角上魚類ホールディングス株式会社
「クレームの大魔王」から、「神接客」をする店員へ。角上魚類でお客様一人ひとりのニーズを引き出す大ベテラン「親切係」の接客の極意とは
2026年01月14日
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角上魚類には、黄色い帽子を被った「親切係」という店員がいます。対面接客を大切にする角上魚類のなかでも、特にお客様からの質問や相談に特化した存在です。
今回は、1992年にアルバイトとして入社後、正社員勤務を経て、定年後の今もアルバイトとして活躍している赤羽店の親切係、中井さんの接客の極意について迫ります。
築地市場でのノリが出てしまい、クレームにつながった接客1年目
角上魚類にアルバイトとして入社する以前、築地の大卸として働いていたバックボーンを持つ中井さん。その後、ホテルなどに魚を卸す業者として独立。実は、角上魚類と中井さんとが出会ったときの関係性は、取引先だったといいます。
当時の角上魚類は、東京に出てきたばかりで、東京の市場内での存在感もそこまで大きくはありませんでした。「市場をわかっていて、魚を集めてくれる人がほしい」ということで中井さんに白羽の矢が立ち、アルバイトとして働きはじめることになったのです。
その後、1995年に正社員として採用。エビやカニ、貝類、ウニやタコなど、鮮魚のなかでも「特種※」と呼ばれるものの仕入れ担当を務めました。
※「特種」とは「鮮魚と異なるエビカニ甲殻類、貝類、海藻類など」を指します。
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そんな中井さんが、店舗での接客についたのは2008年のこと。津田沼店に3カ月、つきみ野店に5年9カ月、日野店に1年、赤羽店に3年と、複数の店舗を渡り歩きながら、接客を極めていきました。親切係の帽子を被ったのはつきみ野店にいた2011年頃。角上魚類で親切係の制度が始まった頃のことでした。
その後、民放のテレビ番組で角上魚類が取り上げられた際に出演し大反響を呼んだ他、2018年には第23回SC接客ロールプレイングコンテストの全国大会で準優勝に選ばれるなど、「中井さんといえば、接客」というイメージを社内で強めていった中井さん。しかし、店舗に異動になったばかりの頃は、上手くいかないこともあったといいます。
「私が元いた築地では、買いにくる方は魚のプロです。今はどうかわかりませんが、40年ほど前の築地は売り手市場で、売り手のほうが強い雰囲気を醸し出していたんですね。一般の方から見ると強面、横柄にも見えるようなそんな築地での雰囲気が、当初店で出てしまっていたようなんです。気を付けてはいたものの、周りから『中井さん、ちょっと厳しいんじゃないですか』と言われて気付かされました。この築地での雰囲気を直すのにかなり意識を要しましたね」
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また、津田沼店からつきみ野店に異動した際には、「土地柄に応じて、いい接客が必ずしもいいと受け入れられるわけではない」という体験もしたという中井さん。津田沼店のお客様に受けていた大きな声を出して豪快に呼び込むスタイルの接客が、つきみ野店では100%良い形では受け入れられなかったのです。
「下町なのか、高級住宅街なのかなど、その土地のカラーによってお客様の雰囲気は異なります。大きな声で接客をする姿が、直接接客を受けていない周りの人にとっては不快に思われてしまったのでしょう。クレームをいただくことになってしまいました。当時は店内で『クレームの大魔王』と呼ばれていましたね(苦笑)」
ひとりのお客様への接客で、周囲にいる5~6組のお客様にも情報を伝える
築地での勤務経験がある中井さんは、魚の説明は他に引けを取らないレベルの力を持っています。しかし、こちらも魚を扱うプロに対するやり取りと、店舗で一般のお客様に接客するのとでは、求められる内容が異なります。
「どうやって食べるのがいいのかといった質問に答えるのに苦労しましたね。何せ、実は私は魚に詳しくはあるものの、自分で魚料理をすることがないんですよ。何なら、魚の食べ方も幼少期からずっと下手でして(笑)。妻が料理上手なため、どうやって作っているのかを聞き、知識の引き出しにしていきました。あとはお客様ですね。滅多に見かけない未利用魚と呼ばれるような魚は、買い求めているお客様に『どうやって食べてるんですか?』と話しかけ、自分の知識にしていました。お客様も、嬉しそうに知識を披露してくださいましたよ」
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店頭でお客様と接するなか、工夫を重ねていく中井さん。目の前にいるお客様が魚料理を得意としているのか、そうではないのかを、ちょっとした会話で探ったうえで提案するよう心がけるようになっていったといいます。
「そのお客様が自分で作れないような料理をおすすめしたところで、自分事として聞いてはいただけませんからね。店員が披露した知識を『ふーん、そうなんだ』とただ聞いてもらうだけで終わってしまうことのないよう、その方に合わせた話ができるよう意識しています」
また、接客時には目の前のお客様だけではなく、周囲にいる人たちのことも意識しているという中井さん。接客トークのなかで、お客様の関心を引くワードをあえて大きめの声で言うことで、周囲の人にも伝わるようにしているのだとか。
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「たとえば、『これは煮付けがおすすめですよ』と言う私に、『上手く煮汁が作れなくて』と返されたときには、『いやいや、煮汁は売ってるのを使えばいいんですよ。めんつゆでいいんです。で、その希釈をね、お酒でやるんですよ』とお話する。この後半部分を抑揚をつけて印象的に言うことで、周囲の方にも届き、『なるほど、なら買ってみようかな』と波及させられるんです」
一方、魚にある程度詳しそうな方、こだわりのありそうな方に対しては、あえてあまり口出しをしないようにしているといいます。一人ひとりのお客様の性別や年齢、家庭構成を見て、柔軟に接客のスタイルや情報の粒度を変える。これが中井さんが意識している接客です。
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そんな中井さんは、2018年に行われた第23回SC接客ロールプレイングコンテスト全国大会で準優勝を果たしています。これは、過去に初めて出た際に準備不足により予選落ちした結果を踏まえ、再度挑戦した末の成果でした。
華々しい結果を残した中井さんですが、ロールプレイングと店頭での接客とには違いがあると語ります。
「ロールプレイングは、あくまでもロールプレイングであり、現場ではありません。アパレルショップならいざ知らず、魚屋は短い時間で一人でも多くのお客様を相手に、気持ちの良い接客をしなければなりません。いくら忙しいときでも、お客様にこちらの焦りが伝わるのは禁物なんです。ただ、ロールプレイングで培ったオーバーな表情作り、ジェスチャースキルは現場でも役立っています。マスクを付けているので、目で表情を伝えなければならないんですよ」
また、ロールプレイングでお客様役を務める人から出る無理難題も、接客スキルの向上に一役買ったといいます。勧めた魚に対して「それ、嫌いなんです」と言うお客様。無口なお客様。優柔不断なお客様。どのようなお客様がきても、一方通行ではない接客をするのがロールプレイングコンテストでは求められます。お客様の話を聞き、会話のキャッチボールを生み、そこからニーズを引っ張り出す。現場でも、活かせるものを活かして接客スキルを磨き続けてきました。
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店員にとって100人中1人のお客様も、お客様にとっては一対一
日々多くのお客様と接する中井さんには、忘れられないお客様がいます。それは、赤羽店に頻繁にご来店されていたご夫婦です。
「どの店舗でも、顔なじみになってやり取りし、こちらで好みも把握できるようになるお客様が1~2組はいらっしゃるんです。このご夫婦も、そんなお客様の1組でした。おすすめした魚の感想を、次にご来店するときにお聞かせくださるなど、良くしていただいていたんです。しかしある時、半年ほどご来店されない期間がありました。引っ越ししてしまわれたのかなと思っていたある日、奥様がご来店され、ご主人が病で亡くなってしまったとお話されたんです。そして、『お世話になったから、もらってください』とご主人がゴルフに行かれていたときに使っていたという帽子をくださったんです」
この出来事から、接客中の関係性だけではなく、お客様にとって日々買い物をする店の店員は一対一の関係性であることを痛感したという中井さん。日々、100人、1000人のお客様の接客をするなか、忘れられないエピソードとして心に刻み込まれています。
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接客は目に見えない。だからこそ、良い接客をした店員を可視化し、意識向上につなげる
ロールプレイングコンテスト後、定年退職を迎えた中井さん。その接客スキルを買われ、接客トレーナーとして再雇用され、5年間、角上魚類の接客の質向上に尽力されました。行ったのは、良い接客の可視化です。
「手取り足取りで教えるのは無理ですから。2カ月に1回入るミステリーショッピングリサーチという覆面調査員による店舗接客調査を活用し、良い評価を得た人に星を与え、接客スターマイスターとして、金色のバッジを付与、店に写真を飾る取り組みをしました。良い接客を可視化して全体に浸透させるのと並行し、クレームをいただいたときにも全体に共有。『みんなもクレームになってしまうかもしれないから、気を付けましょう』と伝達することで、共有財産としていきました」
静かだった店に活気が出てくるなど、意識の変化も感じられたという中井さん。5年の期間を終え、再定年を迎えたのち、今はアルバイトとして赤羽店で黄色い帽子を被り続けています。
「魚屋は元気のいい人が多いので、それが心地いいのかな。働いていると、元気がもらえるんですよ」と、働き続ける理由を語ります。
大ベテランとして活躍する今、意識しているのは店内の雰囲気づくりです。
「もう社員ではないので、若い子への叱咤もしていません。大事にしているのは、空気を和らげること。社員同士が殺伐としていたら、接客にも自然とその雰囲気が出てしまうものですから、忙しいときほどおどけて見せるなどして、楽しい雰囲気になるよう意識しています」
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魚は美味しい。若い世代にも魚の魅力をアピールし続けたい
長年、赤羽エリアで働いてきた中井さん。時代が変わり、日本人だけではなく中国人のお客様も増えるなど、お客様の層に変化も見られるといいます。人種によって、魚の下処理のオーダーにも違いがあると語る中井さん。目の前のお客様のニーズを探り、適切な接客をする姿勢が変わることはありません。
「日本では魚離れが進んでいて、『料理が難しい』とか『においが気になる』といったようなお声もあります。そうしたなかでも、魚の美味しさをこれからもしっかりと伝えていきたいですね。子育て中の若い親御さん世代にもアピールできるようにしていきたいなと思っています」
市場から店舗に身を移し、「接客販売といえば中井さん」と言われるまでになった中井さん。今日も大きな笑顔と快活な声色で、お客様に魚の美味しさを伝えています。
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