グンゼ株式会社

グンゼが取り組む「自然との共生」に向けた活動

2025年12月10日

2025年5月、グンゼ株式会社は中期経営計画「VISION 2030 stage2」を公表しました。本計画では、「社会的価値」と「経済的価値」の両立を図るサステナブル経営を推進し、持続可能な事業基盤の構築を通じて、グローバルに選ばれ続ける企業を目指すことを掲げています。

さらに、事業の持続性を高めるため、環境に配慮した経営の実現を宣言。自然資本を経済活動の基盤と位置づけ、その価値を認識・評価することで、自然との共生を通じた持続可能な社会の実現を目指しています。今回は、グンゼが取り組む「自然との共生」に向けた活動をご紹介します。


■グンゼ創業の精神と京都モデルフォレスト運動への参画

グンゼ株式会社の創業の精神は、創業者・波多野鶴吉が掲げた「人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる」という理念に根ざしています。1896年、京都府何鹿郡(現、綾部市)で、地場産業(養蚕業)の振興を図り、関係者の共存共栄を図るため、郡是製糸株式会社(現、グンゼ株式会社)が誕生しました。創業当初から、単に企業の利益を追求するのではなく、地域社会の発展と人々の幸福を目的とする「共生の精神」が事業の根幹に据えられてきました。

 こうした創業理念を現代に受け継ぐ取り組みの一つが、京都モデルフォレスト運動への参画です。グンゼは2010年よりこの運動に参加し、京都府綾部市で里山の保全活動や植林、間伐などを行っています。モデルフォレスト運動は、森林の持続可能な管理と地域社会の発展を両立させることを目指した世界的な取り組みです。グンゼは創業の地である綾部の自然環境を次世代に残すべく、行政・企業・地域住民等と協働して持続可能な森林管理に積極的に取り組んでいます。また、社内外のボランティアとともに環境教育の場を設け、森づくりの大切さを広く発信しています。

 創業から129年を経た今も、グンゼは「人と自然の共生」を企業活動の中心に据えています。創業の精神を原点に、地域社会とともに歩み、未来へ豊かな環境を引き継ぐ姿勢こそが、グンゼのサステナブル経営の礎となっています。

京都モデルフォレスト運動での活動


【コラム】京都モデルフォレスト運動への参画

京都モデルフォレスト運動は、森林の保全と持続的な利用を目的に、2005年に京都府が全国に先駆けて始めた協働型の森林づくり活動です。運営の中核を担うのは翌年設立された「京都モデルフォレスト協会」で、府内各地の活動団体を支援し、企業との協定締結や活動の調整を行っています。

グンゼは2010年に協会と「森林の利用保全に関する協定」を締結し、創業の地である綾部市内で里山保全のボランティア活動を継続的に行っています。これまでに、54回の活動を実施し、延べ1,082人の従業員ならびにその家族が活動に参加しました。植林や間伐、環境学習の実施などこの綾部での様々な活動は、行政だけでなく、企業、地域住民、NPO、学校など多様な主体がパートナーシップを結び運営を進めている好事例となっています。もちろん二酸化炭素吸収による気候変動対策に加え、地域資源の循環利用や生物多様性の保全にも貢献することも目指しています。京都モデルフォレスト運動を通じ、力を合わせて森を守り育て、人と森との新しい共生関係を築き、それを持続させるようにこれからも取り組んでまいります。

モデルフォレスト運動事務局 広報IR室 熊谷さん


■御堂筋のイチョウ並木を守る、グンゼグリーンのイチョウ調達

2018年9月、台風21号により御堂筋のイチョウ並木が甚大な被害を受けました。この出来事は、近代大阪を象徴する歴史的景観を未来へ守り継ぐことの大切さを、改めて人々に気づかせる契機となりました。

長年にわたりグリーンビジネスを展開してきたグンゼは、この課題に対し、自社の技術と経験を活かした支援策を検討しました。災害時に肌着や靴下を提供して被災地を支援してきた私たちは、「イチョウの保全でも社会に貢献できるのではないか」と考えました。

その思いを形にするべく、2019年12月10日、大阪市と「御堂筋におけるイチョウの供給等に関する協定書」を締結し、これにより、御堂筋イチョウ並木の継続的な保全を、無償で支援する仕組みが確立されました。そして、大阪市の要請に基づき2022年から無償提供をスタートし、これまでに合計58本のイチョウを提供してきました。

イチョウの生産は年々減少しており、優良な樹木の安定確保は容易ではありません。グンゼは将来を見据え、早期から良質な樹木の確保に努めています。過去の災害支援で培った迅速な対応力と、長年のグリーンビジネスで培った知見を活かし、御堂筋の美しい景観を未来へつなぐ一翼を担っていく所存です。

すくすく育つ御堂筋のイチョウ

圃場にて出荷を待つイチョウ


【コラム】御堂筋のイチョウ並木を支える、確かな調達力と丁寧な選定

大阪を象徴する御堂筋のイチョウ並木。その景観を支えているのが、私たちの確かな樹木調達力です。生育が良好で病害虫のないことを前提に、並木としての統一感や樹形の美しさを重視しています。御堂筋では、空に向かって真っすぐに成長する「直幹(ちょっかん)」の樹形が求められるため、全国各地の生産地から候補樹を厳選しています。特に、土壌など優れた生育条件に恵まれた栃木・茨城の生産者とは長年にわたり信頼関係を築いており、後継者不足などで生産量が減少する中でも、安定的な供給を実現しています。また、担当者が現地に赴き、自らの目で一本一本を確認し選定することも、私たちの大切なこだわりです。こうした丁寧な工程が、街並みに調和した美しい並木景観を支えています。

植栽は、イチョウが休眠状態となる冬季(12〜3月)に実施します。根鉢の大きさを調整し、輸送や移植時の負担を抑えるなど、樹木への細やかな配慮も欠かしません。さらには、全国に広がるネットワークを活かし、樹種ごとに最適な地域から仕入れる体制を構築しています。落葉樹は関東、常緑樹は九州といった地域特性を踏まえた調達により、これからも都市の景観づくりに貢献してまいります。

グンゼグリーン関西営業所 油家さん


■大阪・関西万博「静けさの森」、命のリレーを支えた植栽ポット

大阪・関西万博の「静けさの森」は、いのちの尊さと自然との共生を象徴するパビリオンエリアとして設置されました。この森には、1970年大阪万博の会場となった万博記念公園(吹田市)を中心に間伐が予定されていたモチノキなどの樹木が移植されました。そのため、万博「命のリレー」として、各種メディアにて取り上げられました。それを裏方で支えたのが、グンゼが開発した植栽ポット「JMASTER:ジェーマスター」です。この製品は、移植による根傷みを防ぎ、初根促進を図るため不織布に特殊加工を施したものです。繊維メーカーとして培ってきた環境配慮型素材や加工技術が活かされています。

植栽ポットには、再生プラスチックやバイオマス素材を活用し、使用後も再利用や再資源化が可能な仕組みを採用。さらに、通気性や保水性に優れた構造により、樹木が健康的に成長する環境を整えています。これにより、万博終了後もポットごと移植できる設計となっており、「会期が終わっても終わらない森」として、次世代へと命をつなぐ循環型のデザインが実現しました。

この取り組みは、グンゼが創業以来掲げてきた「人と自然の共生」という理念を現代的に具現化するものです。単なる展示物ではなく、素材・構造・循環のすべてにおいてサステナブルな発想を込めた植栽ポットは、万博の理念を象徴する存在として、静けさの森に息づく「いのちのバトン」を静かに支えています。

植栽ポットJMASTERを使い、万博記念公園からモチノキを移植する様子

大阪・関西万博「静けさの森」


【コラム】植栽ポット「JMASTER」の開発について

1991年に発売された「JMASTER」は、果樹大苗の移植で課題となる“根傷み”を抑えるため、不織布に独自加工を施し、根巻きを軽減する植栽ポットとして誕生しました。果樹園の老園化が進み、品質・収量の低下が懸念されていた当時、早期成園化につながる新たな育苗手法への期待が高まっていました。そこで、繊維資材事業部の技術を応用し、園地とは別の場所で大苗を育て、成長した段階で移植できる育苗ポットを開発したのです。

ポットには、透水性による水やり作業の軽減、根を適度に締めてカルス形成を促す構造、毛羽立ちによる根巻き防止など、健全な根づくりを支える工夫が随所に施されています。さらに、自立性のある素材や掘り出しを容易にする遮根性の底部など、現場での作業性にもこだわりました。

その「JMASTER」が大阪・関西万博「静けさの森」の造成に採用されたことは、私たちにとって大きな誇りです。

繊維資材事業部津山工場製造課 高橋さん




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