戻ってきたときに“異物扱いされない”文化を育てるとか。制度よりも「心理的安全性」をいかに担保できるかが重要だと思います。


原田:結局、越境って「関係性の再構築」なんですよ。どんなに役職があっても、社外に出た瞬間に一個人に戻る。だから、上下関係ではなく“信頼関係”が問われる。人事がやるべきことは、そうした“信頼の土台”を組織の中に根づかせることだと思います。


ーそうした“信頼の土台”があるからこそ、人が育つ環境が生まれるわけですね。では最後に、越境を持続させるための仕組みについて伺いたいと思います。せっかく外に出て火がついた人が戻ったら冷めてしまう。あるいは、外の学びをどう活かしていいかわからない。そうした課題をどうすれば乗り越えられるのでしょうか。


大川: まず大事なのは「帰還後の対話」です。 外に出た人の多くは、戻った瞬間に孤独を感じるんですよ。”組織の“温度”と自分の“温度”が違う。だからこそ、同じように越境を経験した人たちと話す場をつくる。お互いに経験を共有することで、熱を保てるし、言葉として整理されていく。


それと同時に、「戻る場所の理解者」を増やしておくことも大切です。上司や人事、同僚の中に“通訳者”がいれば、越境した人が孤立せずに済む。つまり、本人だけでなく、組織側にも受け皿が必要なんです。この受け皿づくりが、越境を持続させるうえでの鍵だと思います。


原田:私は、“熱を持ち帰る”というより、“熱の使い方を変える”という感覚に近いと思っています。越境で得た気づきや視点は、必ずしもすぐ社内改革に使う必要はない。


たとえば、会議での発言の仕方や、後輩への声のかけ方など、日常の小さな行動の中で活かせばいい。そうした小さな変化が積み重なることで、確実に組織は変わっていくと思います。


ー 越境の成果を「行動の質」で見ていくということですね。


原田:そうです。そして、それを本人が「自分のキャリアの一部として再定義できるか」どうかが大きい。越境経験って“社外での特別な体験”で終わりがちですが、本当は、自分の軸や価値観を見つめ直す機会でもあるんです。

「自分は何に心が動くのか」「どんなときに人の役に立てると感じるのか」。そうした感情の履歴を言語化していくことで、次の一歩が見えてくる。これはまさにキャリアオーナーシップの核心だと思います。


大川: 結局、越境って「自分を変えること」なんです。自分が変われば、見える景色も変わる。その結果として、周囲も少しずつ変わっていく。


ー 越境というと「外へ出ること」ばかりが強調されがちですが、実際には“自分の内側と向き合う旅”でもあるということですね。


大川:はい。そして、そういう旅を続けていける人が、これからの時代に必要なんだと思います。組織のためだけに働くのでもなく、個人のためだけに動くのでもない。“社会”という大きな文脈の中で、自分の存在をどう活かすかを考える。そういう人たちが増えると、会社も社会ももっと面白くなるはずです。


原田: 越境とは、結局「人間らしさの回復」なんですよね。自分が本当にやりたいこと、心が動く瞬間、人とつながる喜び。そういうものを思い出す。その積み重ねが、自分らしいキャリアをつくっていく。越境は、そのための入口なんです。



ー「越境=未知なる経験」だけではなく「自分の内側をひらくこと」も同時に大切なものである。そしてそれが最終的に組織や社会を変えていく。新旧代表の話から、越境の可能性と希望を感じていただけたら幸いです。


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参考:株式会社ローンディールについて

「越境」をコンセプトに、人材育成・イノベーション創出・キャリア自律等、企業の人事・組織課題に応じた複数の事業を展開しています。 創業事業である「レンタル移籍」は2015年9月にサービスを開始し、2025年11月現在、導入企業は日産自動車・経済産業省・野村證券など大企業82社、387名となっています。


オープンイノベーションの仕掛けとしても注目され、2019年に内閣府が主催する第一回日本オープンイノベーション大賞において「選考委員会特別賞」を受賞しています。その他、2020年「グッドデザイン賞 ビジネスモデル部門」、2024年「キャリアオーナーシップ経営AWARD2024」人事/HRの変革部門(中堅・中小企業の部)最優秀賞など、多数の受賞歴があります。


 大企業の人材を半年〜1年間ベンチャー企業の事業に参画させ育成する、次世代リーダー向けプログラム

 オンラインでベンチャー企業の経営者と議論を交わす他流試合プログラム

 20%・3ヶ月ベンチャー企業のプロジェクトに参加する社外兼務型研修プログラム

 「WILL発掘ワークショップ」「CAN抽出ワークショップ」などを通じて、自律型人材を育て組織を活性化する研修を提供






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