玉川学園
北海道・森町で「子どもたちと大学生が木育で交流」、地元の協力により地域創生活動を継続的に展開する玉川大学リベラルアーツ学部
2025年12月16日
<森町プロジェクトの代表メンバー>
本来の学びの場である大学のキャンパスを離れて学びを得る「オフキャンパス・スタディーズ」の一環として、玉川大学(東京都町田市)が2008年から、新型コロナウイルス禍の2020年を除いて毎年実施している北海道・道南での「北海道プロジェクト」。プロジェクト開始当初は函館市で行われていましたが、2017年度からは毎年函館市街から北方に約45㌔の位置にある茅部郡森町<https://www.town.hokkaido-mori.lg.jp/index.html>で実施されています。人気の駅弁「いかめし」でも有名な森町の教育委員会や公民館の協力を得て、今年度も8月23、24の両日、「玉川大学×森町 交流プロジェクト2025」が実施され、玉川大学リベラルアーツ学部および文学部の学生19人が参加し、現地での子どもたちとの交流を楽しみながら地域創生活動を実施しました。
<プロジェクトのチラシ>
今年度の「玉川大学×森町 交流プロジェクト2025」に参加したリベラルアーツ学部の菅原みゆさん(4年)、平岩詩織さん(3年)、高仲恕太郎さん(同)、そして引率した教員を代表して髙木大祐講師。さらに受け入れ側となる北海道・森町からはオンライン参加で教育委員会社会教育課社会教育係(兼)森町公民館事業係主査の瀧澤学さん、森町地域おこし協力隊員の春澤栞さんにお話を伺いました。
「どうして玉川大学が森町でオフキャンパス・スタディーズをやっているのか。それは、森町も木材振興に力を入れているからです。私が担当しているこの2年間では『木育』という枠の中で、学生たちに企画を考えなさいと伝えています。他の大学ではなく、玉川大学の学生だからこそ森町に行って交流事業をする意味が強くなっているのです」
<森町の木と玉川学園の木>
髙木講師がプロジェクトの意図をこんな言葉で明らかにしてくれました。玉川大学は環境保全を目的として、幼稚部から大学院までが同じキャンパス内にある「玉川学園」内の老木などを定期的に伐採し、二酸化炭素の吸収量の多い若木を育てるほか、伐採後に乾燥させた木を利用した木工や炭づくりを行うなど、学園内外に「木の輪」を広げる「Tamagawa Mokurin Project」(木輪プロジェクト)を実施しています。森町も道南スギやトドマツ、カラマツといった町産材が豊富な町。だからこそ、木材振興に力を入れる森町とコラボレーションを図る意味が明確になっているのです。
<玉川大学リベラルアーツ学部 髙木大祐 講師>
玉川学園がTamagawa Mokurin Projectを始動したのは2022年度。森町プロジェクトにTamagawa Mokurin Projectが取り入れられたのが2023年度からで、2024年度からは髙木講師の指導の下、さらに「木育」というコンセプトを設定しました。実は菅原さん、平岩さん、高仲さんともに前年度に続くプロジェクトへの参加。今年は学生のグループを運動班・工作班・文化班の3つに分けて活動しましたが、この木育のコンセプトの中でどのように取り組んだのでしょうか。
「木の楽しさや、木を使って何かができるということを森町の子どもたちに伝えたいと考えました。まずは、玉川学園内で伐採された木材と森町の木材の両方を使おうと考え、次に森町はいかめしもあるように港町でもあるので船を木で作ることにしました。参加した子どもたちが家に帰ってイカ漁や船の話題のきっかけになるかもしれないし、船に興味を持ってくれるのではないかと考えました。最初は熱動力で進むポンポン船を考えていましたが、小学校低学年の参加者を考え、安全面からゴムを動力としたものを作ることにしました」(工作班の高仲さん)
<リベラルアーツ学部3年・高仲恕太郎さん>
前年の参加時には文化班だった高仲さんは、工作班を外部から見ていた昨年、「客観的にこうすればいいな、と思うことがあった」といい、それを活かした形で今回の取り組みを決めていったと言います。
「文化班は、子どもたちに森町の文化に触れてもらうことがメインなのですが、一口に文化と言っても幅広いですよね。そこに木育をどう絡めるかというのが最初に感じた難点でした。子どもたちに興味を持ってもらえるよう、文化を海と山と歴史に分け、森町の木と玉川学園の木の匂いを嗅ぎ分けてもらったり、木のイカ釣りをしたり、木鉄砲を作ったりしながら、クイズとともに木に触れてもらうことを考えました」(文化班の平岩さん)
<リベラルアーツ学部3年・平岩詩織さん>
文化班では、これらの工作やクイズなどを「悪人に森町の宝が奪われた」というストーリー仕立てにして、より子どもたちに楽しんで取り組んでもらえるように工夫。次代の森町を担う子供たちに「森町の良さを理解してもらいたい」と、まさに“地域創生”の理念の根本にかなった企画にできるように考えました。
「運動班では今回、玉入れをすることにしました。玉入れのかごを、木を使ったものにすることを考えたのですが、背の高いかごにするとなかなか自立しないため試行錯誤しました。地域おこし協力隊の春澤さんにもアドバイスをいただいて、背の低いかごにし、かごがぐるぐると回転する形にしたり、2択のクイズを出して正解と思うほうのかごに玉を入れたりするという方法を採りました。私たちも森町の木と玉川学園の木の両方を使ってかごを作りました」(運動班の菅原さん)
<リベラルアーツ学部4年・菅原みゆさん>
リベラルアーツ学部の学生は木工工作に関する知識が十分でない学生が多いこともあり、玉入れのかごについても、地域おこし協力隊にも手伝ってもらいつつ、協力隊が拠点とし、2023年に森町で開設された若年層担い手育成施設「iroMori(イロモリ)」で制作作業を行いました。髙木講師は「こうしたご協力があって、何とか企画も出来上がりました」と振り返ります。
森町側も単に受け入れただけではありません。春澤さんは今年の春、実際に東京・町田市の玉川大学を訪れ、Tamagawa Mokurin Projectを目の当たりにしました。「学園内の木を切って乾燥させ、保管するという素晴らしい取り組みをされているのが印象的でした」と春澤さん。
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<森町地域おこし協力隊 春澤栞さん>
自身の2人の子どもがプロジェクトに参加したという瀧澤さんは、「このプロジェクトが森町の子どもたちにとって、夏休みの大きな楽しみの一つになっています」と明かしながら、より多くの人の目に留まるよう、今年初めて町の広報紙にもプロジェクトについて掲載し、いかにしたら町民や子どもたちの心に刺さるのかを考えたと言います。
こうした取り組みの結果が、8月23日に、今年は新たに道立森高等学校の生徒もサポートに加わり、玉入れなどで楽しんだ「森町ミニ運動会」、そして24日の船の工作、クイズラリー「宝を集めろ!森町探検隊!」などで結実。参加者の子どもたちや地元の人、そして玉川大学の学生たちは笑顔にあふれ、特別参加してくれた森高等学校の生徒にも、北海道から遠く離れた玉川大学に対する興味を持ってもらえるきっかけとなりました。企画に先立って、森町女性団体協議会の皆さんによる郷土料理体験も実施され、玉川大学生と森町の交流を深めました。
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<いかめし作り体験をする大学生>
今年度のプロジェクトを通じ、森町の子どもたちはどんな風に感じていたのでしょうか。
自身の2人の子どもが参加した瀧澤さんは、船を作った際にまっすぐ浮かばないため、何とかまっすぐ浮かばせようと苦心する我が子の姿に感心したと言います。「もともと絵や工作は好きな子どもなのですが、ゲームなどではないのに黙々と真剣にやっている姿を見ました。そういう姿をこれまであまり見たことがなかったので、あんな風に真剣になるんだな、と感じました」と驚いたようです。「今、起きていることに対応する力を身に着けていることを実地で感じられました」と口元をほころばせました。
もう一人の子も文化班で作った木鉄砲を自宅に持ち帰り、なかなか思う方向にまっすぐ飛ばないことに疑問を抱き、自分なりの工夫を重ねていたと言います。まさに応用の第一歩を踏み出す瞬間を見たとの思いだったそうです。
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<森町教育委員会社会教育課社会教育係(兼)森町公民館事業係主査 瀧澤学さん>
春澤さんも「普段、私が関わっているワークショップなどでも、親御さんや先生が『あの子ってこんな表情をするんだね』と喜んで話されることがありますが、このプロジェクトでも子どもたちはすごく生き生きとしていました」と、瀧澤さんの話に共感していました。
<船の工作>
子どもたちの動きをはじめ、こうしたプロジェクトには想定外の出来事も付き物です。玉入れは当初考えていた4種の競技が3種となったり、船の工作では最初に用意していた工作材料が多すぎたので急遽、保護者とし来ていたお父さん・お母さん方にも持ち帰ってもらったりもしました。「お父さん同士が森町ならではの船の話をするなど、周りの人も一緒に巻き込める形にできたのは結果的に良かったです」と高仲さんは振り返りました。
<森町ミニ運動会の玉入れゲーム>
玉川大学では、今後も森町にも協力を仰いだプロジェクトを行っていく予定です。その継続については、今後、さらに必要なことも出てきそうです。
春澤さんは「学生さんには、森町について深掘りしてもらえるようにお伝えしていければいいと考えています。自分なりのテーマがあれば、森町について“自分事”化してもらえると思うので」とコミュニケーションを大学側と密にしたうえで、プロジェクトのクオリティを高める必要性があると言います。
<船工作を終えて参加者と学生の記念写真>
瀧澤さんは「今年度よりもさらに多くの人にこのプロジェクトを知ってもらえるように工夫していきたいです」と話しました。
4年生の菅原さんは、「玉川大学の学生にとって、地方創生に触れられるのはなかなかないことで、とてもいい機会。今年度は、新しく参加した学生からいろんなアイデアが出て、発展的にディスカッションができたことで、今後の可能性を感じることができました」と話します。
高仲さんは「プロジェクトは2日間で、時間が限られた中でどういうことができるのかと考えていくのですが、大きな目標としては、参加してくれた森町の子どもたちが大きくなったときに地方創生にまつわるイベントを企画してくれるようになれば、と思います。そうなると本当にうれしいことですよね」と夢を馳せます。
<森町探検隊>
学生を指導する立場の髙木講師は「教える立場ではあるものの、教えすぎると企画の意味がなくなるので」と苦心しつつも、「学生たちがしっかり木育のコンセプトを踏まえたうえで、オリジナリティのある企画を考えているのでそれには満足しています」と話します。
「対象地域への還元がなければ、その地域に甘えさせてもらっているだけになってしまいます。森町の子どもたちに木に触れてもらい、その先に森町の良さを知ってもらうことが地域創生の第一歩なんです」。
髙木講師は「今年度は学生がよくやってくれました」と振り返りますが、「それを続けていかないことには、森町にお世話になっている意味がありません」と今後に目を向けます。
<学園祭・コスモス祭で北海道プロジェクトの活動を報告>
森町に限った話ではありませんが、人口減少社会における地方都市、地域の課題は山積しています。「玉川大学と一緒にやるこのプロジェクトがあってよかったね、と言ってもらえるような存在になっていればいいかな、と思います」という髙木講師の言葉は、今後のプロジェクトの成否の核心を突いた言葉と言えます。
<作成した森町マップ>
高仲さん、平岩さん、菅原さんはいずれも、プロジェクトに参加する前には、森町のことなどは全く知らなかったと言います。このプロジェクトを通じて森町と縁ができたことで「学生の人たちが個人的に今後、森町を再訪されることがあれば、もちろん歓迎します。それが地方創生の一歩になります」と春澤さん。
地域を訪れ、地域で学び、地域を知る。それを体現した玉川大学のプロジェクト。
今後の展開もさらに広がっていきそうです。
<交流プロジェクト終了時の参加者の記念写真>
●関連情報
玉川大学×北海道森町 交流プロジェクト2025
https://www.tamagawa.ac.jp/info/mokurin/news/detail_014.html
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