株式会社才流
「パートナービジネスの確かな地図を届けたい」実践者である著者が語る、パートナービジネスの課題と進み方
2025年12月17日
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2025年12月19日(金)、当社シニアコンサルタント 桂川 誠が執筆した書籍『チャネルを広げBtoB事業をスケールさせる パートナービジネス戦略 基本と実践』(日本実業出版社)が発売されます。
BtoB企業が商品・サービスを顧客に届ける方法は、大きく2つあります。自社(メーカー)の営業が直接販売する「直販」と、販売代理店などのパートナー企業を通じて販売する「パートナービジネス」です。
本書は、パートナービジネスにおけるメーカーとパートナーの関係を、「発注元と下請け」ではなく、「ともに市場を育て、成功を分かち合う仲間」と定義し、実践的なノウハウや進め方を体系的にまとめた1冊となっています。
著者が書籍に込めた思いや、いまパートナービジネスが直面している状況について、話を聞きました。
書籍販売サイト(Amazon):https://amzn.asia/d/60MUOn5
パートナービジネス実践者である著者の「原体験」から生まれた1冊
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書籍の著者である桂川は、才流のコンサルタントとして多くの企業のパートナービジネスを支援しています。前職のキヤノンマーケティングジャパン株式会社では、自社のパートナービジネスを推進する担当者、そしてパートナーとして他社の商品・サービスを販売する担当者、双方の現場を経験してきた実践者でもあります。
キヤノンマーケティングジャパンは、パートナーチャネルによる売上規模約2,400億円(全体売上の約40%)※と国内有数のパートナービジネスを展開する企業です。そのなかで、著者はアライアンスを推進し、パートナーとの協業における商材の市場シェア過半数を獲得。社長賞を受賞した成功体験を持っています。
しかし、成功に至るまでの道は、決してラクなものではなかったといいます。パートナーを激怒させてしまうような、大きな失敗もあったそうです。
本書には、著者のそうした成功と失敗の積み重ねから得た「視点やノウハウ」が詰まっています。
※出典:人の絆とデータでビジネスパートナーの成長支援を徹底せよ―キヤノンマーケティングジャパンが追求するパートナー協業の真髄
パートナービジネスは「地図のない森を手探りで進む」闘いだった
── まず、「パートナービジネス」の書籍を書こうと思われた理由を教えてください。
桂川 ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、一言でいうと「矛盾を解消したかった」からです。
日本の商習慣において、パートナービジネスは決して特殊なものではありません。むしろ古くから、多くの企業が、パートナーの力を借りて顧客に商品・サービスを届けてきたのです。
たとえばIT業界では、中小企業向けにIT製品・サービスを販売するITソリューションベンダーの76%が、なんらかの形でパートナーチャネルを活用しています(※)。
しかし不思議なことに、これまでパートナービジネスのノウハウが体系的にまとまった教科書は存在しませんでした。書店に行けば、直販営業やマーケティングの教科書は山ほどあるのに、ここだけ「空白」になっていたのです。
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その結果、現場では何が起きていると思いますか。
「パートナーと契約さえすれば売ってもらえる」という幻想のもとに、メーカーは契約数を積み上げていきますが、売上は伸びてこない。契約してもパートナーが動いてくれない「サイレント・パートナーシップ」の山が築かれているのです。
パートナービジネス担当者は、ビジネスの総合格闘技ともいえる難易度の高い業務において、「地図のない巨大な森を手探りで進む」ような闘いを続けてきました。この矛盾をなんとか解消し、地図なき森に、確かな地図を作りたい。これが、本書の執筆に至った背景です。
※出典:中小企業の身の丈に応じたITツールの普及促進について(中小企業庁、2019年)
メーカーの担当者に求められるのは「ビジネスの総合格闘家」たるスキル
── パートナービジネス担当者の業務が「ビジネスの総合格闘技」というのは、具体的にどういうことでしょうか。
桂川 パートナービジネス担当者には、あらゆるスキルが求められます。
通常、企業の中では「営業」「マーケティング」「事業開発」「カスタマーサクセス」といった具合に、役割が縦割りで分担されています。しかし、パートナービジネスの場合、担当者はこれらすべてのスキルを担う必要があるんです。
- パートナーと一体になって顧客に商品・サービスを売る営業
- 数ある商材の中から、パートナーに自社の商品・サービスを選んでもらうためのマーケティング
- パートナーの収益モデルを設計する企画や事業開発
- パートナーが成果を出せる状態をともにつくるパートナーサクセス
これらのスキルを相手の状況に合わせて瞬時に切り替えながら対応する姿は、まさに「ビジネスの総合格闘家」です。
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私自身、かつて地方のパートナー企業を担当していた頃は、メーカーのパートナービジネス担当者というより、まるで「中小企業診断士」になったような気持ちで向き合っていました。
相手の会社の経営課題や収益構造まで深く理解し、「うちの商品をこう扱えば、御社のこの課題が解決できて、これだけ利益が出ます」と、経営コンサルティングさながらの提案をする。そこまでしなければ、経営者や役員の方々は動いてくれなかったからです。
ところが、つらい現実があります。
現場でこれほど複雑な「総合格闘技」を繰り広げているにもかかわらず、社内に戻ると、その難易度がなかなか理解されないんです。
専門特化した各部署の人たちからは、「パートナーの機嫌をとって、お願いしてくるだけの人」とか、極端な場合「飲み会で調整するのが仕事」といった古いイメージで見られてしまうことさえあります。
社外では経営視点を持ったプロフェッショナルとして戦い、社内では「何でも屋」のように扱われてしまう。「スキルの壁」と「社内理解の壁」に挟まれているんですよね。
経営層は、パートナービジネスに対する認識を変える必要がある
── 高いスキルを持って現場で奮闘しているパートナービジネス担当者が、社内で理解されない。この課題の背景には、どのようなことがあるのでしょう?
桂川 パートナービジネスの価値や難しさを、経営層が正しく理解していないことが背景にあると思います。
パートナービジネスの本質的な価値は、「直販ではどうしても届かない市場」へのアクセス権を得られることにあります。マーケティング理論で言う「キャズム(普及の溝)」を超えて、マジョリティ層にリーチするためには、すでにその市場で信頼を得ているパートナーの力が不可欠だからです。
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しかし現状では、「人手が足りないから外にお願いする」というリソースの代替手段だと勘違いしている経営層がとても多いと感じています。
パートナービジネスは「売り子を増やす」施策ではなく、「自社の商圏を非連続に拡張する」ための経営戦略です。認識をあらため、社内周知や体制強化に注力すべきでしょう。
そして、経営層は「成果が出るまでには時間がかかる」という現実も受け入れるべきです。
パートナービジネスで本格的な成果を出すためには、3年はかかります。短期的な数字だけで現場を詰めてしまうと、担当者は疲弊し、継続が難しくなってしまいます。パートナーへの無理な押し込み営業に走り、パートナーからの信頼を失ってしまうことさえあります。
こうしたことを防ぐためにも、短期施策ではなく、長期的な取り組みとして設計を見直していかなければなりません。
経営層がこのような認識のもとで体制を構築していくことで、現場のパートナービジネス担当者にとって、成果を出しやすい状態が作れるはずです。
パートナーが「売りたくなる」旨味を、どう設計するか
── パートナービジネスで成果を出している企業の事例を、書籍内でも紹介されていますね。地図のない森の開拓者ともいえる成功企業に、共通する点は何なのでしょうか。
桂川 成功している企業は、「三益トライアングル」がきれいに成立しています。
三益トライアングルとは、メーカー(自社)、パートナー、そして顧客の三者全員に明確なメリットがある状態を指します。
多くの企業は自社の売上と顧客の課題解決、その2点だけでビジネスを考えがちです。しかし、パートナービジネスでは、間に立つパートナー自身にもメリットがなければ、商品・サービスは流通しません。三者の利益がバランスよく保たれていることが、継続的に成果を生み出す絶対条件なのです。
ただし、現実的には「パートナーのメリット」が抜け落ちているケースが圧倒的に多いと思います。「自社の商品が良いものであれば、パートナーも喜んで売ってくれるはずだ」と安易に考え、顧客のメリットとパートナーのメリットを混同してしまうんです。
そこで、パートナーにとってのメリットを因数分解して設計するために、PPF(プロダクト・パートナー・フィット)というフレームワークを提唱しています。
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PPFは、商品・サービスがパートナー企業のビジネスモデルにカチッとはまり、「これを担ぐことで自分たちが儲かる、成長できる」とパートナーが確信できる状態を指します。スタートアップ業界で使われるPMF(プロダクト・マーケット・フィット)になぞらえた概念です。
PPFを達成するためには、3つの重要な要素があります。
まずはシンプルにパートナーが儲かること。単発のマージンだけでなく、ストック収益などで経営を潤せるかどうか。
次に、パートナーの価値が高まること。その商品・サービスを扱うことで、パートナー自身が競合他社と差別化できたり、既存事業を強化できたりするかどうか。
最後に、パートナーの売りやすさ。現場の営業担当者が説明不要ですぐに売れるほど商品・サービスの認知度があるか、無料トライアルや導入事例など営業支援ツールが揃っているかどうか。
3要素のうち1つでも満たしていれば、パートナーは自らの意思で「売りたい」と動いてくれる可能性が高まります。こうした「売りたくなる構造」を意図的に設計できているかが、成功の分かれ目です。
「話し合い、耳を傾け、信頼する」パートナーとの未来に向けて
── 最後に、本書を手にとる読者、そして日々現場で戦うパートナービジネスの担当者へメッセージをお願いします。
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桂川 最後に個人的な思いを語らせてください。実は私自身、20代のころに、パートナーを単なる「販路」と勘違いし、手痛い失敗をしています。
私は自社のパートナービジネス担当者であり、パートナーが顧客のフロントとして営業を行っていました。しかし、成果を出すことに焦った私は、パートナーを飛び越えて顧客に直接営業をしてしまったんです。これはパートナーの顔をつぶす、タブー行為です。
当時の私は、「パートナーは下請けではなく、共に価値を創る仲間」という意識が、完全に欠けていました。パートナーに呼び出され、怒られ、はじめて気づいたという、なんとも情けない経験です。
その失敗以来、私は上司に教わった山本五十六さんの言葉を、パートナービジネスの核心として胸に刻んでいます。
やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ
この冒頭部分は有名ですが、パートナービジネスにおいて真に重要なのは、実はこのあとに続く言葉だと私は思っています。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず
一方的に「売ってください」とお願いしたり、やり方を押し付けたりするだけでは、人は育たず、成果も生まれません。相手の事業課題に耳を傾け、その活動を承認し、心から信頼して任せること。この「任せて、信頼する」という覚悟が決まったとき、パートナーは想像を超える力を発揮してくれます。
パートナービジネスは、孤独で過酷な道のりかもしれません。しかし、その壁を乗り越えた先には、メーカー、パートナー、そして顧客の三者全員が豊かになる未来が待っています。 この本が、みなさんにとって確かな地図となり、最高のパートナーシップを築く一助になることを願っています
【書籍概要】
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タイトル
チャネルを広げBtoB事業をスケールさせる パートナービジネス戦略 基本と実践
発売日
2025年12月19日(金)
販売サイト:https://amzn.asia/d/60MUOn5
出版社
日本実業出版社
著者
桂川 誠/株式会社才流 シニアコンサルタント
栗原 康太/株式会社才流 代表
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