Polimill株式会社
公務員からスタートアップへ!生成AI×住民参加で描く未来のまちづくり
2025年03月13日
Polimill株式会社(以下、ポリミル)で省庁・自治体向け生成AI「コモンズAI」の企画・運営を担当する藤田捷太郎さん。元自治体職員の経験を活かし、入社からわずか3か月で全国の自治体DX推進の最前線で活躍しています。
藤田さんは福島県白河市役所で3年半勤務した経験を持ち、その間に見えてきた行政の課題とテクノロジーによる解決策について話を伺いました。自治体での実務経験と最新技術への知見を兼ね備えた藤田さんの視点は、今後の行政DX推進において貴重な架け橋となっています。
【プロフィール】
福島県出身。大学で上京後、地域活性化への思いから白河市役所に入庁。農林整備課、企画政策課などで実務を経験。2024年11月、Polimill株式会社に入社。自治体向けAIツール「コモンズAI」の営業を担当。行政実務の経験を活かし、全国の自治体のDXを推進している。
市役所からスタートアップへ!異色の転身が生んだ可能性
――藤田さんの今の担当業務を教えてください。
現在は主に営業担当として、自治体からのお問い合わせ対応を行っています。また、コモンズAIの導入後は、サポートや研修を実施し、自治体職員の方々と直接コミュニケーションを取りながら業務を進めています。
――大学進学で福島から上京し、卒業後に白河市役所に入職したそうですね。公務員を志望した理由をうかがいたいです。
地域の活性化に携わりたいという気持ちが強く、そのために市役所勤務が自然な選択肢として思い浮かびました。特に観光やまちづくり、さらには市の総合計画を策定して方針を決める業務に携わりたいと考え、白河市役所への就職を決めました。
――白河市役所に在籍していた間はどういったお仕事をされていたんですか。
市役所には3年半在籍していました。最初の2年間は農林整備課で勤務し、イノシシやシカによる農作物被害の相談対応など、農家の方々と直接関わる機会が多かったですね。山間地の畑では食害問題が深刻だったため、ハンターへの捕獲依頼調整や、農家への畑管理方法の改善提案、電気柵設置のアドバイスなども行いました。また、地元農家の農地維持のための補助金管理も担当していました。
その後の1年半は、当初から希望していた企画政策課へ異動し、地域おこし協力隊のマネジメントと国際交流を担当し、フランスのコンピエーニュ市との自治体間交流事業にも携わりました。
最後の半年は移住促進を担当し、特に印象に残っているのは新幹線通勤補助金の制度化です。白河市には新幹線駅があるのですが、その強みを活かして月に数回の都会への出社とテレワークを組み合わせた新しい働き方を提案しました。さらに、お試し住宅の整備や東京での移住推進フェアへの出展なども行いました。
――市役所でもさまざまな経験をされていたと思うのですが、どうして東京のスタートアップに転職しようと考えたのですか。
人事異動に左右されずに自分でやりたい仕事を選んでいきたいと考えたからです。市役所では多くの優秀な方々と働ける環境に恵まれていましたが、地元をより良くするために自分ができること、自分にしかできないことは何かを考えるようになりました。
持続的に地域を発展させるには、行政の補助金だけでなく、営利企業として経済を循環させながら社会課題を解決するアプローチも必要だと感じ、この分野に挑戦したいと思ったことも転職の大きなきっかけです。
所属先は変わりましたが、地域の活性化に携わりたいという根本的な目標は変わっていません。そのため、一般的に言われる『公務員を辞めてスタートアップで働くのは大変』という不安もあまり感じませんでした。公務員としては人事異動が当然のことなので、広い意味での人事異動のような感覚だったのかもしれませんね。
――地域の社会課題を解決するための選択肢が複数ある中で、ポリミルで働くことを選んだ理由をお聞かせください。
自分の裁量でさまざまなことにチャレンジできる環境で経験を積みたいと考え、スタートアップへの就職を目指していました。スタートアップと求職者のマッチングイベントでポリミルと出会い、同社が住民参加型の社会課題解決プラットフォーム『Surfvote』を構築している点に強く共感しました。また、自治体での活用事例を知るにつれ、『ポリミルなら自分が課題だと感じていた問題に取り組める』と確信するようになりました。
さらに、ポリミルとの根本的な価値観や課題意識の近さも、一緒に働きたいと思った大きな理由です。他の企業と比較しても、ここまで自分の問題意識と合致した組織は見つかりませんでした。入社を決めた当時はコモンズAIがリリースされて間もない頃でしたが、入社時には予想を上回る勢いで成長していた事業に、さらなるやりがいを感じています。
元自治体職員という「武器」 現場を深く知るからこそ提案できる解決策
――自治体において生成AIを活用するメリットをどのように感じていますか?
日本全体で人口減少が進み、公務員の人気も低迷する中、自治体の職員数は年々減少しています。一方で、市民サービスのニーズは多様化しており、限られた人数でより多くの仕事をこなさなければならない状況です。特に小規模自治体では、人事・財政・総務を一人が兼任するケースも増えています。
私自身、市役所勤務時代、メール作成や会議資料の準備、上司の挨拶文作成などの業務に追われ、本来注力すべき「住民の声を聞き、政策に反映する」時間を確保することが難しいと感じていました。また、事業のスクラップアンドビルドや、効果の低い事業の見直しなど、本質的な業務に十分な時間を割けないことも大きな課題だと感じていました。
こうした「手前の業務」を削減するためにも、生成AIの活用は非常に大きな価値があると考えています。
――「コモンズAI」を導入された自治体からはどんな反応がありますか?
「議会対応の時間が大幅に減った」「メール作成の負担が軽くなった」「アイデア出しや事業立案の幅が広がった」といった声をよくいただきます。これらは、まさに私自身が市役所時代に感じていた課題そのものであり、実際に解決につながっていることをとても嬉しく思います。
また、ポリミルではコモンズAIの導入支援だけでなく、庁内での利用促進や技術の普及をサポートする研修も提供しています。なぜなら、自治体の情報担当者から「便利なツールを導入しても、職員に浸透しにくい」というお悩みの声をよく聞くからです。特に、新しいテクノロジーは庁内での定着に時間がかかることが多いのが実情です。
そこで、当社の導入サポート研修では、現場の課題と情報担当者の課題、両方の解決を目指しています。 実際の業務での具体的な活用事例を示しながら、職員の方々が安心して使えるようにサポートすることが、最も効果的だと感じています。
(導入サポート研修でコモンズAIについて説明している様子)
――自治体職員としての経験は、現在の業務にどのように活かされていますか?
まず、「元・自治体職員」というだけで、現場の皆さんに親近感を持っていただけることが多いですね。公務員特有の文化や意思決定プロセス、前例踏襲の傾向を理解した上で提案できることは、大きな強みだと感じています。
また、導入のハードルを下げるために、「コモンズAIは100アカウントまで無料」という特性を訴求しています。予算をかけずに導入できることで、自治体内での合意形成がスムーズになり、意思決定の後押しにもつながると考えています。自治体では予算確保のハードルが高いことを知っているからこそ、この仕組みの重要性を実感しています。
さらに、導入を迷っている自治体には、「このツールを使えば、こんな業務がこれだけ効率化される」といった具体的な事例を、自身の経験をもとに説明できることも強みです。自治体の意思決定プロセスを理解しているからこそ、より効果的な説得材料を提示できるのだと感じています。
――自治体職員とスタートアップでは、働き方にどのような違いを感じますか?
自治体職員は、あらゆる業務に責任説明が求められるんです。例えば、メール1通を送るにも、内部での合意形成や決裁が必要になることがあります。また、「市がこう言っていた」と誤解されないよう、言葉遣いにも細心の注意を払い、報連相も徹底しなければなりません。さらに、決裁の階層は内部規則で厳密に決められており、スピード感を意識しても限界がありました。
一方、スタートアップでは、変化の速さと個々の判断によるスピード感が求められます。特に当社は顧客拡大フェーズにあり、主体的な判断で前に進めることが不可欠です。このスピード感の違いには、今も適応の途上にあります。
また、予算の考え方も大きく異なりますね。自治体では年に1回の予算編成があり、年度途中での柔軟な変更は難しいのが実情です。しかし、本来は「必要だからやる」「やるべきか否かで判断する」という考え方が重要ではないでしょうか。スタートアップでは、こうした判断をよりスピーディーに行える点が大きな強みだと感じています。
テクノロジーの力を活用して、真に住民に寄り添ったまちづくりができる未来に
――ポリミルのサービスを通じて日本の地方自治をどのように変えていきたいですか?
私が市役所で3年半働いて痛感したのは、限られたリソースの中で住民ニーズに応えることの難しさです。現在、多くの自治体が生成AIの導入を進めていますが、普及が進まなければ、地方間で住民サービスの質に格差が生じてしまう恐れがあります。
私は、当社が提供する2つのプラットフォームの連携に大きな可能性を感じています。行政文書をもとに回答を生成する「コモンズAI」と住民の意見を集約する「Surfvote」を組み合わせることで、データと住民の声の両輪で、より効果的な施策立案が可能になります。特に、「Surfvote」を活用すれば、より多くの住民の意見を政策に反映でき、真に住民に寄り添ったまちづくり につながると考えています。
さらに、より使いやすいツールの提供と、普及促進のサポート を通じて、地方の住民福祉を均等に向上させたいと考えています。地方自治体の状況は厳しくなっていますが、テクノロジーの力を活用すれば、乗り越えられる課題も多いはずだと感じています。
――最後に、藤田さん自身の今後の目標を教えてください。
ゆくゆくは、地域に貢献していきたいと考えています。生まれ育った場所には、親戚や幼い頃にお世話になった方々がいて、そうした身近な人々の幸せに少しでも寄与できればと思っています。その輪が広がり、結果的に地域全体に良い影響をもたらせたら嬉しいです。
そのために今は、相手が本当に求めていることを的確に理解し、適切な解決策を提示する力を磨いています。 営業の仕事を通じて、表面化している課題の背後にある本質的な悩みを見極める力は、非常に重要だと感じています。
また、地域活性化にはマーケティングの視点も欠かせません。全体の動向を把握し、他社との比較を踏まえながら、本当に価値を届けるべき人に、適切な形で伝える力が求められます。こうしたスキルは地方でも非常に重要であり、現在の経験が将来、何らかの形で地域貢献につながると確信しています。
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ