オムロン株式会社

“熱い”ナレッジコミュニティ ── オムロン AIZAQの秘密

2026年01月21日


オムロンに突如として現れた、部署、役職、年齢も関係のない集団、生成AI活用推進プロジェクト『AIZAQ《アイザック》』。AIZAQの主な活動は、⽣成AIを活⽤したオムロン社内のDX実践です。


⼀般的に、⾃主参加型の全社プロジェクトは、スタート時には社員の関⼼を集めても、だんだんと尻つぼみになっていくことが多いのではないでしょうか。しかし、AIZAQは違いました。2023年のキックオフからシーズンを重ねるにつれ勢いは加速し、ついにはグローバルにまで波及。「知」が循環するコミュニティへと成⻑しています。

今回は、AIZAQを率いるPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)として、そのコミュニティを活性化させ続ける仕掛け⼈、上渕さんと伊藤さんにその裏側を伺いました。

はじまりは失敗の予感があった

─お⼆⼈がPMOとして関わることになったきっかけを教えてください。


上渕︓ 2023年当時、私はグローバル戦略本部で、⽣成AIの有⽤性や価値を検討する役割を担っていました。その取り組みの中で、外部有識者による経営陣向けの学びの機会を設けることになりました。


上渕さん︓ オムロン デジタル株式会社 ITソリューション事業部 事業部⻑


⽣成AIの価値を体験した経営陣が「この技術は全社に広げるべきだ」と意思決定したことで、⽣成AIの活⽤を全社的に推進するプロジェクト「AIZAQ」の⽴ち上げが決まったのです。⽣成AI活⽤や業務プロセスの変⾰を⽬的にした全社プロジェクトで、私はそのまま⽴ち上げに携わることになりました。

正直、「これは普通にやったらコケるだろうな」という第⼀印象でしたね。⼀般的にトップダウンの 全社横断的な取り組みは、現場理解を得られないパターンが多いイメージを持っていたので。初回のメンバー募集は「10⼈来ればいい⽅かな」と話していました。


伊藤さん︓オムロン株式会社 グローバルビジネスプロセス&IT⾰新本部 デジタル戦略構築部 部⻑


伊藤︓ 私は、上渕さんから少し遅れてアサインされました。プロジェクトを始動させてみたら、200⼈近い申し込みがありました。全くの予想外で、社員の新しい技術に対する興味やチャレンジしたいという意欲が私たちの想像を超えていたことにハッとさせられました。これならボトムアップのコミュニティとして成⻑していくことができるかもしれないという可能性を感じた瞬間でした。


─部署や役職を超えたメンバーが集まる中で、どのように組織としてまとめていったのでしょうか︖


上渕︓ 当時は、「⽣成AI」というテーマの正解を誰も知らない状態でした。だからこそ、部署や役職を超えてフラットに取り組めたのだと思います。


伊藤︓ 有識者には知識や情報を「シェアする役割」としてテクニカルアドバイザーを担ってもらいました。これによって、情報格差による分断や、知識量による優劣を防ぐこと、つまり不⾜しているケイパビリティを補い合うことを狙いました。


参加メンバーの役割


上渕︓ もちろん、⼤変なことはありました。当時のPMOは3〜4⼈。25ものテーマを横断的に⾒ていましたから、⼀⼈あたり8テーマほどを担当していたことになります。それでもカオスな状態にならなかったのは、参加者⼀⼈ひとりが⾃律的な学びにチャレンジし、知識を共有するというオムロンの⽂化が基盤にあったからだと振り返っています。

「やらされ感」をなくし、「熱気」を⽣む仕掛け

─参加者の熱気はどのように⽣まれたのでしょうか︖


伊藤︓ 「⾃⼰啓発」ではなく「業務」として、組織横断で運営するプロジェクトだと経営が意思決定したことは、⼤きな後押しになりました。

具体的には、評価制度の中にAIZAQでの活動も組み込むことで、社員が安⼼してプロジェクトに参加できる⼟台を作ったんです。



上渕︓ そもそもオムロンは、リスクや失敗を恐れずチャレンジを続けることを⼤切にする価値観を持っています。初回の応募に200⼈近く⼈が集まったのは、オムロンの価値観を共有する社員の内発的な動機の要素は⼤きいです。

Season2、Season3と回を重ねるごとにAIZAQの認知度が少しずつ広がるにつれ、⼀度参加した参加 者が「次も参加したい」と、戻ってくることも多くあります。実際の経験を周囲にインフルエンスしてくれているのはPMOにとっても⾮常にありがたいですね。


─プロジェクトを円滑に進めるために、PMOが⼯夫したことはありますか︖


伊藤︓ ここまでの道のりは、⼀本道だったわけではなく、様々な施策をやってみて、筋のいいものだけを残してきた結果でもあります。

その中でもPMOとして最初に決めた、そして今も変えていないものは「楽しいと感じてもらうこと」、「難しさを感じさせないこと」この2点ですね。AIZAQの参加者は⾮エンジニアの割合の⽅が多い。彼らに少しでも「難しい」と思われたら、このプロジェクトは絶対にうまくいきません。

だからこそ、初参加の⽅が⼊っていける場にすることは常に⼼がけています。

私たちPMOにも成果を出すというプレッシャーはあります。しかしそれを参加者に感じさせたくない。

AIZAQのPMOの役割は、参加者を管理することではなく、参加者を「顧客」としてとらえ、彼らに価値を提供することだと定義しています。


上渕︓ そのために、あえて効率化していない部分もあります。

AIZAQはほぼ100%オンライン上でのコミュニケーションで進⾏するため、Teamsでのコミュニケーションが不可⽋です。AIZAQのTeamsは活発なことで社内でも話題になるほどで、1⽇に40-60件の投稿が様々な参加者から寄せられます。

PMOはこの投稿に対し、「息をするようにいいね」することと、その後のアクションを絶対に返すことを徹底しています。

調べてからではないと回答できないものもありますが、まずは「発信してくれてありがとう」と反応し、感謝の気持ちを伝える。これは効率化ではなく、⼈同⼠のコミュニケーションを⼤切にするためです。




伊藤︓ ⼤勢が参加するグループで発話するのは勇気が必要ですが、PMOが能動的にリアクションとアクションを繰り返すことで、「相談しても⼤丈夫だ」という安⼼感が⽣まれていると実感しています。




─当初の懸念であった「トップダウンの全社横断的な取り組みは現場理解を得にくい」は、仰る通り他社でもよくあることだと思います。そういった「現場とのギャップ」はなかったのでしょうか︖


伊藤︓ なるべく温度差が⽣まれないようにしてきたつもりではありますが、ゼロではないと思います。

⼀⽅で、AIZAQの活動や成果は間違いなく価値があります。私たちは、積極的な社外広報を実施してきました。単純にリソースが⾜りなかった側⾯もありますが、社外広報に注⼒することで外部から社 内への「評価の逆流⼊」を狙ったんです。


上渕︓ 実際に伊藤さんが登壇されたり、経済誌等の取材を受けたりといった外部発信を強化してきましたよね。今年度(2025年度)もすでに10件以上の登壇予定が決まっています。

取り組みが功を奏して、取引先からAIZAQのことを尋ねられる社員も増えているようです。社外からの評判が誇りや⾃信に繋がっていたり、逆に⾃社情報をキャッチアップする意識を持つきっかけにもなっているという話は、社内でもよく聞きます。

「北⾵と太陽」のように、社内から無理やり変えようとするのではなく、社外からの評価という熱を送り込むことで、社員の関⼼度も⾃然と⾼まっていきましたね。


伊藤︓ AIZAQのコンセプトは、「ブカツ」です。Season1が終わったときに、参加者が、学⽣が勉強に励みながら部活にも精を出すのと同じように、本業を遂⾏しながらも⼼⾝を切り替えて取り組んでいる姿勢をみて、まさしく「ブカツ」だなと思ったのです。


上渕︓ この「ブカツ」はお互いの挑戦を称え合うところからもきています。半年ごとに区切られた各シーズンのクロージングイベントでは、単に成果やROI(投資対効果)を評価するだけではなく、「チャレンジしたことそのものに価値がある」というコンセプトで、参加者の名前を掲載して称え合うことを⼤切にしています。たとえ期待通りの結果が出なかったとしても、それは失敗ではなく、貴重な経験です。

このイベントには、経営陣も参加しますし、普段のTeamsの投稿にも経営陣も積極的に反応してくれるため、「会社に認められている」という実感を持ちやすくなっているのかもしれません。

進化しつづけるナレッジプラットフォーム

─ボトムアップのコミュニティに成⻑を遂げたAIZAQですが、今後はどのように活動を推進していくのでしょうか︖



伊藤︓ プロジェクトがスタートしてから数シーズンは、⽣成AIを使うことや業務プロセスを変⾰することを⽬的にしていましたが、今は「DXの原体験の獲得」という⽬的に軌道修正しています。つまり、⽣成AIを使ったDXにチャレンジした体験を、社員⼀⼈ひとりが持つことを⽬指しています。


上渕︓ そのためには、⽣成AIを理解するプロセスを全員が体験することが重要です。今後さらに新しい技術が出てきたときに組織的な働きかけをしなくても、⾃ら思考して変化に対応できる⼟台を築いていきたいと考えています。


伊藤︓ 私たちの役割は、「⾃ら考えて答えを⾒つけていく習慣をつけてもらう」ことなんですよね。

例えば、AIZAQ参加者からこのようなフィードバックをいただいたことがあります。

AIZAQは⿂を与えるのではなく、⿂の釣り⽅を教えてくれる場だと。

これからさらにテクノロジーは進化していくことは誰もが疑わないでしょう。その度に周囲に答えを聞いて回るようでは⽴ち⾏かなくなります。だからこそ、⿂の釣り⽅を⾝に着けてもらえるまで、私たちは社員⼀⼈ひとりの伴⾛者であり続けたいと思っています。


─最後に、今後の展望について教えてください。


伊藤︓ 現在、AIZAQをオムロンの海外拠点に展開する準備を進めています。

⽇本での成功を基盤に国内外でのスケールアップを計画していて、社内イベントとして、AIZAQ Global Summitを2025年11⽉に開催しました。


上渕︓ 2026年度は、⽣成AI技術の進化に対応するため、AIエージェントの導⼊に向けたシステム・ルール整備も加速させます。AIZAQは、新しい技術と向き合い、社員の⾃律的な挑戦を促し続けるナレッジプラットフォームとして進化していきます。


※組織名、役職などは取材当時のものです。



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