株式会社アイシン ハイドレイド事業推進部

世界初!※ 直径約1ナノメートルの「微細水粒子」がもたらす美容分野の革新とは

2026年03月05日

※粒径約1nm(ナノメートル)の水クラスターを安定的に生成できる実用化された技術として(ステラアソシエ調べ/2025年11月1日)


アイシンの井上慎介部長(左)と東京大学物性研究所の原田慈久教授


地球上の生命にとって不可欠な存在である水。しかし、あまりにも身近なためその世界について深く考える機会はほとんどない。そうした中、アイシンは人間の想像をはるかに超えるその奥深い世界に着目し、人々に価値を創造するため大学教授らとの共同研究を重ねて着実に成果を生み出してきた。いま、美容分野を中心に注目を集めている「微細水粒子」がもたらす無限の可能性とは何か。プロジェクトの裏側を2人のキーパーソンが語る。


学生時代に「天職」と確信


微細水粒子の最初のキーパーソンは、東京大学物性研究所の原田慈久教授だ。学生時代に水の権威、上平恒先生の著作に出会い、水が天職だと確信し研究を始めたという。その後、2005年に水の中に氷のようなまっすぐつながった水分子の塊と、不規則な構造の水分子が混在するのを見つけその不思議な世界に魅了され、さらに水の研究にのめり込んでいったと振り返る。


― 発見の反響はいかがでしたか

原田 1年かけて検証した結果その不均一な構造が水分子の本来の姿であることがわかり、学術誌に研究成果を発表しました。しかし、水研究の世界は100年以上の歴史があり、従来と異なる研究成果はなかなか信じてもらえず、受理されるまでに2年かかりました。その後、その研究成果を裏付ける証拠が出てくるようになり、海外の研究者とチームを組んで本格的に取り組むようになったのです。


原田慈久(はらだ・よしひさ)

東京大学物性研究所 附属極限コヒーレント光科学研究センター 軌道放射物性研究施設 教授・施設長。東京大学シンクロトロン放射光連携研究機構 機構長


― そうしたなかどのように「微細水粒子」と出会ったのですか

原田 水という物質について私が特に惹かれたのは、異なる物質と接すると自身が自由自在に変化していくことです。物を溶かしたり、選別したり、輸送したりと、宇宙にある物質のなかで最も多機能なのが水だと思っています。そうしたことから、放射光※1という強力なX線を用いて水の性質を研究していたとき、ある講演で私の水に関する研究に興味をもたれたアイシンの方が講演後にあいさつに来られ、後日、私が研究をしていた大型放射光施設「SPring-8」に井上部長がおいでになったのです。そこで同社が取り組んでいる微細な水の粒子を使った事業について説明され、非常に興味を持ったのがきっかけになりました。


― 世界的に見て微細水粒子の研究状況は

原田 水の研究者に聞いても、文献を紐解いても、微細水粒子が大気中に存在すること自体が物理化学的に否定されます。でも、今では水質浄化などで使われるようになった直径約100ナノメートル(nm)※2の微細気泡(ナノバブル)※3も、かつては一瞬で消えるために安定して存在しないと言われていました。それが、洗浄効果が長期間持続することがわかり、今では各国で安定化のメカニズムが研究されています。ですから、この直径が1~2nmという圧倒的に小さな微細水粒子も同じ経緯を辿り、本格的な研究に火が付くのはこれからだと思っています。そして、微細水粒子のメカニズムや機能について解き明かしていくことは、地球上のさまざまな課題の解決につながると思っており、そこまでやりきるのが私のゴールだと考えています。


― 研究室では何を研究しているのでしょう

原田 放射光を用いて水のネットワーク構造を調べています。しかし微細水粒子の電子状態を放射光で直接捉えるのはかなり難しいということから、まずは学生が自作した測定装置を用いて微細水粒子のサイズや帯電している量などを測るところから始めています。その際、微細水粒子の発生装置にはアイシンに提供していただいたナノ構造の穴をもつ特殊膜を使っています。


原田教授の研究室にある微細水粒子の測定装置。手前右の黒い装置がアイシンの提供した微細水粒子を発生させるナノ構造の特殊膜カートリッジ


水を国の力を高める資源に


― これまでの研究でわかったことはどんなことでしょう

原田 人工皮膚膜を使い、微細水粒子がどう取り込まれるのかを調べました。その結果、微細水粒子が付着した際に、その小ささゆえに水粒子表面の水分子が電離してマイナスイオンを生成することが分かってきました。人間の髪や肌に触れたときには細胞と細胞の隙間から中に入り込むことが期待されていますが、この「付着してから帯電する」という性質によって、さらに肌内部に留まりやすいのではないかと考えました。


― 微細水粒子はどのような活用が期待されるでしょう

原田 将来的には狙ったサイズの水粒子が生成できれば、髪や肌が求める効果に合った最適化もあり得ると思います。そして、今後は水の持つユニバーサルな機能をさらに生かし、地球規模で多様な分野に役立てたいと思っています。また、資源に恵まれない日本にとって、各地にさまざまなクオリティの水がありそれを自在に生かせる技術の進展は、水が単に資源というだけにとどまらず、日本の国力にもつながるものと思っています。


きっかけは寝室の湿度調整


もう1人のキーパーソンは、アイシンが微細水粒子の研究・活用を進めているハイドレイド事業推進部の井上慎介部長だ。自動車部品サプライヤーのアイシンは、一方で1966年から2020年までベッド事業を展開しており、井上は睡眠の質を向上させる寝室の湿度調整などに取り組んできた。そのなかで大きな注目を集めている技術がハイドレイド(Hydraid)※4である。改めてその開発ストーリーを聞いた。


― 水の研究に取り組んだ経緯をお聞かせください

井上 アイシンは自動車部品の売り上げが95%以上を占める会社ですが、1966年から50年以上、寝具のベッド事業を展開していました。私自身もそこで睡眠の研究に携わるなか、寝室の湿度調整により喉や肌の乾燥を改善し、何とか睡眠の質を向上させようと思ったのがきっかけです。


井上慎介(いのうえ・しんすけ)

株式会社アイシン VC事業センター 新事業創生ラボ ハイドレイド事業推進部 部長


― 具体的にはどのように開発を進めたのでしょうか

井上 実は、そこには自動車の技術が生かされていて、排出ガス中の不純物処理に使う触媒用メタルハニカムの技術と、寝具開発で培った調湿技術を融合させました。これにより、ナノ構造の特殊膜を使って空気中の水分を吸着させ、水粒子に変換させて供給できる技術としてハイドレイドを開発したのです。


― その技術をどう発展させたのですか 微細水粒子のサイズイメージ

井上 まず、開発した技術が睡眠中の肌にどんな効果があるのか確認しようと、愛知医科大学医学部の西村直記先生(当時。現・日本福祉大学スポーツ科学部教授)と共同研究させていただきました。その結果、加湿器のスチームではすぐに低下してしまう肌の水分量が、当社の技術を使うと6時間以上も持続されたのです。そこで、水粒子の大きさが関係するのではないかと考え、高知工業高等専門学校の長門研吉教授と共同研究させていただき、約1nmという極微小であることがわかりました。この結果をもとに、髪のキューティクルの隙間(約20nm)や皮膚の角質細胞間隙(約50nm)よりも小さいため、肌の内部まで浸透するのではないかという仮説のもと、美容院で試験的に使ってもらうことにしました。


― 結果はいかがでしたか

井上 すぐに「髪や肌が潤う」「髪がサラサラになる」「髪にまとまりがでる」といった声が寄せられました。しかしそれは、シャンプーやコンディショナーの効果かもしれません。ところがその後も「カラー剤の入りや持続性が良くなる」「スタイリングしやすさが続く」といった声もあり、水粒子のサイズだけでは説明できない変化が報告されたのです。そこで、この技術を製品として世に出すのであれば、水粒子自体の素性を明らかにする必要があると考え、研究者を探し始めたのです。


微細水粒子の機能解明が一気に進展


― そうして出会ったのが原田教授だったのですね

井上 最初は部署のメンバーが原田先生の講演を聴講し、「この先生しかいない」と確信して講演後にあいさつし、後日改めて当時先生が研究されていたSPring-8を私が訪ねたのです。自動車部品メーカーがいきなり「不思議な水があるんです」と相談したので、後日先生から「実はそのとき少し怪しいと思った」と言われたように、相手にされない不安もありました。しかし、先生は私たちが持ち込んだデータに興味をお持ちになり、微細水粒子がこれまでの水の常識から外れた異例な状態であることに関心を持ってくださったのです。


― 共同研究ではどのようなことがわかってきたのでしょう

井上 微細水粒子は、空気中ではほとんど帯電していませんが、人工皮膚膜の表面に触れるとマイナスイオンを生じながらゆるやかに浸透する特性が確認されています。このとき生じたマイナスイオンと水分子が相互に関わり合い、水分の広がりを助けることで、通常の水滴に比べて肌にとどまりやすい状態をつ くると考えられます。

その結果、持続的な潤いを保ちやすく、肌のコンディションが揺らいでいる状態でも水分補給をサポートする可能性が示唆されています。


研究成果が美容の悩み軽減に貢献


― アイシンにおいて、本事業が存在感を示しているポイントは何でしょう

井上 やはり、お客様が喜ばれる価値を提供できていることと、自動車の技術も生かしながら自社で技術が確立できている点が大きいと思います。美容の分野では、医療とはまた異なる、髪のパサつきや肌荒れといった日常的な悩みをお持ちの方が多いと実感しています。そうした皆さんに、私たちの研究の成果をご提供して悩みの軽減に貢献できていることが、社内でも理解が得られ支援いただいているのだと思います。


― 事業を推進するなかで手ごたえを感じるのはどんなときでしょうか

井上 実際にお使いいただいたお客様から、美容院を通して喜びの声が届けられたときですね。試験的にお使いいただいた段階でも、多い美容院では月に400人以上のお客様にお試しいただき、髪のまとまりや肌の潤いをお感じになられて、8割から9割のお客様が次に来店されたときも希望されたという話をお聞きしました。そうしたときは、ハイドレイドを通して確かな価値をお届けできているという手ごたえを感じます。


微細水粒子の可能性を追求


― 今後、ハイドレイドにはどのような期待をお持ちでしょうか

井上 まず髪については、微細水粒子の特性から髪の内部まで浸透して髪を柔らかくする効果がわかってきて、学界でも発表しています。それを裏付けるように、美容院のお客様やサロンの現場の方から髪について「しっとりする」「まとまりがよくなる」といった声や、「ツヤがよくなった」といった、髪表面の特性で感じられる声も寄せられ、そうしたさまざまな効果が期待できると考えています。お客様の声で興味深いのは、「1カ月後も効果を実感する」といった持続性に関する声が多いことで、さらに研究を進めたいです。詳しくは髪に関するハイドレイドのサイトもご覧いただきたいと思います。


― 肌に関してはいかがでしょう

井上 特に注目されるのが、保湿機能を司るセラミドへの影響です。大学や医師との研究により、ハイドレイドを使用することで保湿効果が促進されることを示唆するデータが得られつつあります。単なる外からの「補水」ではなく、肌が潤いを保つ機能を助けている可能性が示されました。こうした効果は学会でも報告されており、肌のコンディションそのものに働きかけている可能性があると考えています。そして何より、お客様の髪や肌に触れるものですから、水しか使わず効果を発揮した後に何も残さないという安全性が魅力です。

― 最後に、ハイドレイドの未来に向けた可能性についてお聞かせください

井上 まずは、今春から美容院向けヘアケア機器の新モデルをリリースし全国展開する予定です。より多くのお客様にお使いいただき、髪や肌といった美容分野でさらに実績を重ねながら研究を進めていきます。そして、メーカーとしては使ったお客様に喜んでいただけるのが一番なので、今後もより効果を発揮する技術の確立に取り組んでいきたいです。そうした先には、医療や食品や農業など多様な分野、そしてクルマをはじめとしたさまざまな移動空間においても生かせる可能性があると思います。そして、私たちがハイドレイドで将来的に目指していきたいのは、空気中に存在する水という資源を使いますので、世界中のどこにもわれわれの技術がある環境をつくっていくことだと思っています。


※1 相対論的な荷電粒子(電子や陽電子)が磁場で曲げられるとき、その進行方向に放射される電磁波(出典:SPring-8)

※2 1ナノメートル(nm)は1ミリメートルの100万分の1

※3 直径100μm未満の気泡の総称で、直径1~100μmの「マイクロバブル」と1μm未満の「ウルトラファインバブル(ナノバブル)」に分類される。洗浄性向上や節水効果などから、シャワーヘッドや洗濯機、工業洗浄などで利用が広がっている

※4 ハイドレイド(Hydraid)は「Hydro(水分)」と「Aid(回復)」を組み合わせたアイシンの造語


ハイドレイド技術サイト

https://www.hydraid.jp/





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