株式会社アイビス

【代表者インタビュー】ibisPaint × VoiSona 日本から世界へ届ける「つくる楽しさ」 ~アイビスがテクノスピーチと挑戦する、新しい創作文化の形成~

2025年10月07日

全世界5億ダウンロードを突破し、世界中にユーザーを持つモバイルペイントアプリ「ibisPaint(アイビスペイント)」を開発・運営する株式会社アイビスは、2025年1月31日、AI音声合成技術を主軸に事業を展開する株式会社テクノスピーチを傘下に迎えました。


両社は「高い技術力」と「日本のクリエイティブカルチャーへのリスペクト」という共通点を持ち、強力なシナジーが生まれると確信しタッグを結成。今回は、アイビス代表取締役社長・神谷栄治と、テクノスピーチ代表取締役社長・大浦圭一郎氏に、M&Aの背景や今後の展望について伺いました。



―それぞれの会社の事業内容について、ご説明をお願いいたします。

神谷:アイビスは指一本で本格的なイラストが描けるモバイルペイントアプリ「ibisPaint」を開発・運営しています。現在は19言語に対応し、世界200以上の国と地域で利用されており、月間アクティブユーザー数は約3,900万にのぼります。

また、モバイルアプリ開発で培ったノウハウを活かし、2023年からクラウドストレージを中心とした法人向けソフトウェア「ibisWorks」も展開中です。


大浦:テクノスピーチは名古屋工業大学発のベンチャー企業です。音声合成技術を軸に、文字を声に変える「音声合成」や、楽譜を歌声に変える「歌声合成」などをBtoB向けに提供しており、フロンティアワークスさん、博報堂プロダクツさん、コナミデジタルエンタテインメントさんといった企業へ技術を提供してきました。

2022年にはBtoCブランド「VoiSona」をリリースし、リアルな歌声を生成できるアプリとして注目を集めています。

クリエイター向け製品を開発する高い技術力で結ばれた2社の縁

―今回のM&Aに至った経緯を教えてください。

神谷:自社の事業拡大や成長基盤の確立を目的にM&A候補を探していたところ、テクノスピーチさんと出会いました。

ibisPaintは絵を描くクリエイター向け、VoiSonaは音楽・歌声のクリエイター向けと、ユーザー層が近い。さらに、日本のサブカルチャーやオタク文化を世界に届けたいという共通の思いがあることを知り、強い縁を感じました。また、私自身も名古屋工業大学の出身で、そこにも親しみを感じました。


大浦:テクノスピーチは、私が学生だった2009年に起業して以来、研究と並行して小規模に事業を続けてきました。転機となったのは2018年ごろのAI音声合成技術の革新で、人と遜色ないクオリティの声が作れるようになり、社会的ニーズの高まりにも後押しされ会社の規模を少しずつ広げ始めました。その後、2020年ごろからIPOやM&Aも視野に入れて、会社をどう成長させるか本格的に考えていたのです。その中で、ちょうどVoiSonaのモバイル展開を進めていたタイミングでアイビスさんからお声がけいただき、さまざまなピースがかみ合った感覚がありました。


神谷:ちなみにM&Aの契約日が、VoiSonaのiOS版リリース日と同じだったんですよ。偶然ではありましたが、良い巡り合わせを感じましたね。

―お互いの企業や製品のどんな点に魅力を感じましたか?

神谷:まず技術力の高さです。当社も技術を大切にしている会社なので、そこは大きいです。また、大浦さんと話していて技術者同士ですし人柄も含めて感覚が合うと感じました。

また、VoiSonaも非常に面白いプロダクトです。ibisPaintも新機能を出すとユーザーの驚きの声を聞きますが、VoiSonaも同じく、歌声や話し声のクオリティに驚くユーザーを見て、クリエイター向け製品の面白さを再確認しました。


大浦:私はやはりibisPaintというプロダクトの強さに惹かれました。ペイントアプリは競合も多く、消えていったものも多い。さらに世界中で使われる超大手の製品もあるなかで、ibisPaintがグローバルで選ばれ続けているのは本当にすごいこと。

そのノウハウをVoiSonaのBtoC展開にも応用できると考えました。

M&A後の変化:技術者視点にマーケティングが加わる

―M&Aからしばらく経ちましたが、グループ化による変化はありましたか?

大浦:内部統制や監査対応など、上場会社に準じた体制整備には正直苦労もありました。ただ、それもアイビスの皆さんにサポートいただきながら取り組めています。

私自身のポジティブな変化としては、神谷さんにマーケティングの本をご紹介していただき、考え方が変わった部分がありますね。自分は技術畑にどっぷりだったこともあり、「作れるかどうか」「作っていて楽しいか」といった技術者目線がものづくりの中心でした。そこに神谷さんとのコミュニケーションを通じて、市場の動向やユーザー満足度という視点が加わり、マーケティングを意識する割合がぐっと増えました。


神谷:私自身、学生時代に自作のソフトウェアを売ってヒットさせた経験が最初の成功体験なんです。だから、時機を読むことや製品企画を考えるのが好きで。数値分析や見せ方も含め、マーケティングの視点を共有できたのは良かったと思います。

両社製品のシナジーで世界のクリエイターコミュニティの拡大を目指す

―今後、両社のシナジーを活かした取り組みはありますか?

大浦:バーチャルシンガー文化では、曲を作る人、絵を描く人、動画を作る人がそれぞれいて、さらにファンアートを描く人もいます。同じキャラクターを愛するユーザーの中で、曲ならVoiSona、絵ならibisPaintと、近しい関係にあると感じています。


神谷:私もバーチャルシンガーの楽曲が好きなので、将来的にはVoiSonaで作った曲とibisPaintで描いた動画を合わせて、ミュージックビデオを作れるようにしたいと考えています。これはまさに両社の製品ならではのシナジーだと感じています。


大浦:そうですね。ibisPaintで描いた絵とVoiSonaで作った楽曲を組み合わせたコンテストなど、いろいろな展開を考えていきたいです。ネット文化が拡大する中で、クリエイター同士のコミュニティが製品を通じて形成されたら面白いなと思います。

―ibisPaintのグローバルでの成功についても話されていましたが、VoiSonaの海外展開についてはどうお考えですか?

大浦:まずはAndroid対応を進めたいです。日本ではiPhoneユーザーが多いですが、世界ではAndroidが主流ですし、世界を目指すうえで不可欠だと考えています。それに合わせて、多言語対応のボイスライブラリも充実させていきたいですね。

日本のコンテンツは世界で広がりつつあるものの、まだポピュラーとまでは言えません。それでも、子どものころから日本のアニメを見て育った世代が増えてきており、転換期にあると感じています。


神谷:海外展開では当社が協力できる部分も多いと思います。一緒に世界市場を狙っていきたいですね。ibisPaintとしても、アニメーション機能をさらに強化し、ミュージックビデオ制作に繋がる環境を整えたいです。

最近はSNSのショート動画から日本の曲が海外でヒットすることも増えていますし、世界のチャートに日本のアーティストの名前を見る機会も多くなりました。バーチャルシンガーとイラストという創作文化も、きっと世界で通用するはずです。

―音声とイラスト、異なる領域で技術力を高めてきた2社が手を組み、生まれる新しい創作のかたち。「つくる楽しさ」を支えるプロダクトが、世界中のクリエイターに届く日が楽しみです。





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