株式会社 赤福

駅から始まる伊勢の物語。赤福 五十鈴茶屋「おかげ犬」看板リニューアルの裏側

2025年12月16日



三重県伊勢市に本店を構える和洋菓子店「五十鈴茶屋(いすずちゃや)」は、今年で創業40周年を迎えました。

この節目に、伊勢へ向かう玄関口となる近鉄名古屋駅ホームの看板をリニューアルし、スマートフォンからはおかげ犬の物語が続いていく短いアニメーションもお楽しみいただけるようにしました。


新しい看板とアニメーションの主役は、長年パッケージで親しまれてきた「おかげ犬」です。静止画だったおかげ犬に動きと声を与えるアニメーションづくりは、伝統を守りながらデジタル表現を取り入れる、私たちにとって手探りの挑戦でした。

なかでも議論を重ねたのが、アニメーションの「声」です。当初依頼していたプロのナレーターによる収録をあえて取りやめ、子どもの声を起用することで、物語の素朴さや温かさをより大切にしました。


本ストーリーでは、そうした決断に至るまでの経緯と、「おかげ犬」というキャラクターに温かみのある命が宿るまでの制作の裏側をお伝えします。


1.看板リニューアルの背景


近鉄名古屋駅のホーム。

通勤・通学客、伊勢志摩へ向かう旅行客が行き交うその一角に、新しく「五十鈴茶屋 おかげ犬」の看板が姿を現しました。


近鉄特急「しまかぜ」に乗り込もうとするおかげ犬。

その向こうには、伊勢へと続く風景が広がっています。


名古屋から伊勢へ向かう旅の入口で、

「伊勢ってどんなところだろう」「今度行ってみようかな」

そんな小さな気持ちの芽を、そっと灯すような看板にできないか――。


今回の企画は、そんな思いから始まりました。


2.五十鈴茶屋40周年と、これまでの看板の課題


五十鈴茶屋は、伊勢で生まれて40年を迎えました。


これまで名古屋駅に掲出していたのは、おなじみの「赤福」のロゴを配した、人の背丈ほどの大きな看板です。

赤福の存在をお伝えするという意味では、長くその役割を果たしてきました。



一方で、五十鈴茶屋というブランドに関しては、これまで単独で掲出する看板はなく、せっかくの「おかげ犬」というほのぼのしたキャラクターの魅力や、五十鈴茶屋ならではの世界観をお伝えする機会は、決して多くはありませんでした。


五十鈴茶屋が40周年を迎えるこのタイミングで、名古屋駅という“伊勢への入口”となる場所に、五十鈴茶屋としての顔をきちんと持たせたい。

そこで、看板そのものを見直すプロジェクトが動き出しました。

3.“ロサンゼルスの大谷翔平看板”から始まった、アイデアの旅


企画の初期段階で話題にのぼったのが、ロサンゼルスにある大谷翔平選手の巨大な壁画看板でした。

スマートフォンをかざすと映像が立ち上がる、最新の技術を使ったダイナミックな表現です。


「もし、こんな看板が名古屋駅にもあったら――。」


そんな“夢のような”話をしながらも、実際には、費用面でも、駅ホームという場所の特性から見ても、同じことができるわけではない、ということはみんな分かっていました。


ただ、「できないね」で終わらせるのではなく、なぜロサンゼルスの看板と同じことができないのか、名古屋駅という場所では何が適切なのかを、クリエイティブを担当する「株式会社1コマ」の北川さんがひとつひとつ丁寧に調べてくれました。


・人が行き交うホームで、どこまでスマートフォン操作を前提にできるのか

・長期間掲出する常設の看板として、現実的な費用はどの程度なのか

・伊勢や赤福・五十鈴茶屋の背景を考えたとき、どこまでの演出がふさわしいのか


そうした条件をひとつずつ洗い出しながら、「最新の技術に背伸びをする」のではなく、

「いまの五十鈴茶屋に合う表現は何か」を一緒になって模索していきました。


そこで見えてきたのが、

・看板そのものは、絵としてきちんと完結させる

・興味を持った方には、QRコードから短いアニメーションに誘う


という、現在のかたちに近い方向性でした。


大谷翔平選手の看板は、「自分たちの立ち位置を確かめるための物差し」のような存在でした。


4.おかげ犬 × しまかぜ × 伊勢の描写


新しい看板で中心となるのは、五十鈴茶屋のキャラクター「おかげ犬」です。

伊勢参りの道中で人々に助けられながら旅をした、代参犬の逸話に着想を得た存在です。


そのおかげ犬が、近鉄特急「しまかぜ」に乗り込み、名古屋から伊勢へ向かっていく。

背景には、旅の終点である伊勢神宮やおかげ横丁、五十鈴茶屋の店先など、伊勢の四季を思わせる景色がポップなタッチで描かれています。


写真ではなくイラスト表現にしたのは、

「どなたが見ても受け取りやすく、温かみのある世界観にしたい」

という理由からです。


赤福が長い時間をかけて守り続けてきたものを土台に、五十鈴茶屋として今の時代に合った旅のイメージをそっと添える。

そのバランスを探りながら、構図や色合いを決めていきました。


5. 1コマ・北川氏との制作裏側


看板とアニメーションの制作を担ったのは、三重県のクリエイティブ会社「株式会社1コマ」の北川さんです。


三重出身で、伊勢の風景や赤福・五十鈴茶屋の歴史にも日頃から関心を寄せてくださっていたこともあり、企画の意図や、伊勢の文化的な背景を丁寧に共有しながら進めることができました。


おかげ犬の表情ひとつ、「しまかぜ」の描き方ひとつを取っても、単に“かわいい”だけでは終わらせない。

伊勢の空気をまとった、やさしい世界観になるように、何度もスケッチを重ねてくださいました。


もともとはお菓子のパッケージの中で親しまれてきたおかげ犬に、動きや息づかいを与え、看板やアニメーションの中で「生きている存在」として描きなおす作業でもありました。


地元のクリエイターの方と一緒に、地域の文化をどのように未来へ手渡していくかを

あらためて見つめ直す機会にもなりました。


6.ナレーション誕生秘話


アニメーション制作の終盤、意外に時間をかけることになったのが「ナレーションの声」でした。


当初はプロのナレーターを想定して収録を行いましたが、実際に映像と合わせてみると、どうしても“演じている感じ”が前に出てしまい、おかげ犬の世界観と少しだけ距離を感じる仕上がりになりました。


そこで、ナレーションそのものを見直すことにしました。


試行錯誤の末、たどり着いたのは、北川さんのお子さんによる、素直であどけない声でした。

飾らないその響きが、おかげ犬の温かい物語に自然に馴染み、伊勢へ向かう旅の情景に、やわらかな奥行きを添えてくれました。


7.「赤太郎」以来のキャラクター開発


今回のおかげ犬の表現づくりは、社内でも久しぶりに本格的なキャラクター開発となりました。

昭和30年代後半に誕生した「赤太郎」以来ともいわれています。

東海・関西では、一定の年齢層以上の方にとっておなじみの存在で、赤太郎はすでにしっかりとキャラクターが確立された存在です。



それに対しておかげ犬は、見る人の感情にそっと寄り添うような表情を見せるキャラクターではないか――。

今回のプロジェクトでは、そんな可能性に改めて目を向けながら、看板やアニメーションの中での見せ方を、一つひとつ丁寧に検討していきました。


名古屋駅の看板を通して、 おかげ犬がいつか皆さまの心のどこかに、 ふと残る存在になればと願っています。

8.著作権・クリエイターの権利という現代的課題


キャラクターを軸にした表現を深めていくなかで、あらためて向き合うことになったのが、著作権やクリエイターの権利に関する考え方です。


どこまでを社内の資産として整理し、どこからをクリエイターの創作として尊重するのか。

長く続く企業であるからこそ、一度立ち止まって見直さなければならないテーマでもあります。


今回のプロジェクトを通じて、契約や権利の扱いだけでなく、「一緒にものづくりをする相手を、どう大切にしていくか」という姿勢そのものを問い直すきっかけにもなりました。


伊勢の文化を受け継ぐ存在として、これからの時代にふさわしいクリエイティブとの向き合い方を模索していきます。

9.赤福広報部が単独部署として歩み始めた一年


この看板の企画が動き始めたのは、赤福の広報部が単独の部署としてスタートしてから、まだ一年も経たない頃のことでした。



赤福広報がいちばん大切にしているのは、赤福と五十鈴茶屋それぞれが育んできた物語と、その奥行きのある個性を、商品はもちろん、SNSやウェブニュース、広告など

さまざまな接点を通して、お客様の日々の暮らしの中に自然にお届けしていくことです。


名古屋駅の看板は、そうした考え方を、駅という公共空間でかたちにした取り組みのひとつでした。


駅媒体の調整にあたっては、近鉄グループの広告会社アド近鉄様にご協力をいただきました。

また、看板およびアニメーションの内容については、近畿日本鉄道様、神宮司庁様にも監修のご協力をいただきました。

10.名古屋駅から始まる、五十鈴茶屋の“温かい旅”


新しい看板が掲出されてから、名古屋駅のホームの一角には、少しだけ違った時間が流れはじめました。


電車を待つあいだ、ふと視線を向けると、おかげ犬がしまかぜに乗り込み、伊勢へ向かって歩き出そうとしている。


QRコードを読み取れば、その続きの物語が短いアニメーションとして立ち上がります。


さらに、看板の前でのひとときを楽しんでいただくために、 Instagram では「#おかげ犬とおかげ参り」を合言葉にした投稿企画もご用意しました。

五十鈴茶屋公式アカウントをフォローのうえ、看板前で撮影した写真に、

ハッシュタグ「#おかげ犬とおかげ参り」を添えて投稿していただくと、 おかげ犬の公式アカウントから、ささやかなお礼のメッセージが届きます。

名古屋駅ホームでの出会いが、伊勢や五十鈴茶屋へとつながる、 静かで温かい“おかげ参り”の輪になればと願っています。


「いつか伊勢に行ってみたい」

「前に行ったことがあるから、また行きたい」


そんな気持ちが、ゆっくりと育っていく小さなきっかけになればうれしく思います。


11.まとめ


五十鈴茶屋40周年の年に生まれたこの看板が、名古屋と伊勢をそっと結ぶ小さな目印になれば幸いです。




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