株式会社Medi Blanca

看護師として、花屋として。子どもたちの“楽しい”を育む——とある兼業ナースの自分らしい働き方

2025年12月15日

「看護師か花屋か、どちらかを選ぶ必要はないと思ったんです。どちらも“人に寄り添う”という点では同じなんですよね。」


そう話すのは、主に医療的ケア児の家庭へのケアリングサービスを提供するソイナース(運営:株式会社Med i Blanca)に所属し、看護師と花屋の“ふたつの顔”をもつ清藤育子さん。小児科ナースとして8年間勤務した後、保育園勤務から花の道へ進み、現在は花屋「RAGGIO UN METRO」を運営しながら、ソイナースで“兼業ナース”としても活動しています。


なぜ彼女は今、花と看護という異なる世界を行き来しているのか?

そこには、子どもたちへの変わらぬ想いと、自分らしく働くための選択がありました。


子どもに寄り添う看護師としてのはじまり


ーー看護師を目指したきっかけを教えてください。


清藤さん:はっきりした“きっかけ”はないのですが、中学生の頃には自然と「看護師になりたい」と思っていました。小学生のときに風邪で短期入院した経験があって、その時に看護学生さんが実習で付いてくれたことが印象に残っています。退院のときには「看護学生さんと別れたくなくて、退院を延ばしてもらった」くらい(笑)。そのくらい、看護師さんが大好きでした。

小児科へ。「子どもはひとりの人間」という教えを胸に


ーー小児科を志望された理由は?


清藤さん:もともと子どもが好きで、迷わず小児科に進みました。「子どもはひとりの人間。大人の付き添いではない」というのを、小児看護学の一番はじめに学びます。この言葉は強く残っていて、以後の看護でも子ども本人を主体に捉える視点を大切にしてきました。


ーー印象に残っている出来事は?


清藤さん:小児がんの3歳の男の子を、入院から病棟でのお看取りまで約1年担当させてもらったことですね。当初は治癒を目指して治療に取り組みましたが、次第に治癒が難しい局面が見えてきて、その都度ご家族と医療者みんなで立ち止まり、どんな選択や目標が最善かを話し合う日々でした。


最後まで伴走した時間は、今の私を形づくるほど大きなものでした。一方で、燃え尽きた感覚も確かにあり、私は切り替えが上手ではないと痛感した出来事でもあります。それでも、自分ができる力のすべてを注いだという実感が、今も看護の土台になっています。

保育園へ。“遊ぶこと=生きること”を学んで

ーー保育園に転職されたきっかけを教えてください。


清藤さん: 看護師として病棟で8年ほど勤めたのちに、保育園に転職しました。そこでは医療的ケア児はいない園で、元気な子どもたちの生活に関わりました。友だちと関わるなかで泣いたり笑ったり、できなかったことが少しずつできるようになったり。一つひとつの瞬間に、子どもの“生きる力”を感じました。


病気で入院している子どもたちは、どうしてもおうちや友だちと過ごす時間が限られてしまいます。だからこそ、病院の中でもどうやったら“生活”を届けられるかを考えるようになりました。「遊び=生きること」だと強く感じましたね。子どもにとって“遊ぶ”ことは成長のエネルギー。嬉しい・楽しいを積み重ねていく時間が、その子の力を引き出していくのだと思います。

花屋というもう一つの選択——「初めて“やりたい”と思えたこと」


ーー花の仕事を始めたきっかけを教えてください。


清藤さん: 保育園で働いていた時に、保育士さんがつくったクリスマスリースが飾られていたんです。近所で拾った松ぼっくりや100円均一の材料を使い、気軽に手に入るもので作られてあったのですが、本当に可愛くて!見た瞬間、私も作りたい!と思いました。それをきっかけにどんどんお花にのめりこんで、夢中になって、夜な夜な作品を作ったり、ワークショップに通ったりしていました。


また、看護師になってちょうど10年が経ち、自分の中でひとつの区切りでもありました。「10年間よく頑張ったな」という満足感とともに、心の底からやりたいと思えたのが、花だったんです。それまでも看護は大切な仕事で、やりがいを感じながら続けてきましたが、それ以上にやりたいと思えたのが花の仕事でした。


「これは一度、振り切る必要がある」

そう思って、花の道に進みました。

「花を通して、子どもに楽しい時間を」RAGGIO UN METROの誕生


ーーお花屋さんを始める時、どんな想いがありましたか?


清藤さん: 花を学びながら、「花を通して子どもたちに楽しいことをしたい」と思うようになりました。子どもが笑顔になる瞬間をつくれる花屋があったらいいな、と。ワークショップで子どもたちと花を作ったり、病院でボランティアとして花を届けたりしてきました。


そして自分で持つことになったお店の名前は「ラッジョ・ウン・メトロ(RAGGIO UN METRO)」。イタリア語で“半径1メートル”という意味です。「自分の手の届くところを大切に、花で豊かにできたら」という想いを込めました。


ーー子どもたちの反応はどうでしたか?


清藤さん: ワークショップのあとに「毎日やりたい!」と言ってくれたり、「将来はお花屋さんになる!」って目を輝かせて話してくれる子もいました。家に帰って「自分で作ったんだよ」と毎日話してくれていると聞くと、“この選択はきっと間違ってなかった”って思えました。子どもたちは本当に自由で、発想も豊か。固定観念がなくて、こちらの方が学ばせてもらうことばかりです。

花と看護はつながっている。“心を看る”ということ


清藤さん:お店の運営や仕事に追われる日々のなかで、「本当はもっと直接、子どもたちと関わりたい」と感じることがありました。そんなとき、あるご家族から「亡くなったお子さんの一周忌の花をお願いしたい」とご依頼がありました。


ご家族がお子さんの写真をたくさん見せてくれて。私も関わったことがあるような気持ちになりながら、その子のイメージであるひまわりをたくさん使って、ひまわり畑の祭壇をつくらせていただきました。ご家族もとても喜んでくださり、花屋をしていてよかったと思えた瞬間でした。


また、看護と花は全然違うことだけれど、人の心に触れたり、元気や癒しにつながるような仕事であるという共通点を感じました。全然違うようでいて、本質的には同じようなことをしている。そのことに気付けて嬉しかったです。

もう一度、看護に戻ろう。ソイナースとの出会い

ーーソイナースを知ったきっかけを教えてください。


清藤さん: 花の仕事をしていくなかで、「もう一度、子どもやご家族と直接関わりたい」という気持ちが強くなっていきました。そんなとき、たまたまSNSでソイナースの広告を目にしたんです。何気なくクリックしてページを開いたら、「利用者さんの声を丁寧に聞いて、ニーズにきちんと応える」ということが分かりすごく心に残りました。


ーーどんな点に惹かれたのでしょうか?


清藤さん: 例えば「朝の忙しい時間にバス登校を手伝ってほしい」とか、「夕方の忙しい時間だけ訪問に来てほしい」といった声をちゃんと拾って、それに合わせて看護師が柔軟に動ける仕組みを作っているんです。利用者さんの“本当のニーズ”に寄り添いながら、同時に看護師自身の働き方も応援している。その仕組みづくりをされていることに感動しました。「これは新しい看護のかたちかもしれない」そう感じた瞬間、胸が熱くなったのを覚えています。


ーー入職のタイミングも、何か印象的だったと伺いました。


清藤さん: はい。ソイナースの面接を受けてからInstagramを見たら、以前一周忌のお花を担当させていただいたお子さんの写真が載っていて。たまたまソイナースの利用者さんだったんですね。とても驚きましたし、そんなご縁があるんだなと胸がじんわり温かくなりました。

子どもと向き合う時間——“通じる瞬間”がいちばんのやりがい


ーーソイナースでの仕事について教えてください。


清藤さん: 学校看護や訪問看護を担当しています。医療ケアが必要な子どもが、安全に楽しく学校生活を送れるようサポートしたり、夕方訪問して、入浴や注入のサポートをしています。

└左から、花屋メインの1日とソイナースメインの1日例


ーー実際に訪問をはじめてみて、どんな印象を持ちましたか?


清藤さん: ご自宅に訪問することや学校看護に携わること全てが初めてなので、まだ緊張もしますが、病棟で働いていた頃とはまったく違う時間の流れを感じます。一人の子どもにこんなにもじっくり関わることができることに充実感を感じています。


ーー印象に残っているエピソードはありますか?


清藤さん: 吸引のケアをしていたとき、お母さんから「この子、吸引があまり好きじゃないんです」と聞いていました。だからその子と目を合わせながら慎重に吸引したら、満足そうな顔をしてくれた気がして。その瞬間「あ、いま通じ合えたかも」と思いました。言葉がなくても、その子なりの気持ちの表現に気づくことが、良い看護にもつながってくるのかなと思います。


花も看護も、“誰かの暮らしに寄り添う”という意味では同じだと思っています。スクラブを着て子どもの体を支える時間も、花束を束ねて想いを包む時間も、どちらも私にとって「人に触れる」仕事。その本質が、今またソイナースでの看護にしっかりとつながっている気がします。

“辞めるか続けるか”ではなく、自分らしい形で続ける


ーー最後に、“兼業ナース”としての想いを教えてください。


清藤さん: 私にとってはどちらも大事で必要で、このふたつを一緒にしていくことが、今の私にとってはバランスの良い生き方だと思っています。


看護師は「辞めるか続けるか」で考えられがちですけど、ソイナースは多くの子どもに関わりたい看護師にとっても選択肢を広げてくれているのではないかと思います。


私の働き方は特別なことをしているわけじゃなくて、誰にでも“自分に合う形”があると思うんです。今の私にはこの形が合っていますが、今後は変わる可能性もあるし、色々な変化に合わせて無理なく楽しく生きれる自分でいたいです。そして、自分のペースで、フィットする生き方を模索し続けるということが大切なのかなと思っています。




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