Minna no Mikata 妊活世代の患者さんのミカタ

疾患を抱えていても、
思い描く将来を諦めない

あちこちの関節が痛んだり、変形したりする「関節リウマチ」。発症すると「妊娠・出産を諦めないといけないのでは」と思う方もいらっしゃいます。しかし、今はよい薬もあり、病気のコントロールもできるようになっているのです。 多くの関節リウマチ患者を診てきた2人の医師にお話 を伺ってみましょう。 提供 旭化成ファーマ株式会社

埼玉医科大学 リウマチ膠原病科
教授・診療部長

三村 俊英 先生

専門資格:日本内科学会認定内科医・指導医、
日本リウマチ学会専門医・指導医、
埼玉医科大学副学長

教授

舟久保 ゆう 先生

専門資格:日本内科学会認定内科医・
総合内科専門医・指導医、
日本リウマチ学会専門医・指導医

関節リウマチは妊活世代の女性も
発症する病気です

でも、専門医による適切な治療を行えば
安心して妊娠・出産することも可能です。

「関節リウマチ」って
どんな病気なの?

三村 俊英 先生
三村 俊英 先生

関節リウマチとは、免疫が自分の体を攻撃する「全身性の自己免疫疾患」の一つです。発症すると、主に手の指・手首・肩・肘・膝・足首・足の指などの複数の関節に強い痛みが出たり、腫れたり、熱感があったり、朝は手がこわばって動かしにくかったりします。また、胸に水が溜まったり、目に炎症を起こしたり、肺・腎臓などの臓器や皮膚など全身の様々な臓器障害を引き起こすことも。病気が進行すると、関節が変形し動かなくなるなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。

その原因はまだ特定されていませんが、遺伝子の異常と環境要因が考えられ、喫煙・歯周病菌・腸管内の菌・感染症・遺伝子の変化を伴わないタンパクの発現異常(エピジェネティクス)などが関わっていると思われます。ご家族・親族にリウマチや膠原病といった自己免疫疾患の方がいると少し発症の可能性が高くなりますが、「うちは血圧が高い家系」というのと同じで必ずしも遺伝するわけではありません。

関節リウマチと診断されれば、通常はまず抗リウマチ薬を服用し、効果が十分でない場合は生物学的製剤やJAK阻害薬などを併用することもあります。治療の目的は「病気の進行と関節の破壊をできるだけ進ませないようにすること」。ゴールは薬を使いながら日常生活に支障のない「寛解」という状態です。不治の病として悲観される方もいますが、高血圧や糖尿病など内科系の病気も言ってしまえば不治の病。病気をしっかり抑え治療を継続していけば、日常生活に困らない状態を続けることは可能なのです。

「関節リウマチ」でも
妊娠・出産はできますか?

舟久保 ゆう 先生
舟久保 ゆう 先生

日本での関節リウマチの患者数は70〜80万人で、3:1くらいの割合で女性が多くなっています。発症年齢は40〜60代が中心ですが、10〜20代、70代以降という場合もあり、もちろん妊娠可能年齢の患者さんも珍しくありません。若い方は「出産は無理かな」と考えることもあるようですが、関節リウマチだから妊娠・出産を諦めなければならないということはありません。

ただし、関節リウマチの疾患活動性が高い状態が続いていると、なかなか妊娠しづらいということは知っておいてください。そういう場合は妊娠しても赤ちゃんに悪影響を及ぼしたり、妊娠合併症の確率も高くなったりします。また、治療には流産のリスクや催奇形性がある薬も使いますし、日常的に問題なく使っている薬でも、妊活中に飲み続けると妊娠しづらくなったり、妊娠後期には胎児に影響を及ぼす可能性があるものもあります。男性患者さんの場合も、使っていると精子の数が減り男性不妊の原因になる抗リウマチ薬もあります。しかし、薬が怖いからと自己判断で服薬をやめてしまうと、関節リウマチも悪化し、なかなか妊娠もできず、ということも。

ですから妊娠を望む場合はまず医師に相談して関節リウマチをしっかりコントロールし、少なくとも妊娠の3カ月前までには病状を落ち着かせ、妊娠中に使用可能な薬剤に変更して妊活に取り組む、といったように計画的に進めていくことが大事です。そうすれば妊娠中に少々大変なことはあったとしても、ほとんどの方が無事に出産しています。そして出産後も治療のための通院を続け、薬をしっかり服用するのが大原則です。

三村 俊英 先生

妊娠を考える方は「自分が関節リウマチだから子どももそうなる」と心配かもしれませんが、必ずしも遺伝するわけではないのでネガティブな思いを持つ必要はありません。また、関節リウマチ自体は赤ちゃんの先天異常に関係しないので、そこは安心してください。

妊娠・出産に
不安を感じている方へ

三村 俊英 先生

関節リウマチは早期診断・早期治療で、その後の病気との付き合い方が大きく変わります。複数の関節が1カ月以上痛い・腫れているという場合は、ためらわずに内科系または整形外科の「リウマチ専門医」の診察を受けることをお勧めします。最初は通いやすいお近くのクリニックに行き、他に病気がある方・妊娠を望む方・うまくコントロールできなかった方は、総合病院や大学病院のリウマチ科に紹介してもらえばよいでしょう。

舟久保 ゆう 先生

関節リウマチと妊活は分野が違うと思って主治医に相談しなかったり、女性患者さんは男性医師には言いづらかったりするかもしれません。しかし、抗リウマチ薬の中には催奇形性があるものもあります。妊娠してから、「あっ!」とならないよう、早い段階で「妊活を考えている」と医師に相談していただきたいですね。

また、現在の日本では晩婚化・晩産化が進んでおり、ちょうど妊活時期とリウマチの発症・治療の時期が重なってきています。不妊治療開始が43歳未満なら人工授精に保険適応されることもあり、不妊治療を行っている方もいらっしゃるでしょう。その場合も最初に医師に伝えてください。リウマチの薬や合併症が不妊に影響したり、流産しやすい病気にかかっている場合もあるからです。

三村 俊英 先生

それから、妊活中は「情報」には注意していただきたいですね。今はネットで何でも簡単に調べられますが、「リウマチ 妊娠」で検索すると誤った情報もたくさん出てきます。病気で心細い時は自分に都合のよいことを信じたくなりますが、偽情報で大切な医療の機会や妊娠のチャンスを逃してしまってはなりません。気になることは医師や看護師・薬剤師に質問してください。正しい知識を増やすことは、自分のため、赤ちゃんや家族のために重要なこと。遠慮する必要はありません。なお、質問する際は自分が聞きたいことをしっかり整理してメモを作り、まず今日はこれだけは聞きたい、その他は次でも大丈夫、と優先順位をつけておくとよいでしょう。

また、関節リウマチの患者さんは、関節の痛みが強かったり動かせなかったりするため子育ても大変ですので、ご家族とよく話しておくことも大切です。私たちは出産するまではしっかり診ることができますが、生まれた赤ちゃんのお世話はまではできません。あらかじめご家族にも理解していただきたいと思います。

関節リウマチを発症したことは残念ですが、他にも慢性の病気はあり、関節リウマチが極端に悪い病気だというわけではありません。今はよい薬もあり、日常生活を普通に送ることも可能です。早く診断を受け治療を始め、病気とよい形で付き合っていただくのが、これからの長い人生を幸せにするコツ。私たちは少しでもそれを支援できるよう一緒に歩いていきますので、仕事も妊娠・出産・育児も諦める必要はありません。そこは欲張っていただいてよいのです。

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