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改正医療法成立、新しい地域医療構想を見据えた具体策と事例 ①医療過疎地域の救急医療と非常勤による対応策に焦点を当てて

2026年01月26日

改正医療法の成立により、地域医療構想は「病床の再編」だけでなく、医療人材をどう確保し、どう配置するかまで含めた“実行計画”として位置づけられるようになりました。加えて、2026年度の診療報酬改定では、人件費相当がプラス改定となる見込みで、賃金・処遇改善を支える財源としての期待も高まっています。これらの制度の追い風を活かしながら、人材確保と医師の働き方の改善をどのように実現していくかが重要と考えられます。

医師の地域偏在に対しては、医師不足地域で一定期間勤務する医師への経済的支援が明確化され、地域で働くことへのインセンティブが強まる方向に。また、診療科偏在は産科・小児科・救急といった診療科において顕著であり、自治体による戦略的な支援がより一層求められています。特に救急医療の現場では、地域の複数医療機関で支える輪番制や機能分担が重要とされています。

新しい地域医療構想の下では、自治体が“調整役”として関与し、勤務環境の整備やキャリア支援などを組み合わせていけるかが、持続性を左右する大きなポイントになりそうです。


こうした背景をふまえ、MRTが取り組む「医療版ワーケーション」の事例として、実際に和歌山県の救急医療現場で勤務いただいた先生方にお話を伺いました。現場のリアルな声を通して、医師不足地域の救急医療の“今”と、これからの可能性を一緒に考えていきます。


-本日はお二人の先生にご協力をいただきました。


田中千陽先生

医師18年目、救急医の専属勤務ではなく、専門は心臓血管外科。

循環器系、血管系一般、消化器、ICUでの全身管理など多岐にわたる業務に携わり、通常時は三次救急を担う医療機関で勤務中。


和田憲先生

医師5年目、救急外来・在宅診療を主に診療。

救急、ICU、一般病棟での全身管理を行う3次救急で勤務した後、現在は2次救急、在宅診療を伴う医療機関で勤務中。



住まいから遠く離れた和歌山の救急医療現場で


-このたび、お二人には和歌山県医療版ワーケーションにご参加いただき、和歌山県での救急医療現場でのご勤務にご協力いただきました。率直なご感想を教えていただけますか。


和田先生:

和歌山県が好きなのと、地方の病院の病棟勤務がどのようなものなのか気になったため参加させていただきました。業務内容について十分に共有されており、なにかあったときに常勤の先生に相談しても良いとのことで、不安は少なく勤務がしやすい状況でした。一方で、休日に出勤できる医師がいない時もあるというのは、医師不足を感じました。


田中先生:

今回救急医ではなく病棟管理としての業務でした。自分の専門である心臓血管外科は常駐してないので、必要があれば救急車かヘリで転院するケースもあります。救急車もわりとたくさん来ていました。転院する場合には患者さんの全身管理をしつつご家族への説明(IC※1)をして、転院先を探して紹介状を書き、場合によっては医師が同乗することもあります。その間、他の患者さん対応もあり、救急現場としては忙しいと思います。逆にいえば、少ない人数で救急対応全般をしているので、医者としての力は確実につくだろうなという印象です。

今回、居住地と遠く離れた和歌山の医療を垣間見られたことは一つの経験になりましたし、自己満足ではありますが、少しだけでも役に立ったかもしれないという気持ちになれたことは旅行だけでは得がたいものです。和歌山は素敵なところでしたので、またプライベートでも再訪したいです。再訪したときでも、和歌山の医療に少し携わることができた経験があると、なんとなく親近感を感じると思います。


※1 IC(informed consent インフォームド・コンセント):治療法などについて、医師から十分な説明を受けた上で、患者が正しく理解し納得して、同意すること


お二人が勤務された南和歌山医療センターは地域の三次救急を担う

画像:独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センター提供


医療機関が非常勤医師を受け入れるならば


-非常勤という立場で二次・三次救急の医療現場に入ることについて、当初感じた印象や不安、また実際に働いてみた結果はいかがでしたか。


和田先生:

診療方針や判断基準、オンコール体制が整理されていることは、とても重要です。

判断を仰ぐべき上司がいない中で、全て自分で判断することは、正直不安であり、責任が重いと感じております。実際には、相談できる環境で勤務しにくい点はありませんでした。自分としても、看護師や救急隊などコメディカルのみなさんと、業務がスムーズにいくためのコミュニケーションを意識して勤務にあたりました。


田中先生:

命を預かる最たる場所なので、やはり自分の診断、治療で通用するか心配になってきます。いつも気を引き締めてがんばろうという気持ちで仕事に入ります。また、病院ごとの決まり事などがあれば対応しなくてはならないので、事前に情報をいただいているものの、仕事が始まるまでは不安な気持ちはあります。

今回勤務させていただいた病院では細かいマニュアルや院内マップもしっかり作成いただいていました。業務内容も明示していただいていましたし、対応するおおよその患者数、年齢層、食事の有無、電子カルテの種類、スクラブ※2の用意の有無などが共有されてよかったです。

勤務中、確認したい先の医師が手術中で相談できず、心配が残る判断もありました。カルテに詳細を記載の上、ご家族へのICと後任医師への申し送りをしっかりとして帰りましたが、やはりこのようなときは自分の経験値は必要だと実感します。

非常勤の勤務は業務内容が明確であることと、バックアップ体制がしっかりしていることが勤務のしやすさにつながると思います。


※2 主に医療現場で医師や看護師が着用するVネック・半袖の機能性ユニフォーム



-非常勤での受け入れをされたことのない医療機関側で「非常勤医師がいきなり入って務まるのか」「かえって現場が大変になるのではないか」という懸念もあります。これについて、医師の立場からどう考えられますか。


田中先生:

医療機関のご判断になると思いますが、人手不足で常勤の先生が大変な状況であるならご検討いただいてもよいかと思います。

三次救急などでつつがなく対応できるかに関しては、医師の資質や経験数によるところも大きいかもしれません。まずは経験年数が多い医師に限定する、専門科を限定するなどから対応いただければよいのではないかと思います。

また、スタッフが安心できるような声かけを医師から積極的にすることで、徐々にお互いの安心感がでてくると感じます。


和田先生:

勝手がわかってない分、現場が大変になる可能性はあると思いますが、何度か非常勤医が出勤している内に務まっていくものだと思っていますので、最初さえ乗り切れば問題ないと思います。

例えば、全面導入は難しいが試すとしたら、常勤がいるときに補佐として、非常勤医師を受け入れるといったところからはじめるのも現実的だと思います。



地域医療において非常勤医師は医療体制維持の鍵となるか


-診療科偏在が救急対応に与えている影響、そして新たな地域医療構想の中で、非常勤救急医の活用はどんな可能性があると思いますか。


和田先生:

診療科偏在によって救急医1人にかかる負担は増えていると思います。

非常勤救急医の活用によって常勤医師のサポート、負担軽減が少しでもできればと思っています。非常勤医が入ることで、現場全体のスムーズさは失われるかもしれませんが、最初だけではないかと思います。


田中先生:

治療までの時間が短いことが救命に直結するため、迅速な搬送を心掛けている病院が多いかと思いますが、なかなか受け入れ先が見つからないこともあると思います。診療科偏在自体は地域やローカルの病院規模などの問題が多くあるため、改善自体は難しいことも多いですが、地域全体で助け合うことが求められていると考えています。

各専門の医師を地域内で充足するならよいのですが、地域の医師が責任を一手に引き受けてしまうと疲弊する恐れもあります。非常勤医師をうまく活用していただくことで地域医療の安定、活性化につながると思います。



ドクターヘリによる搬送も行われる

画像:独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センター提供



-自治体や調整機関が関与することで、受け入れはどの程度現実的になると感じますか。自治体関係者に向けて現場医師として伝えたいことがあればお聞かせください。


和田先生:

自治体や調整機関が関与することで、非常勤医の受け入れはかなり現実的になり、だんだんと普及していくと思います。交通費、宿泊費をサポートしていただけるのはたいへんありがたく、今後も医師不足地域での非常勤勤務は続けていきたいと思います。「医療版ワーケーション」はとても良い取り組みだと思うので、どんどん増やしてほしいです。ぜひ、また参加したいと思っています。


田中先生:

非常勤医の受け入れが現実的になるかは、勤務する立場ではわかりかねますが、「医療版ワーケーション」はとても良い仕組みだと思います。楽しさや休みも加えられた形での非常勤勤務は働き手が増えると思います。そして医療人材が確保されることにより、地元医師の負担が減らせるメリットが大きいと思います。今回の和歌山はとても良い場所でしたので、非常勤医師として勤務した後も今度は家族で伺いたいと思います。 ありがとうございました。



【おわりに】

お二人のお話から見えてきたことは、慣れない地域における非常勤での勤務でも、救急医療の現場においても、適切な医療ができる条件さえ整っていれば、十分地域医療に貢献できる、ということです。業務内容の明確化やマニュアル整備、バックアップ体制や働く環境づくり。ここに自治体や調整機関の支援が加わることで、あらゆる地域における「非常勤医師」受け入れの現実味はぐっと増してくると感じました。

今回お二人が勤務された和歌山県においては、全国的にも非常に早いタイミングといえる、2024年より、自治体と地元医療機関がしっかりと連携し、十分なご準備をされていたため先生方からも「とても働きやすかった」という声をたくさんいただきました。地元医療機関のみなさまからも、「良い先生が来てくださった」とお喜びの声をいただき、医師・医療機関双方にとって、ひいては地元住民様、患者様にとっても良い体制づくりがされていたように感じます。

「医療版ワーケーション」を推進しているMRTとしてもこうした事例をみなさまにお届けし、地域医療により一層の貢献をしてまいりたいと考えております。



【参考】

◆PRESS RELEASE (2024年6月11日)

MRTが新たに和歌山県と連携し「医療版ワーケーション」を開始!

働きながら余暇も楽しむ新しいワーキングスタイルで医療従事者不足の解消を目指す


◆PRESS RELEASE (2025年6月9日)

MRTと和歌山県が実施した「わかやま医療版ワーケーション」の成果と

2025年度の継続実施について


◆PR TIMES STORY (2024年11月13日)

関西初! MRTと和歌山県が連携した取り組み「わかやま医療版ワーケーション」和歌山県 北出病院が語る紀南エリアの医療背景とは


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◆紀伊民報 (2024年7月9日掲載) 

白浜で医療版ワーケーション 医師不足の解消目指す、和歌山


◆テレビ和歌山 (2024年7月23日放映)

医師が働きながら余暇も楽しむ「わかやま医療版ワーケーション」 和歌山県白浜町

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■医療版ワーケーション、自治体医療支援サービスに関するお問い合わせ

MRT医療政策チーム

TEL:050-5527-0841

Email:mrt-bpo@medrt.com




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