住友林業株式会社

DXは、よりよい未来の土壌づくり。住友林業でDX人財育成に取り組む社員の持続可能な社会への思い

2025年10月27日


現代社会において、どの業種のビジネスでもDX(デジタルトランスフォーメーション)は欠かせない。データやデジタル技術を駆使して、いかに効率よく最大の価値を発揮できるか──。住友林業でこれらの企画立案と実行を支援するITソリューション部でも2023年から専門のチームが立ち上がった。2025年7月には経済産業省が定める「DX認定」を取得した。


データやデジタル技術を活用し、「森林」「木材」「建築」「エネルギー」分野で将来の成長と脱炭素化への貢献に向けた基盤をつくる。そして、さらなるグローバル化の推進や、新たな事業領域への挑戦、既存事業の変革を進めていく。未来に向けた事業を円滑に進めていくための「土壌づくり」に欠かせないのがDXだ。


今回は、そんなDX推進チームのなかで、主にDX人財育成にかかわる企画業務を担当する石田渉に、これまでのキャリアや担当する業務について話を聞いた。

ドイツでの経験が、持続可能な社会への興味を生んだ

入社のきっかけは中学生の頃の体験に遡る。当時、父親の仕事の都合でドイツに住んでいたという石田は、ルールや文化の違いに強い印象を受けたのだ。


「ドイツは環境先進国と言われ、気候変動対策は地球規模の課題であるとの認識のもと、持続可能な社会を目指して様々な政策が行われています。モノを大切にする・自転車を多用するなどの習慣が国民に広がっており、私もこうした感覚が当たり前となっていました。帰国後も様々な場面でこれらを実践しましたが、個人が日常生活の中で取り組めることには限界があるとも感じていました。その後、仕事について考える中で、生涯をかけて自分の時間を費やしていくならば、そういった大きな課題解決に向けて少しでも貢献できるような組織で働きたいと思い、事業活動を通してグローバルで脱炭素社会の実現に取り組むことができる住友林業に入社しました」


住友林業株式会社 ITソリューション部DX推進チーム 石田渉

製造事業から、ITソリューション部へ

住友林業を選んだ石田が入社して配属されたのは、製造事業だった。


「まずは、住友林業の家で使う収納家具などを製造する国内工場でモノづくりの基礎を学びました。その後インドネシアの工場に駐在。そこではパーティクルボードという、木材を細かいチップ(小片)に砕き、それを接着剤で固めて板状に成形した木質材料の品質管理等を担当しました。帰国後は、本社で製造事業の工場管理や新規事業の検討などをしました」


製造事業で担当していた「パーティクルボード」。家具や構造材として使用される。


9年間製造事業に関わったあと、石田は社内制度を使ってITソリューション部に異動する。幅広い事業を手掛ける住友林業で、異なった業務を通じて視野を広げ多角的な視点を養いたいと考えたのだ。また「様々な課題解決のために必須の技術」と考え大学で情報工学を専攻していた石田にとって、組織に貢献できる部分も多いと考えていた。異動先のITソリューション部では、システムを活用した業務効率化や付加価値創出が大きなミッションだった。


「システムを使う社員がいて初めてITソリューション部の仕事は成り立ちます。業務効率を上げるため、さまざまな部門の方とシステム化の企画や導入を進めることができて、とてもやりがいがありました」


「DX」という言葉が注目されはじめたのはここ数年のことだが、データやデジタルを活用した付加価値創出や事業変革への挑戦は以前から行われていた。ただ、ITソリューション部の中で体系立った組織があったわけではない。世の中の変化の波を受け、3年前に専門のDX推進チームが発足されることになり、その流れで石田もそのチームへと配属された。

「DX人財」を育成するための体系づくり

住友林業のIT・DX戦略は、経済産業省が企業のDX推進のために取りまとめた指針「デジタルガバナンス・コード」などをもとに、下記の3つの基本方針のもとに進められている。※


・全員参加のDXによるデジタル化の"シンカ"(親化・深化・進化)

・デジタルを活用した業務変革で生産性向上(自動化・省人化・省力化)

・事業のグローバル化に対応できるITの仕組みづくり


たとえばDX推進チーム主導で行われているのが「RPA市民開発」という取り組みだ。RPAとは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の頭文字を取ったもので、パソコンを使った日々のルーティンワーク等を自動化してくれるツールのこと。所定のソフトを使って、自動化の仕組みを社員自らが企画・開発する。こういった取り組みができる社員を増やすための諸々のサポートをしている。ほかにも、生成AI活用を通した業務の効率化やお客様への付加価値創出へ向けて、様々な取り組みを行っている。


※住友林業DXサイトもご確認ください。https://sfc.jp/information/dx/


石田がメインで担当しているのが「DX人財育成」である。社員がデータやデジタル技術の活用をより自分ごととして捉え、関連するスキル習得を図るものである。石田は、これらの企画・実行の業務を担当している。


住友林業DX人財育成体系図


たとえば石田の成果のひとつが、上記の「住友林業DX人財育成体系図」を策定したことだ。誰が、どのようなスキルを身に付け、どうなったらその水準に到達したと言えるかを整理した。「DX人財」という広い意味を持つ言葉をひとつひとつ噛み砕き、具体化していった。


「キレイな体系図を描くだけなら誰でもできます。解像度の高い具体策をあわせることで『生きた企画』とすることにこだわりました。当社の様々な事情を考慮しながら、国が示すガイドラインを十分に勉強し、先行する他社、関連するベンダーや研修会社などの様々な取り組みや考え方を取り入れて形にまとめていきました」


人財タイプは「デジタルリテラシー人財」と「デジタル高度人財」の2つに大別した。前者は、IT・リアルデータ活用のマインドとスタンスや関連する基礎知識の習得を全社員が目指すもの。後者は、住友林業のIT・DXの取り組みを牽引する人財の育成を図るものであるという。


「『デジタル高度人財』は、データやデジタル技術を活用して様々な課題解決を目指すための思考法や企画実行力の習得を目指すものです。まずは基礎レベルに注力しています。特定のツールやシステムの操作方法を身に付けるものではありません。そのため丁寧な説明を行っても抽象度が高い話となってしまいがちです。こうした状況だからこそ、企画実行の目途が立ち、実際にそれができた時はまずはほっとしましたし、高難度だからこその試行錯誤にはやりがいと楽しさがあります」


石田の上司にあたる上野智宣も、「抽象度の高いテーマを、具体的な施策に落とし込むところを粘り強くやってくれていて、彼の真面目さと責任感を信頼している」と語る。


DX人財育成について打ち合わせする様子。社内の人財育成部門等とも連携している。

製造を経験したからこそ身についた思考

製造事業から、DX推進チームへ。一見遠い2つのキャリアを歩んできたように見える石田だが、その2つに共通する、仕事に対する大切な姿勢があるのだという。


「ものづくりで大事なことは、何か問題が起こった時に、その原因を正しくつかむことです。三現主義(「現場」「現物」「現実」の3つの「現」を重視する考え方)や、なぜなぜ分析(なぜを複数回繰り返すことで根本原因を探る分析手法)、その他構造的に物事をとらえるための様々なフレームワークは、ほぼ毎日実践し鍛えられました。事実を正しく捉えることが全ての課題解決の始まりであるという基礎的な考え方は、DX推進の仕事においてもすごく役に立っています。データやデジタル技術という言葉は便利そうで夢がある分、想像が先行しがちですが、あくまでこれらは課題解決のための道具です。いまある課題の真因は何なのか、その解決のために適切な道具は何か、事実に基づいて進めていかなければなりません。道具を使うことは目的ではないのです」


そんな石田はいま、人財育成の「評価」という点において難しさを感じているという。


「DX人財育成は、研修で学んだことを実践するために行いますが、参加者が研修内容に満足し社内の所定の水準を満たしたとしても、参加者の立場や業務内容、課題の内容などによって、取り組みやすさを左右する様々な事情があります。そのため仕上がりが見えにくいです。この企画の成果をどのように説明していくかが今後の課題です」


人財育成の道は、まだまだ始まったばかり──。まだ山の麓にようやくたどり着いたくらいです、と石田は言う。

ITで、未来への土壌を育む

もともと持続可能な社会の実現に関心があって住友林業に入社した石田は、いま、ITソリューション部でDXを進める部署にいる。けれども石田は、入社してからこのかたずっと、「環境への貢献」という自覚が心の中にあるのだという。


「製造事業を担当していた時も、DX推進チームにいる今も、持続可能な社会の実現に向けて貢献していると考えています。当社グループで製造する製品の原材料は木です。木は、切ってもまた植えて育てることができる再生可能な資源。製品として何度でも姿を変えて人々の役に立っていることに誇りを持っています。DX推進も、当社のバリューチェーン『ウッドサイクル』を回して持続可能な社会の実現に取り組む社員が活用する道具を提供していると捉えており、なくてはならないものと考えています」


住友林業グループのバリューチェーン「ウッドサイクル」


特にDX人財育成については、研修で取り扱った内容を参考におもしろい取り組みが生まれたらこれ以上の仕事冥利はない、と最後に石田は口にした。遠くにある理想を現実にするために必要な要素をひとつずつ噛み砕き、自分がするべき目の前の仕事に着実に取り組む姿勢には、石田の真面目で誠実な姿勢が伺える。


まさにDXは、住友林業の「土壌づくり」のようなものなのだ。凛として堂々と、現実と理想をどちらも大切にして話す石田の目を見ていると、この土壌からはきっと豊かで多くのものが育っていくのだろうと感じるのであった。



関連リンク:経済産業省が定める「DX認定」を取得

https://sfc.jp/information/news/2025/2025-07-02.html




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