有限会社十和田乗馬倶楽部
伝統を競技に、地方から世界に 「世界流鏑馬選手権」に込められた想い
2025年09月29日
疾走する馬の上から弓で的を射る「流鏑馬(やぶさめ)」。この日本古来の伝統武術を、現代のスポーツとして世界に発信する取り組みが、青森県十和田市で続いています。
十和田乗馬倶楽部が十和田流鏑馬観光連盟とともに運営する「世界流鏑馬選手権」は、2025年10月18日(土)・19日(日)に11回目の開催を迎えます。今年は10代から70代まで、国内外から45名の選手が参加予定です。
なぜ地方の十和田市で「世界選手権」を開催し続けているのか。その背景には、20年以上続けてきた地道な国際交流への取り組みがあります。
世界流鏑馬選手権(2024年)
伝統武術から現代スポーツへ 誰でも参加できる流鏑馬
スポーツ流鏑馬は、疾走する馬の上から弓で的を射る日本の伝統武術「流鏑馬(やぶさめ)」を、安全性を高めて老若男女誰でも楽しめるよう現代的に競技化したものです。競技は約200メートルの直線コースに三つの的を設置し、的中数と走行タイムで順位を競います。
本大会では、二日間の合計得点と総タイムで勝敗が決まります。初級からプロ級まで段階的にレベルが設定されており、上位クラスになるほど制限時間が短くなり、的の難度も高まります。また、三人一組で臨む団体戦も実施され、人馬の並走や射抜く順序の工夫など、個人戦とは異なる戦略性が求められます。
毎年秋に開催される世界選手権には、一年間に行われた各地の大会を勝ち抜き、出場権を獲得した選手たちが集結します。今回参加するのは女性35名、男性10名の総勢45名、10代から70代の幅広い世代の選手が競い合います。
さらに今大会では、海外からの参加者向けに「ワールドチャレンジクラス」を設け、海外の流鏑馬ファンがスポーツ流鏑馬に挑戦できる機会も用意しています。
ワールドチャレンジクラスに出場したインドネシアの選手(2024年)
馬産地・十和田から世界へ広がる挑戦
青森県十和田市は、馬産地として栄えた歴史があり、馬に対する愛着が深い土地です。1994年からは馬の祭りである「駒フェスタ」を開催し、その中でスポーツ流鏑馬の大会を行ってきました。長年にわたる取り組みにより、スポーツ流鏑馬は十和田の文化として着実に根付いてきました。
そして2004年、十和田乗馬倶楽部代表の上村鮎子氏が大胆な挑戦を始めました。男性のみに許されてきた流鏑馬の伝統に対し、女性だけのスポーツ流鏑馬大会「桜流鏑馬」を立ち上げたのです。桜並木の間を和装した馬と女性騎手が駆け抜け、的を射る光景は十和田の春の風物詩となり、県外はもとより海外からも観光客が訪れるようになりました。
春の十和田を彩る桜流鏑馬。外国人審査員が「COOL」と評価し「COOL JAPAN AWARD 2019」を受賞
こうした中、2015年に駒フェスタ内の大会を「世界流鏑馬選手権」として独立開催することになりました。きっかけは、スポーツ流鏑馬に挑戦したいという外国人選手が大会に参加し始めたことでした。流鏑馬への海外からの関心を受けて、競技を通じた国際交流の可能性を感じ、本格的な世界発信へ取り組みが始まりました。
海外に向けた発信と国際交流
「世界中の人々に流鏑馬の魅力を伝えたい」—そんな想いから、2017年には新たな取り組みが始まりました。流鏑馬の教本「流鏑馬虎の巻」の英訳と電子書籍化のため、クラウドファンディングを実施したのです。結果的に目標を上回る732,000円の支援をいただき、「Yabusame Toranomaki」として書籍化、現在はAmazonでも電子書籍として販売しています。
英訳版『Yabusame Toranomaki』
その後、海外での普及活動も本格化しました。要請をいただき、2018年にはアメリカ・コンヤーズ桜まつりでデモンストレーションを実施。海外での初の本格的な流鏑馬紹介となりました。
アメリカ・コンヤーズ桜まつりでの記念撮影
そして2021年、ドイツで開催された世界最大級の馬術国際大会・CHIOアーヘンにてデモンストレーションを実施する機会を得ました。約30か国から300人の選手が参加するこの大会には36万人の来場者があり、国際的な馬術関係者に流鏑馬を紹介する絶好の機会となりました。
CHIOアーヘン(ドイツ)にて
国際的な展開はさらに続きます。2025年6月には大阪・関西万博で「YABUSAME EXPO ~スポーツ流鏑馬文化祭~」と題した展示を実施し、3,000人を超える来場者に流鏑馬の文化を紹介しました。
大阪・関西万博、フェスティバル・ステーションでの展示の様子
そして同年9月、カナダでスポーツ流鏑馬講習会を開催。11名が一般社団法人日本流鏑馬競技連盟認定の「流鏑馬ライセンス3級」を取得しました。この参加者の中から、今回の世界選手権ワールドチャレンジクラスに出場するアメリカの選手も生まれています。
流鏑馬講習会(カナダ)
日本文化を伝える、世界に開かれた競技へ
確かに現在のスポーツ流鏑馬は、競技人口や知名度の面ではまだ発展途上にあります。世界流鏑馬選手権についても、「地方で行われる大会に"世界"という名を冠するのは早いのではないか」という声があることも事実です。
しかし一方で、十和田市を拠点とした活動を通じて、国内外からの関心は着実に広がりつつあります。十和田乗馬倶楽部の3日間集中練習コースには外国人旅行者からの問い合わせも増えており、世界選手権の「ワールドチャレンジクラス」をはじめ各地のスポーツ流鏑馬大会でも、実際に海外からの出場者が参加しています。
このような国際交流の積み重ねこそが、「世界選手権」という名称の確かな基盤となっているのです。
世界中のどこからでもご視聴いただけるよう、ライブ配信も行いました
十和田市から始まった取り組みが、地域を越え、国境を越えた競技として発展していく可能性を感じています。将来的には海外でのスポーツ流鏑馬大会開催も視野に入れています。
十和田乗馬倶楽部では今後も、十和田流鏑馬観光連盟とともに、スポーツ流鏑馬を発信し続けることで、駒の街・十和田市の新たな魅力創造と、日本の伝統文化を次世代、そして世界に伝える役割を担っていきたいと考えています。
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【有限会社 十和田乗馬倶楽部】
住所:〒034-0001 青森県十和田市大字三本木字佐井幅115-2
TEL:0176-26-2945
【世界流鏑馬選手権】
https://towada-yabusame.com/koma/
【3日間流鏑馬集中レッスンパック】
https://towada-joba.com/sakurayabusame3days/
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