SynapSpark株式会社

独自の立ち位置からスマビル市場に灯をともす、大きな一歩の原動力となるSynapSparkの挑戦

2025年12月09日


AI技術を活用した「Autonomous Building(自律型ビル)」の社会実装を通して、建物や都市の持続的な価値を創造する──。SynapSparkは、スマートビルの構築支援を目的とし、2023年12月、日建設計とソフトバンクの合弁企業として誕生した。スマートビル市場が「スマビル元年」を迎えたと言われる今、同社はどのように事業に取り組んでいるのか。代表取締役社長 兼CEOの沼田 周氏に、これまでの歩みと、これからの展望を聞いた。


■2025年は「スマビル元年」。本格的に動き出した市場


──SynapSparkを立ち上げて約2年が経ちました。振り返っていかがですか。


振り返ると、2年前と比べてスマートビル市場全体の“温度感”が大きく変化しています。1つの象徴が、2025年4月に設立された一般社団法人スマートビルディング共創機構です。設計会社、デベロッパー、ゼネコン、設備メーカー、IT企業など、スマートビルに関わる多様なプレイヤーがこの機構の取り組みに参画し、技術の標準化やデータ利活用などについての議論を開始しています。「スマートビル業界が本気で動き出した」と多くの人が2025年を「スマビル元年」と表現しています。


──改めてお聞きします。SynapSparkは、スマートビルを取り巻くどのような課題と対峙しているのでしょうか。


スマートビルは、多くの人の生活や仕事によい影響を与えることができます。例えば、私たちが入居しているビルは、顔認証だけで入退館できるようになっています。社員証を持ち歩く必要がないのは、小さなことかもしれませんが、慣れると、もう元には戻れないほど便利です。ほかにもセンサーで人の居場所や流れを検知し、照明や空調を自動制御すれば快適と省エネを両立できるなど、スマートビルは様々なことを実現できます。

カメラやセンサー、ネットワーク、クラウド、AIなど、スマートビルを実現するために必要な技術は、十分にそろっていますが、大きく二つの障壁が実装を阻んでいます。1つ目は、ビルの運用ルールがアップデートされていないことです。象徴的な例を挙げると、火災時の対応ルールがあります。多くのビルでは、火災に関する連絡を受けたら、警備員が現場に行き、目視で火の手を確認してから通報するようルールが定められています。しかし、監視カメラを使えば、すぐに確認ができ、通報を行えるはずです。これは技術ではなくルールと運用の問題。技術が進化しても、ルールが追いつかなければ、その技術は生かせません。


2つ目は、ビル設備同士が簡単にはつながらないことです。エレベーターや空調、照明などを提供する設備メーカーは、それぞれ独自の通信仕様を持っています。そのため、先ほどのセンサーと照明や空調の例のように設備同士を連動させるには、そのつど通信仕様の異なる設備同士をつなぐための作業を行わなければなりません。毎回、カスタム工事ですから費用も高額。このコストの大きさは、スマートビル市場の拡大を阻む原因の1つとなっています。

■ビジョンの共有と技術基盤の両輪で障壁に挑む


──SynapSparkおよび沼田社長は、どのようなアプローチで障壁の克服に取り組んでいますか。


新しいルールを作ったり、既存のやり方を見直したりしながら前進するには、大きなビジョンを共有することが重要です。まず賛同を得て、仲間を増やし、気運を高めたいと考えています。多くの企業の経営層に直接コンタクトを取り、「スマートビルは、建物の価値や働く人の体験、日本の社会課題に直結するテーマとなる」と対話を重ねています。


また、設備の通信仕様の違いを克服した独自のビルOS「synapsmart」を、2026年3月から提供開始する予定です。「synapsmart」のサービス名は、SynapSparkという社名の「SynapS」、すなわち「Synapse(つながり)」から来ています。その名前のとおり、ビル内のあらゆる設備とデータや環境データなどをつなぐことができるビルOSソリューションです。


具体的には「synapsmart」を利用すれば、設備の通信仕様の違いを気にすることなく、設備と設備を自由につなぎ、データを一元的に管理し、可視化することでビル管理業務を最適化できます。新築ビル、既存ビルのいずれにも導入可能です。将来的には、AIによる自動制御や外部システム・アプリケーションとの連携により機能を拡充していく予定です。


スマートフォンを想像してみてください。標準化されたプラットフォームであるスマートフォン上で、様々な企業が自由にアプリを開発・提供しています。ビルOSにおいても同様に「synapsmart」を基盤として、多様な企業が人手不足や働き方の多様化、脱炭素化などの課題解決につながるサービスを創出し、活気と創造性に満ちたサービス展開が実現することを期待しています。


■協業の限界を感じて合弁会社を設立


──機運を高める旗振り役を買って出て、プラットフォームとなるビルOSを提供する。これらをSynapSparkが行う意義を、どのように考えていますか。


スマートビル市場には、さまざまなプレイヤーがいます。それらの中には利害が重なる企業同士も存在しますが、私たちの立ち位置は、どの企業とも重複しません。ですから、どの企業ともフラットに対話することができる。ビジョンを共有し、データをつなぐビルOSを提供する上で、この中立的な立ち位置は大きな強みになります。


日建設計とソフトバンクの合弁会社であることも強みです。日建設計は、言うまでもなく日本を代表する建設会社。その“すごみ”は、一朝一夕に築き上げられるものではありません。

また、ソフトバンクの通信キャリアとしての技術力やノウハウを生かせる立ち位置も、大きなアドバンテージです。スマートビルは、直近ではビル内の設備同士をつなぐことが中心となりますが、いずれはビルとビル、ビルと都市インフラをつなぐようになると私は考えています。

例えば、人口の減少に伴い地方都市では、既存の都市インフラの維持が難しくなるという指摘があります。新しい都市インフラのモデルが求められる中で、複数ビルの設備を一体的に運用するモデルが考案される可能性も十分にあります。その際、カギを握るのは、ほかならぬネットワークです。ネットワークの適切な設計、構築、運用を行う上で、ソフトバンクの技術力やノウハウは大いに力を発揮します。


実は合弁会社を設立する以前から日建設計とソフトバンクは、協業という形でプロジェクトに取り組んできました。しかし、協業という枠組みの中では共有することが難しいコアな技術やノウハウまで出し切らなければ、超えられない課題がたくさんあることに気付き、「同じ船に乗るべき」と合弁会社の設立に踏み切りました。


SynapSparkほど、1つの企業内に建設とITの専門家を擁している企業はないと自負しています。スマートビルディング共創機構の議論の中に、建築や設備、そしてクラウドやネットワーク、アプリケーションのことを横断的に理解し、最適な組み合わせや活用法を提案できる「MSI(Master System Integrator)」という新しい人材に関するものがありますが、その育成においてもSynapSparkは中核的な育成拠点になることができます。

■「好き」を原動力に変えるための組織改革


──最後に、これからの意気込みをお聞かせください。


今、スマートビル市場は、大きな一歩を踏み出す段階です。その一歩を踏み出すために、とてつもない大きなエネルギーを必要としています。先ほどSynapSparkの「SynapS」の由来の話をしましたが、もう一方の「Spark」には火花や光、転じて「活気」「情熱」といった意味があります。つまり、私たちは社名にスマートビル市場を動かす原動力になりたいという思いを込めています。


そのために組織や制度も見直したいと考えています。大きな一歩の原動力となるのは何か──。そう考えて「好き」「楽しい」という気持ちや姿勢に勝るものはないという結論に行き着きました。そこで、この仕事にやりがいを持っている社員一人一人がワクワクしながら意見をぶつけ合えるオープンでフラットな社風を醸成すべく、社内の制度や評価の仕組み、役割の定義などを変えていきます。


私たちが原動力となり、スマートビル市場に灯した明かりが、ビルからビル、都市へと広がり、人々の仕事や暮らしをより快適かつ安全に変えていく――。そんな未来を実現するためにSynapSparkは挑戦を続けていきます。







行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

記事一覧に戻る